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クマ祭り後夜祭  作者: グリズリーアニキ
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2/5

グリズリーと婚約破棄

「グリ、君との婚約を破棄する!」


 きらびやかな舞踏会の真っ只中で、第三王子ジェイノール様は高らかに宣言なさいました。


 わたくしとジェイノール様は、幼い頃に婚約し、長年にわたって共に時を過ごしてきた仲。


 それなのに──


 あまりにも唐突な宣告。


 わたくしの心は、一瞬にして地獄の底へと突き落とされました。


 それでも諦めきれなかったわたくしは、震える声を必死に絞り出します。


「理由を……理由を、お聞かせ願えますか……?」


 するとジェイノール様は、まるで当然の事実を告げるかのように、冷たく言い放ちました。


「理由……だと? そんなもの、君がクマだからに決まっているだろう」


 会場は、一瞬にして静まり返りました。


 まるで、時間そのものが止まったかのように。


「…………」


 わたくしは、言葉を失います。


「……え?」


 気づけば口から出たのは、それだけでした。


「え、じゃなくてだな」


 ジェイノール様は、やけに真剣な表情で腕を組みます。


「君はクマだろう?」


「はい、クマでございますが……」


「ほら、そこだ」


「そこ……とは?」


「そこが問題なんだ」


 ジェイノール様は深いため息をつき、まるで国の未来を憂うかのような表情でおっしゃいました。


「私は王子──人間だ。そして君はクマだ」


「はい」


「つまり──」


 王子は、もったいぶるように間を置きます。


「種族が違う」


「そこからでございますか!?」


 つい、心の声が口から飛び出してしまいました。


 会場の貴族たちが、ざわりとざわめきます。


「た、確かに……クマは……」

「いや、しかし彼女は令嬢だぞ」

「令嬢である前にクマでは?」


 やめてください!

 そんな哲学っぽい議論をなさらないで!!


 ジェイノール様は、さらに追い打ちをかけるように言いました。


「正直に言おう。私は、人間の女性と結婚したい」


「人間の女性!?」


「そうだ。少なくとも、冬眠しない相手がいい」


「そこですの!?」


 貴族たちが、一斉にうなずきます。


「確かに……冬眠は問題だな」

「冬に、ずっと眠っているのか……」

「国政の手伝いどころではない」


 納得しないでくださいませ!!!!


 わたくしの目から、大粒の涙がこぼれ落ちました。


「わたくし……わたくし……」


 震える声で、必死に言葉を紡ぎます。


「冬眠は……年に一回、三か月ほどでございますのに……」


「三か月も!?」


 ジェイノール様が、心底驚いた顔で叫びました。


「……わたくしは……」


 涙に濡れた瞳で、わたくしは顔を伏せました。


 会場は、沈黙に包まれます。


 ──そのときでした。


 ドォォォォン!!!!


 城が、爆発したかのような音を立てて揺れました。


「な、なに!?」

「地震か!?」


 貴族たちが悲鳴を上げる中、さらに響く轟音。


 ドゴォォン!!

 バキィィン!!


「報告します!!」


 血相を変えた騎士が、舞踏会場へ飛び込んできました。


「城門前に──」


 騎士は、唾を飲み込みます。


「クマです!!!」


「は?」


「クマが……一匹ではありません!!」


「何匹だ!?」


 ジェイノール様が叫びました。


 騎士は、震える声で答えます。


「ざっと……百匹ほど……!」


「軍隊か!?」


 会場がパニックに陥りました。


「なぜクマが城に!?」

「魔物の襲撃か!?」

「いや、あれは普通のクマだ!!」


 その瞬間──


 ガシャァァァン!!!!


 舞踏会場の巨大な扉が吹き飛びました。


 煙の向こうから、現れたのは──


 鎧を着たクマ。

 槍を持ったクマ。

 旗を掲げたクマ。


 クマたちは、一糸乱れぬ動きで整列します。


 ドン、ドン、ドン。


 床が揺れるほどの足並み。


「統率されているだと!?」


 ジェイノール様が叫びました。


 そして、先頭に立つ一匹の巨大なクマが、堂々と一歩前に出ます。


 そのクマは──


 サングラスをかけて、スーツを着ていました。


「お父様!?」


 わたくしは、思わず叫びました。


 父は、ゆっくりと王子を見つめます。


「……聞いたぞ」


 重低音が、舞踏会場を震わせました。


「娘との婚約を破棄したそうだな、人間の王子」


 ジェイノール様の顔が、真っ青になります。


「いや、その……」


 父は、ゆっくりとサングラスを外しました。


「説明しろ」


 その背後で、百匹のクマが一斉に殺気を放ちます。


 ゴゴゴゴゴ……。


「命をかけてな」


 その瞬間でした。


 ──ドンッ。


 一匹のクマが、どこからともなく太鼓を持ち出しました。


 ドン、ドン、ドン。


「……?」


 会場の誰もが、困惑します。


 すると、別のクマが笛を吹き始めました。


 ピィィィ──。


 さらに別のクマが、屋台を引きずって入ってきます。


「ちょっと待て! なぜ屋台がある!?」


 ジェイノール様の叫びもむなしく──


「おおおおおおおおおお!!!」


 百匹のクマが、一斉に雄叫びを上げました。


「祭りだァァァァ!!!」

「祭りだ、祭りだ!」

「クマ祭りだァァァ!!」


 ドン、ドン、ドン、ドン!!


 太鼓の音が、舞踏会場を震わせます。


「わっしょい! わっしょい!」

「クマだ! クマだ!」

「冬眠より祭りだ!」


 クマたちは、神輿を担ぎ始めました。


 ──いつの間にか、巨大なクマ神輿が組み上げられています。


「どこから出てきたのですか、その神輿!?」


 わたくしの叫びなど、誰も聞いていません。


 クマたちは、踊り狂っています。


 屋台からは、蜂蜜、鮭、木の実が次々と配られました。


「人間も参加しろォォ!!」

「王子も踊れェェ!!」


 いつの間にか、ジェイノール様はクマに担がれていました。


「やめろ! 私は王子だぞ!」


「王子もクマも関係ねぇ!!」


「命をかけて踊りやがれ!!」


 会場は、完全にクマ祭りと化していました。


 その光景を見ながら、わたくしは呆然と立ち尽くします。


「あの……ここ、舞踏会場だったはずなのですが……」


 父は、満足そうにうなずきました。


「問題ない」


「どこがですの!?」


 父は、わたくしの肩に、どっしりと手を置きます。


「グリよ」


「はい……」


「間に合わなかったクマ祭りは──」


 一拍置いて、父は高らかに宣言しました。


「自分たちで始めればいい」


 そして──


「祭りだァァァァ!!」

「わっしょい! わっしょい!」

「クマ祭りだァァァ!!」


 ドン、ドン、ドン!!


 クマ祭り後夜祭は、約十日間、続くのでした。

最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
ジェイノールと婚約した経緯が気になりますね。
クマが、クマがいっぱい。 巨大なクマ神輿見てみたいです。
2026/02/09 22:27 退会済み
管理
種族が違うなら婚約破棄も仕方ないね。 (´ε`) そもそもなんで婚約していたのかも謎w (・∀・)
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