合同作戦
いつも通りの暗い灰色が広がっているが、風は無く、雪も降っていない。
攻撃を仕掛けるには絶好の機会だ。
「よーしあんたたち、気合い入れな!」
「「おう!!」」
「ハルカ、準備は?」
「バッチリ! 任せてよ!」
「よし。では、番犬討伐合同作戦、開始!」
「「「「了解!!!!」」」」
前日
作戦会議
「まずは番犬の戦闘能力からだ。俺が持っているデータでは、大型機以上の体躯に両腕の大型ガトリング砲、背部から伸びる高出力レールガン、大容量のエネルギー障壁発生装置を搭載っと、まあこれくらいだ。他に何か知っているか?」
「レールガンについては、あたしがよく知ってるよ」
「じゃあ、頼む」
「あれの改造元はフォース・ターボ製高出力レールガン。あいつらが要求してきたスペックは弾速マッハ28。掠りでもすりゃ終わりだね。内部の導体レールは修復用ナノマシン対応で、あと消費電--」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「なんだい、せっかく人がしゃべってやってるのにねえ」
「す、すまない。ただなぜそこまで知っている? 中央研に居たようには見えないが・・・」
「中央研?そりゃ納品先さね。あたしがやったのはあの砲の設計さね」
「「「「・・・」」」」
「「「「えええええええ!?!?!?!?」」」」
「そろいもそろってうるさいねえ」
「つまり、あれは中央研のオリジナルじゃなかったのか?」
「すげーぜボス! オレたちもあそこの装備には親父も世話になっててな!」
「ボス、そういうのは早く言ってくれ・・・」
「あの、あの! フォース・ターボの特殊機について詳しく教えてください!」
「ああーもうしつこいしつこい! 昔の話さ! ほら、リーダーが進行を妨げてどうすんだい。さっさとやんな!」
「あ、ああ、すまない。というわけで、番犬のスペックは以上だ。次に作戦の立案だが」
「は~い」
「・・・サム、何か?」
「そもそもさ。あいつって、戦闘中補給は無いだろ? だったら、弾切れまで逃げ回ればいいんじゃねーのお? そこを一気に叩いて、ドンッよ。完璧じゃね~の~?」
「「「「・・・・・・」」」」
「な、なんだよ~、急に黙んなよ! こえーじゃねえか!」
「おまえ本当にレジスタンスのコロニー出身か?」
「一体何を学んできたんだろうねえ」
「か~おふたりは厳しいこった。だんなー、なんでダメなんすか?」
「まあ言いたいことは分かるただ、それだと世界中に自律型は普及しない。なぜか分かるか?」
「お~~ん・・・」
「それなら、私知ってるよ!」
「じゃあ、ハルカよろしく頼む」
「はい! えっと、自律型って、戦闘システムに短期学習型を採用してて、それで最初は警戒範囲内に入れば攻撃すんだけど、相手の動きだったり、装甲だったり、速度だったり~とにかくいろいろ! 学習して、確実に敵を倒せる距離にならないと撃たなくなるんだって! あと、長期戦になればなるほど、学習データが蓄積されるから、時間をかけるとすごく大変なことになる!」
「ハルカ、ありがとう。まあそういうわけだ。今回の相手は武装も強力で、弾薬の量も俺たちとは比べ物にならない。命中精度が高くなり続ける戦艦を相手にしていると思ってくれていい」
「は~~なるほどな~。ハルカちゃんすげーな」
「え? えへへ~それほどでも~」
「となると不意打ちは、ゲートの前に居座っている現状は不可能。背後をとれる場所に誘導、エネルギー障壁を破って、背後から攻撃、でいいのか?」
「端的に言えば、そういうことだ。ただ、あの大きさの障壁を作れるんだ。俺の武装で一時的に消滅はできるが、すぐに回復してしまうだろう。できればあいつの機動力も奪いたい。攻撃は、その直後になる」
「なら誘導後に障壁の破壊と足止めをすることになるのか」
「そういうことになるな。そこで番犬の作戦地点への誘導なんだが、これは飛行能力がある、俺に一任させてほしい」
「それは無しさね。あたしたちは同じ部隊の仲間。信用してもらいたいもんだよ。ガトリング砲くらいなら、まあなんとか・・・。マココ、どうなんだい?」
「ふーむ、正直心配ではある。万全を期すなら、先に商品のコンテナに向かい、正面装甲を回収。盾として使うのはどうだ、ボス」
「いい案だねえ。じゃあ先に、お前さんが警戒範囲に突入して、レールガンのヘイトを集め、その間にあたしたちが商品コンテナから盾を回収する。そんなんでいいかい?」
「了解した。ただ、ハルカ。お前は俺の正面装甲を持っていけ」
「え? なんで? おじさんは?」
「空中は攻撃を避けやすい。お前の安全が第一だ」
「ええ? で、でも・・・」
「それも無し、さね。なーに1人で死にに行ってるのさ。お前さんが死んだら、この子はどうすんだい?」
「その時は、ボスに預けるよ。連れて行くって約束だろ?」
「かーー! 嫌な冗談はよしてくれ。自己犠牲も、大概にするこったい」
「いや~、今のはボスからだったよな?」
「奇遇だな、おれも同意見だ」
「おだまり!」
「「はいっ!」」
「おじさん、死んだら、ダメだからね・・・」
「・・・すまない、ハルカ。軽いジョークさ」
「もー・・・」
「それじゃあ、お前さんが誘導兼障壁剥がし。足の速いサムを手伝いに持ってきな。あたしはレールガンを使っての足止め。背後からの攻撃はハルカちゃんに任せて、護衛にマココを付けようかね。サム! しっかりやるんだよ? あんたの装甲が一番薄いんだからねえ」
「ちっ、あんな木偶の坊の弾、目瞑ってでも避けれるぜ」
「了解! 問題ありません!」
「ボス。ハルカの機体は、レールガンの反動に耐えられない。どうするんだ?」
「なーに、心配なさんな。今から改修作業に入るさね。向こうに着く前には終わらないとだからねえ、ハルカちゃん。お前さんも手伝いな」
「分かった! でもそれなら私じゃなくて、マココさんやサムが撃てばいいんじゃ・・・?」
「おれやサムの機体は反動の大きな武装を扱える構造じゃないんだ。ハルカちゃんの機体は土木作業用のものだから、ボスの次に衝撃に強い。おれもサポートに入るから、安心してほしい」
「オレの機体はスピードが売りだしな! いちいち足止めてらんないぜ!」
「ありがとう、みんな。攻撃の手段が決まったところで、やつの動きを止める方法については、ボス。お願いできるか? 俺のレールガンはハルカに渡したい」
「任せな。うちのレールガンはスリーデルタのとこと違って火力だけはあるからねえ。やつの履帯も問題ないはずさね」
「よし、では作戦をまとめる。まず俺が番犬の警戒範囲に突入し、レールガンの射線を誘導。その間に4人は商品コンテナから盾を回収し、その後狙撃班と弾幕班に分かれ、狙撃班は丘の向こうで待機」
「弾幕班は俺とサム。適宜攻撃を行い、番犬を作戦地点に誘導する。番犬が作戦地点に到達すると同時に狙撃班はやつの背面を攻撃できる位置まで回り込み、その後俺がゼロ・ブレイカーを発射する」
「障壁の消失が確認出来たら、ボスがレールガンで番犬の脚部履帯を破壊。動きが止まったところをハルカの狙撃でとどめを刺す。作戦は以上になるが、みな、どうだ?」
「いいんじゃないかい?」
「問題ない」
「よし! やってやるぜ!」
「うん! 頑張る!」
5機の強化外装が雪の大地を駆ける。
もうすぐ番犬の警戒範囲に入る頃合い。
ボスに個人通信を繋げた。
「すまない、ボス」
「ん? なんだい急に、まさか遺言ってことはないだろうねえ?」
「死ぬつもりは毛頭ない。協力感謝する。ただ、とびきり安全な作戦ではなくなってしまった。申し訳ない」
「なんだい、そんなこと気にしてたのかい。お前さん1人前線に立って、あたしたち4人そろって狙撃、なんて馬鹿な話があるかい」
「はは、それもそうだな」
「死ぬんじゃないよ」
「ああ、お互いな」
飛行ユニットの銀色の翼を大きく広げ、曇天の空にオゾンと共に羽ばたく。
おじさん・・・
彼のことが心配でたまらない。
作戦会議の時に自分の正面装甲を盾に使えと聞いた時は、心臓がキュッとした。
昨日見た夢でそんなことがあったからだ。
その後の作戦で、サムさんが1人で行動して・・・
おじさんは・・・
「あ~ボス、おれ旦那の加勢に行ってくるわ」
「お前?! 盾は要らないのか!」
「オレの機体でそれを持っちゃ、あいつのいい的になるだけだぜ。いいよな? ボス」
え? い、嫌、だめ・・・
「せっかちだねえ。骨は拾ってやらないよ?」
「任せなって! じゃあマココ、オレの分までハルカちゃんよろしくな~。あ、ハルカちゃんに何かあったら、けちょんけちょんにしてやるからな!」
「おいサム! まったく、ボス。いいんですか?」
「あいつは好きにやらせておくほうがいいのさね。さあ、商品まで急ぐよ!」
全然良くない。
あの時見た無数の夢の1つと同じだ。
サムが1人で行動して、攻撃を受けちゃって。
おじさんがサム庇って。
それで・・・
・・・ううん、きっと大丈夫。
今回おじさんは空を飛んでる。
あの夢とは違う。
だから・・・
ガアン・・・!!!
空気を震わせる爆発音と共に、音速の何十倍もの速さの弾頭がこちらをめがけて飛んでくる。
だがそれは俺のいた場所とは見当違いのところに雪の衝撃を残した。
なぜ水平に向けた?
誰か他に狙ったのか?
まさかハルカの方を
「よ~だんなあ~お疲れ様だな!」
!!
サム?!
なぜここにいる?
お前はいま商品コンテナに向かっているはずでは
「サム! どうしてこ」
「旦那! 奴さん動き出しましたぜ!!」
ガトリング砲の射程に入れるため、番犬がこちらに向けて移動を開始した。
なぜ盾も持たずにサムがこちらの援護をしているのかは疑問だが、戦闘中にそんな暇はない。
不安だが1人で誘導するよりは遥かに安全だ。
ここはカバーし合おう。
「サム! やつを作戦地点に誘導する。俺と同じだけ距離をとれ。集中放火されるのを防ぐんだ」
「ロックオンを交互に入れ替わるってやつね。りょーかい!」
サムは到来する弾丸の雨をひらりひらりと躱している。
高機動型の名に恥じない動きだ。
しかもただスラスターとブースターを一瞬吹かせるだけの回避運動ではなく、不規則な蛇行とジャンプしてからの空中でスラスター噴出。かと思えば一気に直線運動を始めたりと、学習Aiからすれば最も解析に時間の掛かる動きをしていた。
無人機を延々と相手にしていたレジスタンスの戦い方というのだろうか。
サム、疑ってすまなかった。お前は紛れもないレジスタンスの兵士だ。
「リーダー、番犬への追加情報だ」
マココからだ。
まだ彼はハルカと共に待機地点まで移動中だ。
ここで番犬の追加情報ということは、ここからはよく見えない背面に何かあったのだろうか。
「やつの背面に展開式の高射砲らしきものが2門確認できた。気を付けてくれ。こちらはもうすぐで待機地点だ。持ちこたえてくれ」
「了解した。ハルカを頼んだぞ」
「こっちは元防衛軍だ。腕の見せ所さ」
高射砲か。
俺に向けて撃たないとなると、背面側の上空に向けて撃つものか?
射程外ということはないだろう。
どちらにせよ今回の作戦では関係ない。
作戦地点への誘導を急ごう。
「ハルカ、マココ。もうすぐ作戦地点に来るよ。準備はいいね?」
「はっ、はい!」
「了解!」
「ハルカちゃんや、緊張しすぎさね。マココが砲身を支えてくれるから、外したらマココのせいにするんだよ?」
「ボス、そりゃないぜ・・・」
「だいじょぶです! これで、1発で決めます!」
番犬が作戦地点に到達するまで残り十数秒。
何度やってもこの緊張は慣れない。
ん?
私はこれが初めてのはずだ。
何度も経験しているわけがない。
昨日見た夢にまだ引きずられている。
しっかりしろ、ハルカ
震える両手で頬を勢いよく挟む
キャラバンで貰った水を一口含む
今までで一番大きな深呼吸をし、汗の滲む手で操縦桿を握り占めた。
対象 作戦地点に到達しました
パチッ・・・パチッ
「ゼロ・ブレイカー着弾! ボス!」
翡翠色のエネルギー障壁がわずかな火花を残し霧散する。
「バッチリさね」
ギャ゛リ゛ン!!!
障壁が消えるとほぼ同時にレールガンの射撃音が鳴り響く。
バガァン!!!
数ミリ秒遅れて番犬の右側履帯が粉砕し、破片が宙を舞う。
速度を出していた番犬は壊れた右側履帯を軸に回転し、狙撃班の待機地点に背を向けるように停止した。
「総員! 番犬の前方に展開! やつの銃口を、一瞬たりとも後ろに向けさせるな!」
やつが背中を自分から向けてくれたのは幸運だ。
狙撃班の移動の手間が無くなった。
あとは頼んだぞ、ハルカ。
番犬がこちらに背を向けた。
動けない隙にマココさんと狙撃できる場所まで移動する予定だったが、なんと好都合なことだろうか。
片膝をつき、レールガンを展開、射撃体勢に入る。
よし、これで
ガンガン!!
顔を上げた私が目にしたのは
番犬の背中から放たれた
2つの閃光と
ゴガァーン!!!----------
「間・・・・・・一髪!!!」
「マココさん!!!」
黒い煙の中から見えたのは、マココさんの機体の背中だった。
番犬の背中から放たれた何かから、私を守ってくれたのだ。
「ハルカちゃん!早く砲身をおれの上に!」
「・・・! はいっ!」
走馬灯がはっきりと見えた。
昨日見た夢の1つだった。
もう死んでしまうんだ。
だからきっとこれも夢なんだと。
『ハルカっ!!!』
愛する人の声
ただそれだけが、私の心をこの世界に留めてくれた。
ありがとう、おじさん
対象 ロックオン
初めて感じる爆発と衝撃
マココさんの機体に支えられた砲身が大きく震える。
その光は黒煙と炎の余韻に風穴を開けた。
なんだ、さっきの2つの砲撃音は?
聴覚センサーは、レールガンでもガトリング砲でもない2発の射撃音を検知した。
まさか、高射砲が?
どうやって2人を?
疑問を感じたが既に遅くハルカたちのいる場所は爆炎に包まれていた。
「ハルカっ!!!」
自身の叫び声がトリガーとなったかのように、衝撃と共に黒煙の中から一筋の閃光が飛び出した。
その閃光は、弾丸をばらまき続ける番犬の背中に到達し、爆ぜた。
「「当たった!」」
「お?」
「ふふっ」
「ハルカ!」
番犬の攻撃が止まる。
訪れた静寂。
誰もが息をのんだ。
そして・・・
ドゴガアアァァァァァァァンンンン!!!!!
薄暗い空と一面の雪景色が織りなすキャンバスを突き破る衝撃と焔
空高く上がる煙は勝利の狼煙であった
「やっっっ・・・・・たあぁぁぁぁぁぁー!!!!」
私は誰よりも先に勝利の感動を祝う。
「よっしゃーー!! やってやったぜ!!!」
「ハルカちゃん、よくやったよ!」
「あたしたちも、やるようになったね~」
キャラバンのみんなが続けて雄たけびをあげる。
張り詰めた命の駆け引きから一転、計り知れない達成感が私たちを包む。
ただ1人を除いて。
皆が強化外装のまま一斉に駆け寄る。
「ハルカちゃんすげーよ! あの番犬をやっつけちまったんだぜ?!」
「間に合ってよかった。あの爆炎の中、よく当ててくれたよ」
「すごいじゃないかハルカちゃん。お前さんなら、世界をとれるねえ」
皆が賞賛の言葉を贈る中、1人だけ静かに、こちらの様子を伺っていた。
「おじさん? 大丈夫?」
「ㇵ、ハルカ。怪我はっ・・・ない、か?」
個人通信でおじさんの声が聞こえる。
ものすごく動揺している。
こんな声を聴いたのは初めてだ。
コックピットを開き、積もった雪を踏みしめる。
「おじさん! ほらっ!」
手を大きく開き、笑顔を向ける。
彼は、どれほど私の身を案じていたのだろうか。
強化外装に乗ったままでは、彼の心配は晴れないままだ。
こうして、傷1つない体を見せてあげることで、彼の心が休まるといいのだが・・・
「ハルカ・・・。本当に・・・? 何ともないんだな・・・?」
「もちろんっ! マココさんがしっかり守ってくれたからね! マココさん、ありがとうね!」
「ははっ、仕事をしたまでさ」
「マココ、あの爆発は・・・?」
「途中で見つけた、高射砲があっただろう? あれを水平撃ちしてきやがったのさ。ハルカちゃんが飛び出してすぐにあの砲身が展開されたのが見えたから、もしかしてって思ってな」
「え? じゃあ私、もしかして、やらかしちゃっ・・・た?」
「あっはっはっは。マココの仕事はハルカちゃんの護衛。何があっても、ハルカちゃんを守るのが、今回の役割だったからねえ。それに、ちゃんと番犬も倒せたんだ。100点満点さね」
「マココ、本当にありがとう・・・。俺の判断ミスだった。なんと礼を言えばいいか・・・」
「まあまあリーダー、気にしてくれるな。本当に間一髪間に合ってよかった」
「はあ~あ、おれは結局、見せ場無しか~」
「別にいいだろ? あと、お前が装甲置いて行ったおかげで、ハルカちゃんをしっかり爆風から守れたんだ。感謝してるよ」
「お、そうか! あ~でも、もっとかっこいいとこ見せたかったぜ~」
「そう言いなさんな、あんたたち。誰一人欠けてもできなかったことさ。胸を張んな。ほーらお前さんも、素直に喜んだらどうだい?」
「あ、ああ。そうだな・・・」
「そうだぜ旦那! あんたがいなきゃ、バリアすら破れなったんだぜ?」
「作戦は問題なく終了した。こういうときぐらい、勝利を祝おうじゃないか」
「おじさん! ありがとう!!」
「・・・! ああ、俺からも、ありがとう」
彼は少し照れくさそうに笑う。
あまり見たことは無かったが、ちゃんと笑うことができる心があるんだと実感した。
「あっそうだ! ここの警備の親玉をぶっ飛ばしちまったってことは、子分共が寄ってたかってくるんじゃあねえか? 早くあの中に入ろうぜ!」
そうだった。
太陽の塔は警備が厳重だから、番犬を倒しても油断はできない。
しかしおじさんに焦る様子は無かった。
「それなんだが、広域レーダーに他の熱源が見当たらないんだ。さっき商品を取りに行ったときも見当たらなかったんだが・・・」
「そうさねえ。この寒さで全部壊れちまったか、すでに誰かが全部ぶっ壊ちまったのかもねえ」
「確かにレーダーには何も映らないな。だがサムの言うとおりだ。増援は後から湧いて出てくるかもしれない。中に入ろう」
「ボス、商品はどうするんだい?」
「街に入った後からでも間に合うさね。増援が湧かないうちに、さっさと入っちまおうさ」
「これで、やっと街に入れるんだね?」
「ああ、そうだ。すまないな、ボス。もう少し付き合ってくれ」
「ふふっ、お安い御用さね」
「よーし、となればオレが一番乗りだ! 先行ってるぜ~」
「あ~! 私が先なのに~」
おじさんに無事を伝えているところを抜け駆けされた。
塔への一番乗りは私だ!
急いで機体に乗り、サムの後ろ姿を追いかけた。
「おい、サム! 2人とも! まったく・・・」
「はっはっはっは、賑やかでいいじゃないか。なあ、お前さん」
「ああ、本当にな・・・」
番犬は地に伏せた。
一時はどうなるかと思っていたが、ハルカは無事。
キャラバンの皆もほぼ無傷で戦闘を終えることができた。
なんという幸運だろうか。
今更ながらに勝利の余韻を噛みしめる。
さあ、残すは太陽の街。
失われた記憶がどういうものだったのか。
なんのためにこの塔を、太陽の街を目指していたのか。
俺もハルカのように、みなを幸せにするために、あの街を目指したのだろう。
太陽の樹の照射が始まり、光は街のゲートまでの道を造る。
私たちの進む未来も、きっと明るいだろう。




