プロローグ
あまりにも巨大な世界の中で、俺は取るに足らない、ほとんど無に等しい存在だ。
どうして俺はいつも、こんな風に物事を始めてしまうのだろう?
分からない……。
信じられるか?
俺は二十二歳だ。それなのに、十七歳の頃からずっと先延ばしの人生を送ってきた。
毎日自分の選択を後悔しているくせに、それを変えようとは何一つしない。
誤解しないでほしい。自分の人生がクソだとか、そんな風に感じているわけじゃないんだ。
むしろ逆だ。自分が嫌悪している自分自身のままで、嫌いなはずの人生をどこかで楽しんですらいる。そこから抜け出せない。
先延ばし癖。
自分でもコントロールできないんだ……。
どうすればいい?
いや、答えなんてない。
何事にも答えなんてないんだ。
たぶん……。
今の生活が悪いとは言えない。過去に比べれば、花畑を散歩しているようなものだからな。
学生時代、俺は物静かな方だったが、同時に一番行動的でもあった。いじめや理不尽なことを見かければ、必ず止めに入った。
失敗することも多かったけど、最終的にはいつも自分の思い通りに事を運んでいた。
当時の自分の行動に後悔はない。だけど、あの時、女友達に告白しなかったことだけは、今でも悔やんでいる。
それから、俺は数え切れないほどの過ちを犯した。
その一つは、俺の忌まわしい対人恐怖と、大勢の人がいる環境でうまく振る舞えない社会性の欠如のせいだった。
親友の、一番大切な誕生日集会だったのに、俺は行かなかった。
怖かったんだ。
あまりにも多くの人から見られるのが。だって……。
ああ、ここからが辛いところだ。
俺に用意されていた席は、亡くなった彼女の兄のものだったのだ。
それを後から聞かされた時、俺は自分がどれだけ取り返しのつかない過ちを犯したのかを悟った。
なんとか関係を修復しようと色々な方法を試したけれど、ダメだった。
俺は彼女のことが好きだったし、恋人になりたいとも思っていた。でも、自分の気持ちをうまく打ち明けることができず、いざ行動を起こした時には、すでに遅すぎたんだ。
ほらな?
俺が何かを望む時、いつも遅すぎる。でも、それを回避しようともしない。
そうならないための努力を何一つしないんだ。
何かを失っても、そのまま放置する。
草むらに落とし物をしても、探そうとすらしない。
病気になった時、病院に行くのが面倒だとか、薬を飲むのが嫌だという理由だけで、自分の体が限界まで苦しむのを放置するようなものだ。
まさにそれだ。
俺は大家族に生まれた。
母方には、
五人の叔母。
三人の叔父。
七人の従兄弟。
父方については、
はっきりとした記憶がない。
というのも、親父は刑務所に入っていたからだ。子供の頃は父方の家族にもかなり助けられたけれど、時が経つにつれて、俺は母方の家族と一緒にいることが多くなった。
『お父さんは遠くの田舎に出稼ぎに行っている』
あの嘘を、俺は絶対に許すことができなかった。
理解はしている。俺はまだ子供だったし、本当の事なんて言えなかったのだろう。
だが、他の手段で真実を知ったら、俺の心が完全に壊れてしまうかもしれないとは考えなかったのだろうか?
その通りだ。俺は電脳網で親父の真実を知った。
家族からではなく、電脳掲示板で。
いや、落ち着け……。
もう思い出す必要はない。
そんなことを考えたら、また暗い底へ落ちてしまうだけだ。
母親について言えば、彼女は十二歳まで俺を育ててくれた。
その後、色々とあって叔母の家に引き取られ、
それ以来、ずっとそこで暮らしている。
母は薬物に溺れ、今は回復に向かっているらしいが……俺にとっては、自分が『普通の子供時代』を持てなかったことの生きた証拠でしかない。
母はいつも恋人と一緒で、俺のことは無視していた。
息子の俺がいるのと同じ部屋で、ほんの数センチしか離れていない寝台で、男と行為に及んでいた。
俺がそんな音を聞かされて嫌な思いをしているなんて、考えもしなかったのだろうか?
まあいい。もうずっと昔のことだ。
「俺の人生、バカみたいだよな……」
自分でも理解できない衝動で、何度も命を絶とうとしたことの方がよっぽどバカげている。
どんなお粗末な未遂をしたと思う?
息を止める。
鼻をつまむ。
枕に顔を押し付けて窒息しようとする。
どれも滑稽な未遂だ。人間の体には自己防衛本能が備わっているからな。
他のもっと確実な方法を選ぶ勇気はなかった。これ以上、誰かに心的外傷を植え付けたくなかったからだ。
俺がずっと何を望んでいたか分かるか?
精神的な問題ではなく、あくまで身体的な問題として死にたかったんだ。
俺が深淵に落ちようとしたことで、誰にも自分自身を責めてほしくなかった。
俺の人生は問題だらけだ。
はっ、そんなこともう何度も言ったな。
本当の問題が何なのか、分かるか?
貧しい環境に生まれ、寒さに震えながら汁物ばかりの生活。
長男である俺よりも、他の男たちを優先する母親。
刑務所を出ても俺を迎えに来ることはなく、見知らぬ誰かと新しい家族を作った父親。
それでも、俺には祖母がいた。
叔母もいて、従姉妹もいた。
それなのに、どうして俺はこういう運命論的思考を止められないのだろう?
この感覚は、深淵を覗き込み、その下に何があるのかを知っている時の感覚と同じだ。
孤独。
そして、過酷さ。
多くの場合、人間は自分自身を惨めだと感じるものだ。
だとしたら、なぜそれを変えようとしないのか?
答えは簡単だ。
俺たちは、棘の寝台の上にいながらにして心地よさを感じてしまう生き物なのだ。
そこから動こうとした時、初めてそれがどれほど痛みを伴うのかに気づく。
だから起き上がりたくないんだ。棘が心を、魂を傷つけるから。
あーあ。
そもそも魂なんて存在するのか?
さあな。そんなことどうでもいい。
自分なりの哲学的な思考を壊すつもりはない、いいだろ?
時々、哲学者みたいな顔をしたり、分析家ぶってみたり、大抵の場合はただの馬鹿になる。
最後のがいつもの俺だけどな。
はぁ……。
自分が何になりたいのか、ずっと分からなかった。
大学生?
なろうと思えばなれる。
叔母がずっと望んでいたような完璧な生徒?
それはもう無理だ。いつも努力しようとはするけど、すぐに気が散ってしまって、毎日の勉学なんてできやしない。
小説家?
ああ、才能の欠片もないね。創造力はあるつもりだけど、自分の文章は最悪だと感じる。
何度も自分の書いた物語を人工知能に読ませては、主観的な批評を求め、承認欲求を満たそうとした。
馬鹿げてるよな。でも、そうしている時だけは、なぜか心が落ち着いて穏やかになれたんだ。
……。
深夜零時、風の音しか聞こえないような状況になれば、そんなことすべてがどうでもよくなる。
異世界に行ってみたいと考えたのは、いつ頃からだっただろうか?
ああ、そうだ。もう数え切れないくらい……。
俺の頭の中は主に、作家になろうとしたり、遊戯の達人になろうとしたりすることに使われていた。
そして眠る前には、絶対に起こり得ない無限の状況を妄想するんだ。有名な作家になるとか、最強の武道家になるとか。
でも、このまま先延ばしを続けていれば、そんな日は永遠に来ないって分かっていた。
責めないでくれ。きっと誰か一人くらいは、この気持ちを理解してくれるはずだろ?
「もし、もう一度生まれ変わって、人生をやり直せるなら……。俺を今のどん底に突き落としたすべての過ちを、もう繰り返さないのに……」
その言葉は、無意識のうちに口からこぼれ落ちていた。
初めて言ったわけじゃない。実際、俺はずっと夢見ていた。
過去に戻って、生まれ変わって、もっとマシな選択をして、今ごろはまともな生活を送っている自分を。
ただ消費するだけで何も生み出さない、一族の失敗作なんかじゃない自分を。
最近、ずっと体が怠かった。
理由は分からないが、時間が経つにつれて体を動かすのが億劫になっていた。
この一年間、毎日咳が止まらなかった。
ずっと咳き込んでいるわけじゃない。波があって、もう気にならなくはなっていたけれど、喉の奥が確実に破壊されていくような感覚があった。
「ん……? なんだ……?」
胸を巨大な針で突き刺されたような感覚。
それに続く強烈な激痛が、視界を完全に黒く染め上げた。
体が激しく痙攣した。
空気が、肺に入ってこない。
すべてが鉛のように重くなる。
動こうとしても、体は全く反応しない。
光が、ゆっくりと遠ざかっていく。
そして……。
静寂。




