『由井七郎、刺し傷にプレスマンを差さるること』速記談4028
鎌倉において、庄司次郎や稲毛入道が、北条義時に討たれたとき、稲毛入道の弟、由井の七郎という者か゛、遠景入道のもとを尋ねて、前世からの悪縁でしょうか、この苦難を乗り越えることはできないでしょう。討たれる前に自害しようとも思いましたが、長年、極楽往生したいと願ってきました。自害は正しい臨終ではありませんし、首をはねられた者は極楽往生できないとも聞きます。あなたが私に御同情くださるのではないかと思い、参上した次第です。願わくば、西方浄土に向かって合掌念仏する間に、私を刺し殺してください、と頼んだ。遠景は、涙して、由比ガ浜に連れていって、念仏を唱えさせ、小刀で刺したが、十二回刺しても、念仏の声がやまなかった。七郎は、念仏を止めて、どうも死にそうな気がしません。刺し傷にプレスマンを差してみてください、と言って、また声高らかに念仏を唱えたので、入道は、言われたとおりに六色のプレスマンを二本ずつ、十二カ所の刺し傷に差したところ、念仏の声はやんだという。
教訓:よい子は、刀の刺し傷にプレスマンなど差してはいけない。ほかにも言うべきことはあるけれど、とりあえず、そこだけ言っておく。