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王子と私とデパコスと  作者: えるぜ


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9/13

色々と失敗

「質問を変えましょう」


無表情のままデパコスは続けた。


「貴女は……王太子殿下の事も好きですよね?」


「へ?王子?そりゃ勿論」


「では、殿下のどこが好きなんですか?」


「そりゃ中身でしょ」


……………しまった!

これではまるで、デパコスは外見が好みで、王子の事は中身が好きだと言っているようなものではないか!」


「あ、いや!違うんだ。違うわけじゃないんだけど、違うんだって!」


私は、外見や有能さに隠された、だらしないジャージの王子が好きなんだってば!

私は思わずベッドから立ち上がった。


「それはつまり………」


デパコスが数歩私に近付いた。


「貴女の理想は、外見が俺で、中身が王太子殿下、だと」


その瞬間、私はジャージを着て肉まんを頬張るデパコスを想像してしまい、吹き出してしまった。

似合わないにも程がある!

いや、じゃあ何だったら似合うだろう。

………多分、久しぶりに頭脳労働をして、知恵熱でも出し始めていたのかも知れない。それにやはり浮ついた気分が抜けなかった。妄想がたぎる。


………応援団の長い白はちまきとか似合いそうだなあ。黒い詰め襟、白い手袋。

右手の手袋は普通に嵌めて、左手は雑に嵌めた後、こう、くいっと、くいっと綺麗な歯で引っ張って欲しい。

爆笑の後、からのニヤケ顔である。我ながら気持ち悪い。


「……………楽しいですか?」


いつの間にか、デパコスが私のすぐ前まで来ていた。

私達は向き合う形で立っていた。


「え?楽しいかと言われれば、そりゃ…………」


相変わらずの無表情に言葉に詰まる。


「そうやって、笑ったり照れたり、くるくると表情を変えて、俺の気持ちを翻弄して、楽しいですか?」


え、そんなつもりは全く、と言いかけた私はデパコスにぐいと左手を引っ張られ、次の瞬間彼の両腕に抱きしめられていた。

うわ!胸板厚!

私は思わず右手をデパコスの背中に回し、厚さ何センチくらいだろう、と確かめてしまった。


「………やっぱ好きだなあ」


繰り返す。今日私は浮かれていたんだ。そう言う時こそ言動には注意しなければいけない。


「『顔が』ですか?」


頭の上から降りて来る声が冷たい。


「いや…………胸板が………」


………しまった!!

本日2回目のしまったが発令された。

デパコスの腕が離れた。


「いきなりすみません。俺らしくない事をしました。王太子と貴女の阿吽の呼吸を見ていたら、今まで知らなかった感情が生まれて」


何その疲れた表情。

私のせいかよ!

と、ちょっとムッとした。


「そんな事言うなら、貴方は、私のどこが好きなんですか!?いつから好きなんですか!?」


「………最初に会った時から好きでしたよ」


デパコスがしれっと言ったので、頭に血が昇った。


「嘘つき!最初に会った時の私と今の私が別人みたいだって、分かってるでしょ!?」


「意外と勘がいいんですね。…………だから困っているんですよ」


最初はね、貴族同士の婚姻なんて、どうせ親が決める事だと何の関心もなかったんです。家格と年齢が適当に釣り合いが取れていればそれでいいと。


再びソファに座ったデパコスが淡々と続けた。


「最初に貴女に会った時、母から印象を聞かれて、俺は『いいんじゃないでしょうか』と答えました。では、婚約の話を進めて良いかと問われても『いいんじゃないでしょうか』と、答えましたね、確か」


まるで他人事でしたよ、と自嘲気味に呟く。


「貴女は、大人しくて穏やかで、公爵家に嫁ぐ事に不安を感じているような、少し気の弱い女性でした。別に不満もありませんでしたから、和やかに付き合っていたと思いますよ」


へ…………へえ。

自慢じゃないが、大人しくて穏やかだ、と言う評価を受けた事は生まれて一度もない。


「だから…………貴女のせいです。記憶を失ってからの貴女は、俺が全く知らない女性になってしまって。大口を開けて笑うし、王太子殿下と昔馴染みのように振る舞うし。おまけに、本当は事務能力にも長けている。何もかもが新鮮で、そして同時に不安でたまりません」


「私のせい、とはどういった意味合いで………」


剣呑な雰囲気のデパコスに、私はへこへこと揉み手をしながら尋ねた。


「以前の貴女には、正直何の興味もなかった。でも、今は違います。俺をこんな気持ちにさせた責任を取って下さい」


「せきにん」


私は繰り返した。


「俺はしばらくしたら、エインズワース領に戻らなければなりません。貴女を………王太子殿下と2人で王都に残しておく事に我慢が出来ない。だから、一緒に来ませんか?父が亡くなった後、俺が王都にいる間は、母と政務官が領地を回しています。仕事がしたいなら、そこで思う存分腕を振るえます」


「…………お母さんが、1人で………」


私は1人で私を育て上げてくれた母親の事を思った。

だけど、私が王都にいなくなったら、王子は1人になっちゃう。


「ちょっと、考えさせて。長逗留は難しいかも知れないけど、そうだね、行ってみたい気持ちはあるよ」


そうですか、とデパコスが嬉しそうに笑った時、王子の声が響いた。


「あー、お取り込み中?悪いんだけど、アルテ、ちょっと付き合って欲しい」







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