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太陽の街

「すっっげ~~・・・」

「ああ、これは本当に・・・」

「きれ~い・・・」

「「・・・・・・」」


俺たちは太陽の樹の麓、太陽の街に足を踏み入れていた。

3人は初めて見る旧時代の街並みに惚れ惚れしていたが、俺とボスは警戒を解かなかった。


この街に入る扉、永久鋼製のゲートは、俺たちの到着を待ちわびていたかのように、近づいてだけで勝手に開き始めたのだ。


本来この扉を開けるには、扉の横にあるデバイスにアクセスをしなければならない。

この体では人間のデバイスを使えないため、ハッキング用の通信アンカーを突き立て、用意しておいた防衛軍のライセンスを認証させるつもりだった。


だがそれをする必要はなく、あれよあれよという間に外扉、内扉が開き、太陽の街に招かれた。


「お前さん、どう思う?」


「・・・やはり何かおかしい。勝手に開くゲート、守衛の不在、そして」

「ひとっこ1人いやしない・・・ねえ・・・」


3人はあたたかな気候にどこまでも続く白い街並み、金色に輝く塔の内壁に興奮冷めやらぬ様子だったが、ボスが喝を入れる。


「サム! マココ!」


「なんすかボス~せっかくいい所なのに~」

「ボス、いきなり大声を出さないでくれ・・・」


「まだ警戒を解くんじゃないよ」


「「・・・?? ・・・!! ・・・了解!!」」


「ハルカ、まだコックピットから降りるなよ?」


「ええ?! わ、分かった!」


危ない所だった。

あと少しでハルカがコックピットハッチを全開にしているところだった。


「ボス、ハルカを連れて街を見てきてくれ。他に熱源は見当たらないが、用心してくれ。それとマココを借りていいか? 中央研の本部に行ってくる」


「あいよ。マココ! よろしく頼むよ」


「了解した」

「おっ、ハルカちゃん! 今度はオレとお話ししよ~ぜ~」


「おじさん、どうしたの・・・?」


「人の気配が全くない。ハルカはボスと一緒に街を見て回ってくれ。俺は中央研の本部に行って、なにがあったか確認してくる」


「わ、分かった・・・」


「マココ、中央研の軍部入り口は正面を曲がって左だったか?」


「いや、裏側になる。おれが除隊したすぐ後に、確か閉鎖のアナウンスがあった」


「ありがとう。じゃあボス、何かあればすぐに連絡してくれ」


「あいよ。じゃあ2人とも、行こうかね」


「おじさん、またあとでね?」


「ああ。マココ、すまないな」


「いいってことさ。はやく行こう。何が起きているかおれも知りたい」







「にしても、だーれもいねーな。こんなあったけーのによ」


「うん。街はきれいだけど、なんか・・・」


「嫌なくらい静かだねえ」


ボスの言う通り、街は不気味なほどに静まり返っていた。

やっとたどり着いた夢の場所にもかかわらず、気分は上がらない。

見える景色はどこまでも明るいのに、暗い影が街を包み込んでいるかのようだ。


誰かと一緒でよかった。

独りだったらこの不気味な雰囲気に耐えられなかったかもしれない。


「おっ! あいつは・・・」


サムが急に足を止め、家屋の間の空き地に注目する。


「どうしたんだい? 何か見つけたのかい・・・って。なんだい、ヒューマノイドじゃないか。」


サムが見つけたものは小綺麗なヒューマノイドだった。

私のコロニーにも10体ほど似たようなものがいる。

ここでは住人の雑用か何かをやらされているのだろうか。


一見すると人間のように見えるが、顔の部分が丸ごと文字情報や、映像を映し出すディスプレイになっているのがヒューマノイドの特徴だ。


ヒューマノイドは空き地に力なく倒れていて、どうにも壊れている様子だった。


「おーいお前さん。ちょっとお話、聞かせてくんねーか?」


「・・・・・・」


「おお~~い~。聞こえてますか~」


「サム、そいつは壊れちまってるよ。早く他を見て回るよ」


「ちょっと待ってくれボス。こういうのはっ、こうしておけば治るんだぜっと」


サムは両手でヒューマノイドを掴み、激しく上下へ左右へと振り回していた。

そんなに乱暴に扱っては、動くものも動かないだろうに。

しかも人の手で揺さぶる程度ならまだしも、強化外装の力でそれをやると・・・


「ピピッ」


「うおっ?! びっくりしたぜ・・・」


サムの懸命な?応急処置により、ヒューマノイドの電源が付いたようだ。

だがその顔には、大きな赤い三角マークに「!」が描かれていた。

止めに入るのが遅かった。


「サムさんそれって・・・」


「え? な」

「暴力行為を確認! 暴力行為を確認! 治安維持部隊は直ちに現座標に急行せよ! 繰り返す。暴力行--」


「あ~!? やっぱり~! サム、ヒューマノイドの扱い方知らないんですか~!」


「え、ええ!? オレのせい? いや、だってこいつ、壊れてるか分かんなかったから・・・」


「まったく、コロニーで何を学んできたんだい。さっさとぶち壊してっ・・・と、手遅れみたいだねえ」


どこから湧いて現れたのか、大量の小型の暴動鎮圧ロボが頭の上の赤青のライトを点滅させ、私たちの周囲を取り囲んでいた。


「抵抗をやめ、直ちに投降しなさい!」「抵抗をやめ、直ちに投降しなさい!」「抵抗をやめ、直ちに投降しなさい!」「抵抗をやめ、直ちに投降しなさい!」「抵抗をやめ、直ちに投降しなさい!」


「ああ~もう! サムのせいで~!」


「しょうがねーだろ! オレのコロニーに居たやつはレジスタンスのサンドバッグだったんだぜ?! こんな機能付いてるなんて知らねーよ!」


「はいはい2人ともそこまで。ちゃっちゃとこのこまい奴らを片づけるよ」


暴動鎮圧ロボはアームに何かを持っていた。

人を対象としているため、電気ショックの棒か何かだとは思うが、今は強化外装に乗っている。

敵ではない。


「一応言っておくが2人とも。関節部にスタンバトンを当てられたら、機体が故障する可能性があるから気を付けなさいな?」


「じゃあ、やるしかないってことか!」


「うう~そんな~!」


ここでの戦闘は本望ではなかった。

なにせせっかくの綺麗な街並みがボロボロになってしまうかもしれないからだ。

外壁は私のマシンガンぐらいでは平気だと思うが、自分が原因ではないゴタゴタに巻き込まれるのはいい気分ではない。


とはいえ、向こうはやる気なのだ。

人ではないだけマシだとしよう。







バラララララ・・・・

ガンッガンッ!


銃声?

もう少しで中央研本部だというのに何事だ。

まさか、ハルカたちが何かと交戦しているのか?!

焦っているところにボスからの通信が入る。


「騒がせてすまないねえお前さんら」


「ボス、何があった。相手は警備の強化外装か?」


「いやいや、サムのせいで対人向けの暴動鎮圧用警備兵が湧いて出てきたのさ。囲まれたから、現在応戦中ってとこさね。すぐ片付くから、そっちの用を済ませな」

「オレは悪くねえって!」

「おじさん! 気にしないで、用事済ませてね!」


うーんどうするか。

ハルカのことは心配だが相手は対人用の小型アンドロイド。武装もテーザーガンとスタンバトンぐらいだ。

生身ならまだしも、3人とも武装した強化外装だ。問題ないか・・・?


「リーダー、あの3人なら丈夫だ。先を急ごう。しかしまた、サムのやつがすまない。これだから若いやつは・・・」


「そうだな、マココ。先に進もう」


マココはもう俺のことはリーダーと呼ぶことにしたらしい。

作戦は終わったのだが、いつまでもお前と呼ぶことには抵抗があるそうだ。


止めた足を前に進ませようとしたとき、前方から何者かが向かってくる。

広域レーダーで見るとジェネレーターの熱源反応が複数。

まさか・・・


正面から来る青と赤に光をセンサーカメラで確認する。

青いと白の装甲、腕にはシールドとライフル。

警備の強化外装だ。


あの3人の大活躍で、警備レベルが一気に跳ね上がったようだ。

素直に通してはくれなさそうだ。


「すまないマココ、応戦する」


「了解した」



破壊対象 前方熱源 複数

コード レッド

戦闘モードへ移行します








「も~~サ~~~ム~~~~!」

建物の影に隠れ、増援の青い強化外装に応戦しながら、サムに怒りの通信を入れていた。


「も~~何てことしてくれるんですか~! これじゃ私この街に住めなくなるじゃないですか~~!! どう責任取ってくれるんですか~~~!!!」


「な~に言ってんだハルカちゃん! オレたちのキャラバンに来るんだろ? 願ったり叶ったりじゃねーか!!」


「それとこれとは話が違いますう~~!」


「ほらあんたたち、しゃべってないで ギャリン!!! ・・・を動かしな!」


敵はレーダーに映っているだけで10機以上

武装は大したことないが、いかんせん数が多い。


さっきまで倒した数を数えていたがもうそんな気はとうに失せてしまった。

盾を構えるだけ構えて回避運動を全くしていないところから、相手が無人機だと分かっているのが唯一の救いだ。

もし人間が乗っているとすれば、両の掌の指よりも多い数の人の人生を終わらせた事実に、私は耐えられない。


ドゴーーン!ガシャーン!!


集団の後ろでジェネレータの爆発が何度も起きた。

よかった、来てくれた。

もうへきへきしているところだった。


「みんな、大丈夫か」

「おいサム、なんだその体たらくは。番犬での機動力はどうした?」


「おじさ~ん! 助かった~~」

「うるせえ! ここは障害物が多すぎんだよ!」


「お前さんたちにしちゃあ遅かったじゃないかい」


「ああ、こっちにも警備の強化外装が何十台も来てな。リーダーがほとんどやっちまったんだが、数が多くてな」


「ハルカ、怪我は無いか?」


「うへ~ん、疲れたぁ~~」


柄にもなく弱音を吐いてしまった。

この気のゆるみも、穏やかな光と陽気な気温のせいなのだろうか


かなり弾薬を消費したが、ひとまずこの窮地は脱した。

しばらく居たい気持ちはあるが、この場所は私が想像していた楽園ではなかった。

夢の世界のあっけなさを知り、はやく出ていきたい気持ちの方が強くなってしまった。


「それで、お前さんたちの野暮用は済んだのかい?」


「いや、警備の機体が出てきたところで、こっちの加勢に向かった。ハルカことも、心配だったからな。すまない」


「いやいや、謝るこたあないよ。諸悪の根源はサムだからね」


「いや、おれはただヒューマノイドとおしゃべりしてただけで、あいつが勝手に動き出したのさ。話聞こうとしてただけなのによお」


「やっぱり、レジスタンスの出が悪いんじゃないのか」


「あ、おいマココ! 言っていいことと悪いことがあるだろうがっ!」


「もー2人とも喧嘩しないでよ~。ただでさえ疲れてるのにさ・・・」



再び弱音を吐いた時だった。


ビイーーッ  ビイーーッ ビイーーッ ビイーーッ


静かな街に警報が響きわたる。

その音はコロニーに孔が開いた時に流れる、何度も聞いた不快なものだった。


「な、なんだあ!」

「これは・・・警報?」

「おうおう、セキュリティシステムはまだ生きてるじゃないかい」


「おじさん・・・?」

「・・・・・・・・・」


おじさんは身構えるように街の中心に体を向けていた。

彼の眼には既にバイザーが下りている。


新しい敵? でももう警備の機体は見当たらないし・・・


「全員! 正面の飛翔体を打ち落とせ!!!」


おじさんの怒号とも言える通信により、とっさにマシンガンを構える。


目の前の空から光を纏ってこちらに向かってくる「何か」


その「何か」は細い尾を描きながら私たちに向かってきた









ドドドドドドドドド・・・・・・

バラララララララララララ・・・・・・

ガンガンガンガンガンガンガンガン・・・・・・


チャリチャリチャリチャリチャリ・・・・・・・・・



視界が弾幕と爆炎に覆いつくされる。


爆炎で汚された地面に無数の薬莢が散らばる。


なぜあんなものが。

しかもこの数・・・


レーダーから飛翔体の熱源が消える。

何とか打ち落とせたようだ。


「全員、撃ち方やめ! ひとまずは大丈夫だ」


「びっくりしたぜ~。だんな~、ありゃいったい何ですかい?」


「あれは・・・」


「誘導弾。つまりはミサイルってことさね。あの大きさなら小型ミサイルの部類だけど、1発でも食らったら致命傷さね」


「「「ミサイル?!」」」


「あれ? でも、ミサイルって冷凍時代に入ってから廃れたはずじゃないの・・・?」

「そうだぜ旦那、なんでそんなものがオレたちを襲うんだい?」

「防衛軍はもう全て廃棄したと聞いたが・・・」


「ここは風も雪もない。小型ミサイルだろうと問題なく使用できる。だが・・・」


「撃ってきたやつがいるってことさね。おっと、噂をすればなんとやら・・・」



中央研本部の建物の上に1つの熱源


強化外装か。

やりようはあるが今はハルカの安全が最優先だ。


ゼロ・ブレイカーのチャージを始める。

破壊対象を正面の熱源に設定



破壊対象 正面熱源



相手はこちらを伺っている。

人間でも乗っているのか?

だがハルカたちを逃がすには今しかない。


「ボス、ハルカを連れてこの街から出るんだ」


「おじさん?」


「お前さん、どうする気だい。あいつはそこら辺の機体とは違うよ」


「時間は稼ぐ。エネルギー障壁は纏っていない。ゼロ・ブレイカーさえ当てれば勝負は」

「ねえ、おじさん!!」


「ㇵ、ハルカ?!」


ハルカの機体が俺の腕を掴んだ。

二度と離しはしない。

それぐらいの力が加わっている。


「ハルカお願いだ、離し」

「・・・離さないからね」


ハルカからの個人通信

今までに聞いたことのない、怒りと悲しみが入り混じった、涙を堪える声





『目標 健在』

『誘導弾 無効』

『有効な攻撃手段を検索中・・・』





「私言ったよね? みんなが幸せにならなきゃダメって」


私はあの時嘘をついた。


「・・・ああ」



「あれ、嘘なんだ」


本当の私はもっと身勝手で


「・・・・・・」



「私、悪い子だから・・・」


大切な人さえいれば



「おじさんだけでもって」


独りぼっちは嫌だから



「独りは・・・冷たくて、寂しくって・・・」


だから、私の本当の願いは・・・





「ずっと・・・い゛しょにいで・・・・・・」


「・・・・・・・・・」



涙が止まらない


この手を離せば


大切な人は遠くへ行ってしまう


また独りになってしまう


私の心は凍ってしまう


みんなのことは大好きだ


おばあちゃんも

お父さんも

お母さんも

コロニーのみんなも

キャラバンの3人も


でもおじさんは


私は彼のことを・・・


「分かった」

彼の手が、私の手に重なる。


「おじ・・・さん・・・?」


涙で前が見えない。

でも彼の優しいセンサーカメラの視線は感じることができた。


「一緒に、戦ってくれるか?」


「・・・う゛ん!」



「誰だか知らね~が、うちのキャラバンに手を出したとなりゃ、生きて返す訳にはいかねーなあ?」


サム・・・!


「番犬を倒したんだ。おれたちならやれるさ」


マココさん・・・!


「まったく、命知らずの馬鹿ばっかりだねえ。じゃあ、行こうかい!」


ボス・・・!


みんな・・・ありがとう・・・










「旦那、作戦は?」


「まずは出方を伺う。距離を保ちつつ、住居に隠れながら攻撃。隙ができれば俺のゼロ・ブレイカーで仕留める。」


「それ作戦かい? まあ、どうにかなるさね」


「これよりひどい作戦は何度もあった。問題ない」


「ハルカ、行けるな?」


「~~~~! もぢろん!」


まだ鼻声だ。

でも何か吹っ切れたようだ。


「ああ、それと1つ・・・」


「「「「?」」」」


「みんな、生きて帰るぞ」


「「「「おう!」」」」


相手はまだ攻撃をしてきていない。

場所を変えるチャンスだ。


「全員、散開!」






『・・・武装生成完了』

『目標 大型熱源』






散開と同時にやつも動き始めた。


俺めがけて突っ込んでくる。

どうやらあいつも空を飛べるらしい。

まずは、1発!


ゼロブ・レイカーを構え、発射する


冷気を帯びたプラズマ球は相手を通り過ぎ、外壁にぶつかり霧散した。


流石にか。

ゼロ・ブレイカーの攻撃は無人機の熱源感知では捉えられない。

やはり人が操縦しているようだ。


しかしなぜ攻撃をしてきたのだろう。

敵で味方か分からない場合は、こちらに一報を入れるか威嚇射撃で始まるはずだ。

だがあいつは初手から小型ミサイルをぶつけてきた。

明確な殺意を持って。



距離を詰めるあいつに弾幕の横やりが入る。

ハルカとサムだ。


サムは建物の隙間から不規則に顔を出し、絶え間なく射撃を入れている。

ハルカも負けじと一瞬射撃をし、身を隠す。場所を変えて、もう一度射撃、を繰り返している。以前教えた戦闘の基本をしっかりと実践できている。


相手も予想外だったのか、空中で急停止し、弾幕の元を探している。

人が乗っているとはいえ、ド素人のようだ。

そんな隙を、俺たちが逃すはずはない。


ギャ゛リ゛ン!!!


レールガンの砲撃音とやつの装甲に大穴が開く。

ボスの砲撃だ。

間髪入れず、ロケット弾の爆発に包まれた。

マココの武装だ。



空中の爆炎から黒い塊が吐き出される。


レールガンは直撃、そこにロケット弾の追い打ち。

どんなに装甲があるやつでもこれには耐えられまい。


吐き出された塊に追撃を入れようと、サムが真っ先に飛び掛かる。


「サム! 殺すな! 情報を」

「待ってらんねーぜ! しねーーーい!!」





『機体損傷率 67%』

『コード スクラップ&ビルド』

『周辺に鋼材を確認』

『実行します』





山・・・?

突如目の前に現れたのは黒い山だった。

しかしただの山ではではなく、無数の何かが絶えず蠢いている、生きた山だった。

建物を飲み込みながら、どんどん大きくなっていく。


さっき攻撃していた機体が爆ぜるのが見えたが、それからすぐにこれだ。

サムが飛び掛かっていたのが見えたが、無事だろうか。


「ハルカ! ボスと合流しろ! この黒いのには触れるなよ!」


おじさんの焦る声が聞こえた。

彼にも余裕がないとなると、かなり危険な相手らしい。


彼を思う気持ちと再び向き合う。

さっきは無理を通したが、今は自分の安全を最優先するべきだ。

感情を理性でコントロールし、ボスの機体へと向かう。

ボスもこちらに向かって進んでいるようだ。


おじさん、無事でいて・・・!





『機体修復 完了』

『ダメージを分析中・・・』

『高速で打ち出された質量弾による攻撃』

『プラズマエネルギー解析中・・・』

『データベースにヒット』

『極低温原子凍結エネルギー発射装置の可能性 大』

『武装の複製を行います』






なんなんだ、今のは・・・

サムが飛び掛かった瞬間、残骸の下から黒い山がせり上がり、周りの構造物を取り込んだ。かと思いきやそれもすぐ収まり、また元の強化外装の姿になっている。


サムは寸でのところでスラスターを全開にし、何とか回避できた。

高機動型だけがなせる荒業だな。


しかし、やつの様相が少し変わっている。


飛行ユニットは無くなり、今は黒い山によって作り出された構造体の上に立っている。背中からは2つの砲身のようなものが確認でき、両腕には俺のゼロ・ブレイカーと同じ見た目の・・・


まさか?!


「逃げろおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」







おじさん?!


彼の迫真の叫びがコックピットに広がる。


そして目の前にいたサムの機体が、ガラクタとなって飛び散った。


一瞬の出来事に、何が起きたのか理解できない。


サムの機体だったものが地面にばらまかれているという視覚情報だけが、私の体を動かした。


サム・・・・・・!!!


そんな

大切な人が

目の前で


いや



たすけ




「サムは回収した! 撤退する!」

壊れかけた心を、マココさんの声が繋ぎとめる。


「サム! 無事かい!」


「レバーが間に合ったぜ・・・ぃって~クッソ~」

「着地に失敗して腕を折っただけだ! 出血は無い!」


よかった・・・本当に・・・

もう、大切な人を失うのは、いやだ・・・


「ハルカちゃんや! 逃げるよ!」


「・・・っはい!」


おじさんは・・・どうするんだろう?

あいつを倒すの・・・?

いや、でも


再び感情が高ぶる。

しかし



ううん、信じよう


私にできることは、ここから早く出て、おじさんを安心させること


おじさん!


負けないで!!








うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!


ガンッ!!!


高速で装甲同士がぶつかり合い、両腕でやつの細い腕を縛り上げる。


俺がやることはたった1つ。


こいつを、あの広域光源にたたきつける。



こいつのさっきからの行動を見て、分かったことがある。

恐らくこいつは、この太陽の樹の最終防衛機体。

しかも、全身を戦術用ナノマシンで構成している。


どちらも俺が研究員だった頃は開発中だった。

ナノマシンは多機能化することが難しく、故に元々あった部品を形成するという機能に絞った修復用ナノマシンが精いっぱいだった。

だがこいつはさっき、明らかに周囲の建造物を分解し、破損個所の修復と武器の生成をやって見せた。

戦術用ナノマシンは完成していて、こいつに搭載されているとみて間違いない。

それに先ほどの動きとレールガンと、ゼロ・ブレイカーと思しき武装の生成。

強化学習Aiも搭載しているに違いない。


となれば正面からの真向勝負は圧倒的不利。

まだ対応していないであろう突撃による特攻覚悟の攻撃。

ナノマシンとメインジェネレーターを一気に叩く方法は今はこれだけだ。

このスピードならあと数秒で広域光源にたどり着ける。

こいつの両腕を拘束しているならゼロ・ブレイカーも脚にしか当たらない。


無傷では済まないが、これなら生き・・・て・・・・・・



やつを縛り上げていたはずの両腕が解かれている。


やつとの距離が開き、自分だけが自由落下を始めている。


なぜだ? 


答えは簡単だった。


俺の正面装甲に、大きな風穴が開いていたからだ。

そりゃ、メインジェネレーターも飛行ユニットもぶち抜かれては、どうしようもないな。



薄れゆく意識の中、あざ笑うかのように、ドス黒い機体の胸からは赤熱する短い砲身が見えた。


メインジェネレーターのエネルギーを直接プラズマ砲にするなんて。

そりぁ、無理な話さ。


掲げられたゼロ・ブレイカー

無数に飛来するミサイル

間髪入れずに連射されるレールガン



俺に抵抗できる力は無く


装甲が砕け散る衝撃と爆炎をひたすらに感じ


地面にたたきつけられた。





ここは・・・?


原形が無くなったセンサーカメラが俺の死に場所を映し出していた。


そこにあったのは、巨大な脳髄の入った水槽とそれを囲む小さな脳髄たちだった。


自分の機体がごみクズ程度にしか残っていない攻撃を浴びたんだ。

地下研究施設を守るための複合装甲も、難なく破壊されたようだった。

しかし地下施設にこんな場所があるとは、思いもよらなかった。

脳の研究であれば、第三世代フルサイボーグの研究でもしていたのだろうか。


真下に落ちてきたとなると、あとほんの少し押し込んでいれば、やつを倒せていた。

後悔の念は積もるばかり


ハルカ、すまない・・・。せめてここから逃げて、生きてくれ・・・。

愛する人を守れなかった自責の念が再び私の心を押し潰す。




しかし声を出すことも、手を動かすこともできず



俺はただ静かに、その脳髄を見つめていた。








何やら懐かしい


まるで自分の・・・・・・





















『ねえあなた、何にするか決めた?』


『え? 何をだい?』


『もう、決まってるじゃない。子供のな・ま・え』


『ああ、そういうことか。まだ早いんじゃないか?』


『名前ならいつ考えたっていいじゃない。あなた、何か案はある?』


『そういわれても、う~~ん・・・・・・』


『あら、そんなに悩むもの?』


『そりゃ悩むさ。子供にとっては、初めての贈り物だからな。その子の幸せな人生を願う名前にしないといけないだろ?』


『ちゃんと悩んでくれてるのね、ありがと。ちなみに私はもう決まってるのよ?』


『おお、なんて言うんだい? 教えてくれ。君はセンスがいいからね』


『あら、口が上手なこと。まあいいわ、じゃあ教えるわね。男の子だったら「ハルキ」で、女の子だったら「ハルカ」にするわ!』


『・・・・・・・・・』


『なによ~その不満そうな顔』


『いや~もうすぐで地球の平均気温が0℃になっちっまうんだぜ? もうそんな季節なんか来るはずないさ』


『あら、あなた意外と悲観的なのね。私は違うわよ、ちゃんと前を向いてるのよ!』


『現実的と言ってくれ。あと、その前向きな名前の理由とやらを聞いていいか?』


『よくぞ! ふふっ、この子たちが大きくなった頃に、また桜が舞う季節になってほしいなって・・・。それだけよ・・・』


『君は・・・。桜が好きだったな。ご実家にも、最後の桜があるんだって?』


『そういうこと! ね、素敵でしょ? どうかしら?』


『そうだな・・・。フフッ・・・。君の、その前向きさに、私も賭けてみることにするよ』


『やったー! ありがとうあなた! 愛してるわよ~♪』


『あ~もう、寄るな寄るな--』













おじさん・・・・・・!


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