表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/157

第88話 黒の女神を慰める

『なぁ、最近少し炎上してる歌ってみたを上げてる、柳レイって人知ってる?』


『もちろん、オレっちは普通にレイの歌声は好きだし、好きな人がいたとしても、オレっちは推すかな』


『私も、同じ女の子で、高校生なら別に恋愛してもいいと思う』


『↑JKって言ってたっけ?』


『ごめん、私の勝手な解釈だから違ったらごめん』


『俺も何で炎上しているのかわからない、チー牛共が勝手に僕はレイたんと相思相愛、ドゥフドゥフとか言ってるだけじゃないの?』


『俺は、炎上してもしゃーないと思う』


『何故に?』


『何ていうか、やっぱりレイのことを軽く、アイドルみたいに見ている人もいるんじゃないかなーって、やっぱりアイドルって色恋沙汰は御法度じゃん』


『確かに、それも一理あるのか』


『まぁ、別に女子高生だとしても、三十路だったとしても、好きな人ぐらいいてもいんじゃね?』


『三十路で好きな人はちょっと……』


『俺はたとえレイが好きな人がいたとしても、推すし、その恋愛も応援する、異論は認める』


『まぁ、俺等も応援しようぜ』


◆◆◆


……澪の元気が最近ないと思う


俺が小型監視カメラを買いに行くためにアミューに行った9月4日。

帰りにしっかりと前に買った、高いモンブランを2個買ってあげたのに、家に帰ってただいまって言っても、いつもみたいに『おかえりなさい』と返ってこなかった。

確認しにリビングに急いで向かったら、ソファーのクッションに顔を埋めて涙を浮かべながらしょんぼりしている澪がいた。


たまに聞こえてくる、鼻水をすする音が、俺の心を傷つけていく。


澪は俺がいることに気づくと、いつも通り、俺が知っている澪の振る舞いをしてくれたが、どこか変に感じる事があった。


その時から、何となく何かあったんだろうと思っていたが、確信に変わってしまったのは5日後。


9月9日の金曜日。


メールで、体調不良と来た9月5日、体調不良はまぁ誰でもいつなるかわからないからしゃーなしだけど、6日以降は音沙汰無し。


俺は心配して『何かあったら?』と聞いてみたが、既読の文字だけ出てきて返信無し。


たとえ、保育園生の人でも、何かあったんだろうと推理する事は容易だと思う。


俺は部活終わりに寄ってみることにした。


「雫さんの車はあるから、多分雫さんはいるはず」


車庫の中にはソルバーの軽自動車が収められていた。


インターホンを押してから数秒後、澪の家の玄関が勢いよく開いた。

中からは澪と同様の癖無し艶ありの綺麗な黒髪を靡かせている雫さんが出てきた。


「こんばんは、雫さん」

「こんばんは、蒼君……家に上がって」


何の前ぶり無く雫さんから、家に入れと言われたのに、何となくだが、向こうも澪に関して何だろうと察しているのが感じられた。


家に入り、雫さんの後ろをついて行く形でリビングに入った。


「澪の事でしょう?」

「はい……」


俺と雫さんの間に微かな沈黙が流れた。


先にこの沈黙を破ったのは雫さんだった。


「あの子が……ヨウチュウブで配信をしていたってのは知ってる?」

「まぁ、何かしてるんだろうなー程度ですが……」


何となく配信関係なんだろうと予想はできていた。

まぁ、不審者か澪のどちらかが配信をしているってのはもう証拠もあるし確定事項だったからな。


「そう…あの子が蒼君の家に毎朝毎晩行かなくなったのはね」


俺は唾を飲み込んだ


「炎上を起こしてしまったからなの」

「なるほど……」


炎上

——我々、インターネットに動画や音楽をアップロードしている者にとって、これ以上に怖い物はないと思う。


数多の批判、誹謗中傷。

澪は豆腐メンタルだから耐えられるはずがないさろう。


「ご飯もまともに食べてくれないし……多分風呂にも入ってないと思う」

「そうですか……」


これは俺が想像しているにより酷いかもな


「ねぇ、蒼君」

「はい」


雫さんは、少しだけブルーベリーの紅茶だろうか?

少しだけ紅茶を飲んだ後、俺の名前を呼んだ。


部屋には雫さんがマグカップを食台に置いた、鈍い音が響いた。


「澪を助けてくれない?」

「疑問ですね…そのために俺は来たんですから」


俺は、椅子から立ち上がり、澪の部屋がある2階に向かい、目的地である澪の部屋に着いた。


ドアにはみおとひらがなで書かれ、周りには水色やら、エメラルドグリーンの宝石で彩られた名札が掛けられてあった。


「ふーぅ……よし」


俺は深呼吸をして、ドアをノックした。

中からは、微かにベットが軋んだ音が聞こえてきた。


「澪、俺だ」

「蒼くぅん?」

「入っても良いか?」

「……いいよぉ」


涙を含んだ声色は、俺が澪を慰めるには大きすぎる動機だ。

澪の返事を確認して、部屋のドアを開けた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ