表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/32

ログ:告白

これは罪の告白だ


そして私の遺言でもある


命が費える前に、これだけは残しておきたかった


今を生きている人類は知らないであろう大罪


これは懺悔のためのものではない


ただ伝え損なった友人への


せめてもの償いだ





今の地球人類の生活は小さな未来をすり潰して成り立っている


それは方舟の私たちも同じである



『太陽石は子供の命と引き換えに作られている』



これが「神が授けた火」


人類史に残る偉大な発見の正体だ





事の発端は中央研本部に運び込まれた2人の遺体だった


1人は若い女性研究員


もう1人は生まれたばかりの赤子だった


女性はその赤子の親であり、出産の直後に亡くなったとされている


そしてその赤子は死産だった


悲しい出来事だが、所詮はそれまでだ


本来ならここに来る用は無いはずだった



しかし、この2人がここに運び込まれたことには理由があった


その赤子は母親の脳細胞を吸収し続けており、心肺機能が停止した今もなお、脳細胞は自身の体組織を食らい、生きているという


仔細を知ったときは、この世のものではない、何か得体のしれない怪物が生まれてしまったのではないかと戦慄したものだ


当時のサイボーグ研究のチームは、この不可解な2人の遺体の調査を始めた


その母親の頭部を切開し、発見された小さな結晶体こそが、後に太陽石と呼ばれるものだった


その結晶体は体温ほどの熱と僅かな光を放ち続け、どれだけ砕いてもそれが失われることは無かった


新たなるエネルギー源に目を付けた総監部は極秘の研究チームを設立、この太陽石の生成方法を模索した


そこで鍵となったのが、怪物のような赤子の脳だった


赤子の脳髄は血液を介し、母親の脳細胞を貪り成長する


その最後に残されたものが太陽石となるのであれば、他の脳ではどうなるのか


研究は少人数の精鋭でありながら、驚くほど順調に進んでいった


最初にマウスの脳組織


それを肥大化した赤子の脳髄と同じ培養液に入れたところから始まった


ほんの数マイクログラムにも満たない太陽石の生成が確認されると、次はさらに大きな脳組織を持つ生物が要求された


多種多様な生物の脳組織が捕食されていき、サルの脳髄が最も生成量が多かった


しかし多いとは言ったものの、母親の頭部から採取されたものに比べれば、その量はあまりにもわずかな量だった


研究チームはついに、人間の脳細胞に手を出した


消えぬ罪の始まりだった




研究チームは難病や障害によって助かる見込みがない老若男女の脳髄をこれでもかと集め、捕食させた


結果はそのすべてにおいて、他の生物とは比べ物にならない量の太陽石が生成された


生成量は元の脳髄の大きさにかかわらず若いほど多くなり、7歳の脳髄が最も大きな太陽石を生成した


この成功を受け、中央研は凍結されていたはずのクローン計画を再度実行に移した


しかし目論見は外れ、クローンの脳髄から太陽石はほとんど生成されなかった


オリジナルとほぼ同じにも関わらず、その生成量の違いは研究チームの頭を悩ませた




そしてついに、冷凍保存されていた精子と卵子から培養液の中で命を作り始めた


7歳にまで成長した純真無垢な子供たち


何をされているかを理解することなく、子供たちは静かに脳髄を取り出された


クローン技術を応用し、精子と卵子から脳細胞だけを作り出すことに成功したが、

それまでに何人の子供たちが犠牲になったのだろうか


命とは、こうも簡単に切り捨てられるものなのか


言葉を理解するまでに成長した子供たちの笑顔を


なぜ平気な顔で奪うことができるのか




私はこれらの事実知り、激しく激昂した


倫理委員会はなぜこれを止めなかったのか


我々はどこまでいっても人間であることを忘れたのか


殺気立つ私に、皆同じ言葉を返した



『人類を救うためだ』



納得している自分がいた


私も大罪人の1人だった


しかし隠し通さねばならなかった


遺体の母親は、忘れがたき友の愛人だった


妻と子を失い、今あいつはこの世界に絶望しているだろう


だが方舟を完成させるには


人類を救うためには


あいつの力が必要だった



私が天国に行くことは無い


何食わぬ顔であいつと会話をし


その裏では妻と子どもの体を、魂を


今も穢し続けているのだから


どれだけの謝罪を重ねても


どれだけの償いをしても


全ては無駄だ




多くの命を踏みにじり、魂を穢し続けている罪人にできることは


彼らの犠牲を無駄にすることなく


人類を救うことだけだ


だがそんな未来に


私が残る権利はない







私はじきに命を落とす


後の研究は頼れる後輩に任せることにする


私たちの罪は消えない


これからの未来をどう歩むかは


あなた方次第だ




人類の未来に、導きの火があらんことを







ヨシノ


ロバート




すまない


地獄から詫びを入れさせてくれ


どうか


来世は幸せに


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ