第74話 目のハイライトが消えた
「ここで平方完成させるんだが、気をつけろよ、マイナスだからな」
数学の時間、先生は熱心に平方完成での注意点を語っていたが、俺はそんなのをお構いなしに先生にバレないようにこっそりとスマホでゲームをしていた。
しかし、俺が楽しくゲームをしていると、突如画面の上からチャットアプリの通知が弾丸のように降りかかってきた。
誰だろう、俺は適度に黒板を見ながら差出人を見てきた。
誰からだろう、確認だけして既読はつけなくて良いかな……あー、やっぱり澪からか。
案の定差出人は澪からだった。
おおかた予想はつく、どうせなんで手を振ったのに振り返してくれないんですか、とかだろう。
事前に向こうのヤンデレが発動した理由がわかれば、対処は簡単
「じゃあ、この4問を7分で解いて、解けたら隣の人と答え合わせして」
問題は2次関数のx座標とy座標の交点を求めろ、と言うものだ、ただ平方完成をすれば終わる問題なので1分少々で俺は全問解いたが、隣の女子生徒全然手が動いていなかった。
苦戦してるねぇ、でも、これがまともにできないと今後がピンチだしね、澪も出来なさそうだし今日は自主練せず早く帰って教えた方が良さそうだな。
俺は適当に噴煙を上げている桜島を見てはプリントを見て、少しだけ長く感じた回答時間が終わった。
「じゃ、隣の人と答え合わせしてね」
「柊君、教えてくれない?」
隣の女子は顔の前で手を合わせて、頭を下げながら俺にお願いしてきた。
流石にこんなにも願ってくれているので、断る気も起きず、俺は優しく教えた。
「良いよ、じゃあどこがわからないのかそれを教えて」
「全部」
「それは流石に救えないかな」
「ごめんごめん、平方完成の後がわからない」
そっとがわかってその後がわからない事あるか?
最初、全部って言った時は調子乗んなと思ったが、まさか、平方完成がわからないでは無く、交点の出し方がわからないとは……変な人が居るものだな。
「後がわからないんだよね?」
俺は聞き直すと『うん』と言ったので聞き間違いでは無いという事がわかった。
「クッソ簡単に言うと、xとyに0を代入してそれを解くだけだよ」
「それはわかってるんだけどさー」
じゃあ聞くなよ。
俺は申し訳ないがこの女子は嫌いかもしれない、それ以前に名前も知らないしその程度ってことか。
俺にはやっぱり澪しかいないんだなーと再認識した。
「そそたらもう気合いで頑張れ」
その後も俺はミスがあったら怒りをできるだけ隠しながら丁寧に教えた。
「じゃあ、答え書いていくから丸付けしてね」
その後も、俺はしっかりと先生にバレずにゲームをした。
◆◆◆
「最近思うんだけどさー」
昼休み、弁当箱を持って食堂に行き俺、康太郎、久則、義隆、志歩、その5人で昼ご飯を食べていると、俺の弁当を見ながら義隆は聞いてきた。
「蒼の弁当マジで美味しそうだよな」
義隆は、牛丼を食べながら、皆に言った。
ありゃあ、澪が作った弁当なんだし美味いに決まってるだろ。
「最近は料理にハマってるからさ……ゆうてこれも昨夜の使い回しだけどね」
昨夜は美味しく寿司を食べたんだけどもちろん嘘をつくぜ。
「へぇーじゃあさ――」
「蒼君、ちょっと来てくれない」
俺はその時、全てを悟った。
康太郎が何か言おうとしたが、それを遮るように、遠くで食べていた咲茉がこちらに来て、俺を呼んだ。
大方、俺を呼んだ理由は澪関連だろう、なんせ咲茉が来たであろう方向を見ると、一人、この世の終わり見たいな、ハイライトが消えた目をしていた澪がいたから
「ごめん、呼ばれたから行くは」
「あぁ」
俺は自分の弁当を持って、咲茉と澪が2人で食べていた席に来た。
「蒼君、早く食べて体育館裏に行きましょう」
「……わかった」
咲茉は笑いをこらえていたが、俺は笑うことができなかった。
笑った瞬間、澪に殺されると思う
あぁ、空はこんなにも綺麗だったのか
 




