再会
“核の火はこれまで7度、世界を焼き尽くしました。多くの尊い命が、素晴らしき技術が失われました。しかし、人類の、宇宙への挑戦は終わりません!”
懐かしい映像だ
子供の頃に見たっけな
あの時代の太陽は、まだこんなにも眩しかったのか
大勢の人が外で手を振っている
きっとあったかいんだろうな
“ヨシノ、愛しているよ”
“///はい、私も・・・、愛しています”
恥ずかしいな
初めて心打ち明けた時のヨシノか
いつ見ても笑顔が素敵な人だ
“私は・・・もう・・・・助から・・ない・・から、すく・・・って・・・・。この子も・・・・みん・・なも・・・”
・・・思い出したくない
“タク、地球の未来を、任せたぞ”
“お前の分も、きっちりやってくるさ”
“おーいタクー、出発前の挨拶が始まるぞー”
方舟出発の時のか
あいつは今も元気にしてるだろうか
“何て・・・ことだ・・・。こんな・・・、これが、こんなものが、・・・神が授けた火だと・・・? あぁぁぁぁぁぁぁ”
そうだ、全て壊さなくては
人類を、ほろぼ
『『『コンコン』』』
何だ
『『あれ〜おっかしいな〜』』
声が聞こえる
『ジェネレータの孔は塞がってるんだけどなぁ』
誰だ
『エネルギーラインがどっか切れてるのかなぁ』
前面装甲の内側に何かいる。
ジャンク屋か、メインシステム起動。
「え? うわあっ?!」
メインシステム 再起動しました
破壊対象を確認 戦闘モードへ移行します
人型熱源の後ろには旧時代の強化外装があった。
ハッチを開きっぱなしにしている所をみると、全くの素人らしい。
それにしても軍用の強化外装に生身で手を出すとは、とんだ命知らずだな。
どれ、間抜けズラでも拝んでやるか。
正面で尻もちをついている人型熱源に目をやる。
小さいな、1.3mといったところか。
外部メモリー 一部破損
飛行ユニット 使用不可
破壊対象 ロックオン
ん?
戦闘モードになっている。
顔を拝みたいんだ、通常モードへ移行。
通常モードへ移行します
さぁ、どれどれ・・・
戦闘用のフィルターが解除され、熱源はゆっくりと世界の色彩を宿す。
やがて全身が色を取り戻し、顔が映し出されたその瞬間、俺はセンサーカメラの故障を疑った。
そっくりだ。
あまりにも顔立ちが似すぎている。
いつだったか、ヨシノが見せてくれた、幼きヨシノが映る4人家族の写真。
優しい雪のような、白く髪を首から流し、カメラに優しく微笑むヨシノ。
防護服を着ており髪までは確認できないが、センサーカメラに映し出された顔は、あの時見た写真から飛び出てきたかのようだった。
お前は一体・・・、
そう問いかけようとした瞬間、幼きヨシノに似た顔立ちの少女の驚嘆の声が、喉元まで出かけた言葉を阻んだ。
「すっごぉ〜〜い!!」
それは私の、心からの声だった。
何だこの小娘は。
中から出てきたという事はジェネレーターをいじられたか?
機体確認しろ。
セルフチェック開始
・・・・・
チェック終了
ブラックボックス 異常なし
生命維持装置 異常なし
ジェネレーター 異常なし
エネルギーライン 背部飛行ユニット損傷
ふむ、特に異常無しか。
間に合ったか、それとも傷一つつけられなかったか
いずれにしろ、こいつには聞かねばなるまい。
「おい、そこの小娘」
「は、はいぃ〜」
間抜けな声だ。やはり似ているだけか。
だが・・・。
なんだ、この感覚は。
俺はこの声を知っている気がする。
なぜかは分からない。
デジャブなのか、外部メモリーの損傷によるものなのか。
一度も会ったことのないはずなのに、どうして俺は・・・。
長い間会うことが許されなかった人と、念願の再会を果たしたかのように心が震える。
だがその感動は、喜びだけではなかった。
なんで、こんなにも悲しいんだ・・・?
「・・・そこで何をしている」
「い、いえいえ、私はちょっと珍しい機体があるなと思って近づいただけでして、決して防衛軍の人に何かしようとは思ってな--」
「お前、街に行きたいのか?」
「・・・ふえ?」
え? なんで?
なぜこの人は、私が太陽の街を目指していることを知っているのだろう。
私のコロニーに強化外装はない。ましてやこんな軍の機体なんかがあるはずもない。
この機体が掘り出されたときは、遂にうちのコロニーにも強化外装が! と一躍話題になったぐらいであり、旧式のものすらない。
この機体は結局動かないとされ、放置されていたものを私が3年かけて必死に修理したものだ。私の太陽の街を目指す計画は誰にもバレていないし、呼び止める人もいなかった。
だから余計に不思議だった。
私のコロニーから追いかけてきている可能性はないし、まず私とこの機体は初対面のはずだ。
じゃあなんで・・・。
・・・いや、もしかして。
私と同じように、コロニーでの生活に嫌気がさし、太陽の街を目指して人なのかもしれない。
そうなら手を貸してはくれないだろうか。
軍用の強化外装があるなら百人力だ。太陽の街の外壁も簡単に壊せるだろう。
正直、旧式のパイルバンカーだけでは心許なかった。
「そ、そうだよ? 私、あの街に行きたんだ。あなたも、そう・・・なの?」
「・・・ああ、そんなところだ」
何を言っているんだ、俺は。
確かにこの小娘が1人で行動していることは気になる。
ただの破滅志願者か、太陽の街を目指す夢見がちな愚か者か。
その行く末は気になるが、今は◾️◾️◾️◾️という目的がある。
ここで誰かに構っている暇は・・・。
なんだこれは。
目的が思い出せない。記憶が欠落している。
外部メモリーが損傷したとあったが、まさか自分の行動目的を忘れてしまったのか?
しまったな、外部メモリーに記録しているとはいえ、メインプログラムの書き換えもしておくべきだったか。
こうなると街にある研究所のドックでメモリーのサルベージを行うしかない。
「あ、あの~」
「なんだ?」
「お願いします! あの街まで連れて行ってください!」
少女は深々と頭を下げ、合掌した手を頭の前に掲げていた。
お願い! お願いだから!! 連れてって!!!
私は藁にも縋る思いで、誠心誠意お願いモードに入っていた。
コロニーを離れ3週間が過ぎていた私にとって、これは運命の出会いだった。
水も食料も、頑張ってもあと3日で底をつきそうな量しか残っておらず、ひしひしと絶望感を感じていたからだ。
強化外装の中はしっかりと修理をしたおかげで寒くはないのだが、どれだけ機体の中が安全でも食料が尽きればそれでおしまいである。
道中で夢かなわず、餓死する未来がちらつき始めていた。
だからこそ、この千載一遇のチャンスをものにすべく、必死に祈った。
「私にできることがあれば、何でもしますから! お願いします!」
あまりにも信用のないお願いの仕方だなと思ったが、今私にできるのはそれくらいだった。
まずは生きて太陽の街に入る。
そこから先は・・・。
いや、考えるな。
一瞬でもいいから、あの街に立つ。
そうでなくちゃ、私は死んでも死にきれない。
「ああ、分かったよ。連れて行けばいいんだろ? さあ早くお前の機体に乗れ。牽引する」
「え? ほんと?! ほんとに??」
「ほら早くしろ、置いていくぞ」
「ええいやは、はい! ごめんなさい! あ、ありがとう! おじさん!」
少女は顔あげると、笑顔で感謝の言葉を伝え、自分の機体に駆け寄っていった。
誰がおじさんだ。
俺は彼女を街に連れていくことにした。
なぜそのように判断したかは自分でも疑問だった。
プログラムの一時的なエラーか、はたまた亡き妻によく似た1人の少女からの渾身の頼み事だったからか。
・・・この少女に、我が子を重ねたのだろうか。
なんにせよ、あの街に向かえばよい。
この小娘はそのついでだ。
飛行ユニットはもう使い物にならんな。
パージしろ。
背部飛行ユニットへのエネルギーライン遮断
ユニットのロック解除
パージします
武装は全て使えるが、今は小娘が一緒だ。
戦闘はなるべく避けるべきだな。
「腰あたりにアンカーが見えるか。そこから引き出せして、フックをそっちの機体の牽引孔に通すんだ」
「はーい!」
少女の機体は器用にアンカーを掴み、ワイヤーを引き出す。
器用なものだな、メカニックではなくパイロットでもやっていけそうだ。
「おじさん、繋いだよー」
「じゃあ発進するぞ、機体の姿勢制御に気をつけろよ」
ブースターの向きをわずかに外に逸らす。
赤い炎が暗い世界に灯もり、2つの影はゆっくりと動き出した。
速度は巡航速度を維持。
最高速だと小娘の機体が保たんだろう。
となるとここからあの塔までは・・・小娘の休憩も入れると60時間ほどか。
まあいい、ゆっくり行こう。
失った記憶の答えは、街に行かなければ分からない。
そして、この不思議な感覚も・・・。
だが今は気分がいい。
こんなにも満たされたのは久しぶりだ。




