第98話 一年生大会が始まる
「て事で、一年生大会が終わったら咲茉と義隆の2人とダブルデートだから」
「わかりました……咲茉ちゃんと川田さんが付き合っていたなんて…」
澪は意外だとでも言いたそうな雰囲気を醸し出していた。
「まだ付き合ってはいないらしいよ、けど義隆は咲茉の事好きだから、頑張ってほしいね」
一応友達なのでやはり恋は実って欲しい。
まぁ、初デートで告白とかしたら多分失敗すると思うけど。
義隆が少しテンパりながら咲茉とデートしている姿を考えていると、澪が上目遣いで少し俺の心臓くんに良くない言葉を言った。
「デート楽しみに待ってます」
澪はそれだけ言って。玄関に向かって行った。
澪さん、良くないって。
もう少し俺の心臓くんの気持ちを考えてくださいよ。
澪は由依さんよりも数倍切れ味がある上目遣いとフレーズで俺の心臓くんに大ダメージを与えてきた。
もちろん俺の顔は赤く変色していた。
澪が玄関を開けた音で俺は意識を戻し、見送りをしに澪に近づいた。
「蒼君、来てください」
「ん、わかった」
サンダルに履き替え澪に近づいた。
その瞬間、俺の唇に何か柔らかい物が触れた。
「じゃあね」
澪はそれだけ言って外に出た。
玄関が完璧に閉まったのを見て、俺は一人壁に寄りかかった。
キスをされたという事を理解するのは容易な事だった。
「澪さん……俺の攻撃力舐めるなよ」
と言葉を漏らしたが、実際今でも心臓の鼓動がうるさかった。
だけど、このままあいつにペースを握られると、俺としても澪が困惑したり照れている顔を見たいのでたくさん攻撃したいので、心臓の鼓動を落ち着かせ、切り替えた。
デートでのカウンターで澪を殺そう
俺はデートで澪が照れて『っあ……う』みたいなめちゃくそ照れさせて困らせる計画を立て、自室に戻った。
◆◆◆
やばいやばいやばい
どうしようどうしようどうしよう
「澪?」
「ひゃい…って、お母さん…」
自室で蒼君にキスをした恥ずかしさに悶えていると、お母さんが部屋に音もなく入ってきていました。
もしかしたらノックをしたのかも知れませんが、今の私は気づくはずありません
「どうしたの?そんなに毛布に包まって」
「おお母さん、私蒼君に、ききキスしちゃった」
私は噛みながらお母さんに伝えると、『あらぁ』とお母さんは口に手を当てて驚いてしまっていた。
「頑張ったのね、偉いわ」
お母さんからの頭撫で撫では蒼君と少し違った安心感と温かみがありました。
「他に何かないの」
食い気味なお母さんに私は馬乗りにされてしまった。
「大人の下着買ってこようか?それともエッチな知識教えようか?」
お母さんからの質問攻めに私が困惑していると。
トゥルル、トゥルル。
スマホから電話の着信音が鳴り、お母さんは私から身を引き、スマホを私に渡し一階に降りて行った。
画面には咲茉ちゃんと表示されていた。
私が電話に出ると、通話早々に。
『ねぇねぇ、私川田君にデート誘われちゃった、しかも澪ちゃん蒼君とのダブルデートだよ!』
『そうですね、私達も精一杯可愛く見られるために頑張りましょう』
『うん!……それで何だけどさ……』
最初のうんは元気一杯のいつもの咲茉ちゃんだったのに、急に声色が元気から不安に変わったように感じた。
『川田君となるべく2人きりになりたいんだけど、協力してくれませんか』
なるほど。
私はその場で首を縦に振りながら聞いた。
『良いですよ、私も蒼君と2人きりになりたいので』
『本当!ありがとう』
先程から一転し、いつもの元気な声色に戻ったのを感じて、私は微笑んだ。
『じゃあね澪ちゃん!』
『また明日、咲茉ちゃん』
電話からは規則正しく電話が切れた音が鳴り響いていた。
今夜はぐっすり寝れると確信し、眠りにつきました。
◆◆◆
「弁当は?」
「ある」
「ユニフォームは?」
「ある」
「着替えは?」
「ある」
これから一年生大会が始まると言うのに……何で俺は自分で準備出来ないと思われてんの?
…時間も時間だし気にしてられないけども。
「じゃあ、行ってくるよ」
「私も行きますからね」
「お前は学校だろ……大丈夫、絶対に勝って明日に残るから明日見に来い、わかったな」
俺は澪の頭を撫で玄関を開けた。
9月の後半。
天気はまるで俺らの事を応援するかのように雲一つない快晴。
気分上々になり、俺は何回良いプレイが出来そうな予感がした。
 




