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王子と私とデパコスと  作者: えるぜ


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13/13

賢王の水晶玉

「ほんでどうよ、ダンスの具合は」


毎朝8時きっかりに、タウンハウスから登城したデパコスが書類の山を抱えた文官を引き連れてやって来る。その日の連絡事項、仕事の分担を決めてそれぞれの部屋で執務開始である。

しかし、一度登城すると、デパコスがいつ何時王子の部屋に闖入して来るか予想が立たないので、私達は朝7時から内緒の密会を持つようになっていた。

職住隣接というのは至極便利な物だ。


「どうもこうも、箪笥が踊ってるような物よ」


「………つまんねー駄洒落」


「うるさい。そこまで追い詰められているんだよ、私ぁ」


最近なんて、体がリズムを覚えるように、と半ば抱き抱えられるようにして音楽に合わせてのぶんちっち状態である。


「王子は?練習してみた?」


「ああ、全然ok。女官長に頼んで踊ってみたけど、筋の良さは相変わらずですね、って褒められちった」


ふふん、と王子が鼻で笑う。

悔しい。


「あでも、感謝してる。オマエが仕事手伝ってくれるしさ、『ダンスの練習』も必要ないから、毎週2回くらい時間貰って、この国の成り立ちや歴史勉強始めたんだ」


へえ、いいなあ。『ダンスの練習』という言い方に含みを感じながらも考える。

私だって、ダンスより歴史の方が好きだ。


「あ!そうだ、明後日の午後さ、宝物庫見せて貰える事になってるんだけど、良かったら一緒に行かない?」


「行きたい!」


オマエ、キラキラした物好きだったもんな、と王子が言った。

決して高価な物ではない。ただ透き通った綺麗な物が昔から大好きだった。本人には照れ臭くて伝えていないけれど、デパコスに貰ったアメジスト?らしいキラキラは、毎晩寝る前に眺めている。

何ならお祭りの屋台で売っているような物でも十分だけれど、本物が色々と見られるのなら是非見てみたい。


「………では俺もご一緒します」


デパコスの声が響いた。

しまった。

時計を見ると8時近い。内緒の密会といえどもドアはマナー良く開いている。


「公爵家以上にしか伝わっていない口伝もありますからね。担当官より役には立つでしょう」


まあ、そう言う事ならやぶさかではない。


「明後日お休みですから、今日と明日はみっちりと」


と、デパコスが嫌な笑顔を浮かべた。

ええ、頑張りましたとも。その日と翌日、私は鬼神のごとくレッスンに励んだ。デパコスに宝物庫行きを却下されないように必死である。

デパコスが私の手を取って上に持ち上げた時、私はついに華麗なターンを決めた。


「………まあ、いいでしょう。良く頑張りましたね」


あれ?何だか思いがけず凄く嬉しい。

こんなにも優しくて愛おしげな表情で誰かに褒められたのって、いつ以来だろう。

へらっと照れ隠しのように笑うと、そういえば「クラレンス様へらっ」という癖、いつの間にか直りましたね。頑張ったんですか?偉いですね、とまた褒められてしまった。

へらへらっ。


そして、運命の宝物庫訪問の時間がついにやって来た。

宝物庫自体は思っていたよりも地味だった。1番多いのは文書、それから伝説の武器や防具、初代国王夫妻の私物。宝飾品等は代々受け継げられ、代々の王妃様からそれぞれの王女様に渡されているらしい。

その時、目の端で何かがキラッと光った。


「……………あれは?」


私は思わずその光源へと近寄った。


「ああ、『賢王の水晶玉』ですね」


ボーリングの球くらいの巨大な水晶玉である。引き寄せられるように王子と私は水晶玉に近付いた。


「不思議ですね…………今までこんなに光った事はないのですが。俺もこんな状態は初めて見ました。これは、口伝が王族と公爵家だけに伝わっている伝説の宝玉です」


「どんな口伝が伝わってんの?」


王子の問いにデパコスが少し考え込むような仕草を見せた。


「本当に意味が分からない口伝ですよ。熱心に研究した職員もいたようですが、何の結果も出せませんでした」


「いいから」


「『入れ替わっちゃったら祈って。二礼二拍手一礼。向こうの相手が見えるから』賢王が…残された言葉だそうです」


「賢王って、確か大改革した人だったよな」


「ええ。行政、農政、税制。最後には王政にまで手を入れた方です」


王子と私の目が合った。

それだ!とお互い目配せをする。


「なあ、これ執務室に持ち帰っても良い?」


デパコスが管理官に確認を取ってくれる。


「かつては飾っていた王家の方もいらしたそうです。ただ、何の効果も変化も見られず、ひょっとして呪物ではないかと返却された方が殆どだとか。殿下でしたら…………持ち帰られても問題はないとの事です」


「じゃあ、持ち帰るわ。アルテ!」


「ガッテン承知の佐!」


私達をデパコスがじっと見つめていた事に気づかない程、私達は興奮していた。




読んで下さってありがとうございます^_^

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