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第70話 見せつけられる

夏の盛りを越えた9月1日。

始業式が行われる体育館の中には、制服の袖を引っ張り直す者、蝉の声の名残を思い出すようにぼんやりと天井を見上げる者——その全てが、夏休みの終焉と共に押し寄せた現実を黙って受け入れているようだった。


壇上では校長が、静かに、そして少しばかり重々しく話していた。その声は、雨上がりの微かな湿気と混ざり合い、言葉の輪郭を曖昧にしていた。話はどこか遠く、頭上を通り過ぎていく雲のように、時折その意味が掴めないまま漂っていた。


「最後に——」


その言葉が響いた瞬間、体育館に詰めていた生徒たちの空気がわずかに揺れた。「やっと終わるのか」という期待と、「本当にこれが最後なのか」という疑念とが交錯する。


だが、校長はその後もゆっくりとした口調で語り続けた。夏休み明けの目標、これからの挑戦、そして学校生活の意義について——一言一言が丁寧でありながら、果てしなく長い時間を感じさせた。


そんな果てしない時間、俺のポケットの中から微かな振動が起きた


ん、誰からだろう


一応、今は式の途中なので真面目な生徒はスマホの電源をオフにしているが、俺は別に校長の話なんてどうでも良いと思っている派なのでもちろん、この時間を有効活用して、ゲームの周回に当てていた。


俺は誰からだろうと思い、チャットアプリを開いた。


『みんな、今月の最後に大会が入ったよ』


え、試合?


差出人は義隆からだった。


俺はこの時はまだたいして大きな事ではないと思っていた。

理由は、俺ら1年生で公式戦に出た事があるのは久則のたった1人だけだったから、練習試合のB戦——ベンチや1年生がメインで出る時しか俺はまだ出れていないから。


しかし、数秒後に義隆から来たメッセージで俺は先生達にバレないよう密かにガッツポーズをした。


『1年生大会って名前で、鹿児島のバスケレベル向上のため今年からするってさ』

『1年だけの大会?』

『うん』


俺は無意識に文字を打っていた。


もしここで良いアピールできたらワンチャン出れるんじゃね、ちょっと気合い入れるか


俺は、早く終われと念じながら、校長の話を聞いた。


◆◆◆


「おい蒼、そこでロールターンだろ」

「はい!」


確かに、ディフェンスが付いてきてたしここでターンすればほぼフリーで撃てるな


「ラスト―」


うわ、何でこの人なんだよ


マネージャーさんが1対1を終えると給水タイムが待っているという、普段だったらめっちゃ嬉しい『ラストー』の声。

俺も最後は気合で乗り越えようとした。

だけど、相手がなんでこの人なんだよ


「はよ出さんか」

「はいはい」


川喜多かわきた(しゅう)

うちの高校の現エース


うん無理、勝てるわけない、あの理不尽なフィジカル、クソ早いドリブル、離したらすぐ撃ってくるシュート

どうしたら止めれるのでしょうね


俺はもはやなげやりに秀さんにパスを出した。


パスを受け取った秀さんは一歩、また一歩と近づいてくる。

ドリブルの音がリズミカルだが、時折、予測不能なタイミングで音が変わる。まるで相手のバランスを崩す術を熟知しているかのようだった。


本当に不規則なのキモい

迷惑


秀が一瞬、左へ体を傾けた。反射的にそちらに動いた瞬間、右足が素早く踏み込み、ボールは右手に移動している。


俺はあぶねーと思いながら何とか食らいついたが、それは見事なフェイクだった。


うっそーん、まじぃ


声にならない声が頭に響く。必死に追いつこうとするが、秀の動きはすでに次の段階に進んでいる。


秀さんは俺との実力差を見せつけるようにあえて遅くして、俺が追いつくのを待っていた


何とか間に合い、空中でワンチャンブロックに賭け飛ぼうとしたか、秀さんは俺の体にぶつかり、俺は秀さんとの距離を無理やり作られそのままイージーシュートを撃たれてしまった。


おいおい、お願いだからフィジカル使わないでよぉー

それ以前にドライブもキモいし、何あの速さナーフされろ


俺は秀さんの愚痴を脳内澪に言っていた。

澪は微笑を浮かべて聞いてくれたので少し嬉しかった。


しかし、これまたキャプテンはドMらしい


「給水終わったらランな」


おいおい、俺は秀さんと1対1したばかりだぞ、たかが1分の休憩で休めるかってんだ


俺はまたもや脳内澪に愚痴を言いながら水を飲み、部員全員がならぶラインに戻った。


◆◆◆


「じゃ、俺はもう帰るわ」

「あいあい、じゃ、明日」


3時に終わった部活を終えたが、俺はシューティングしたかった。

体育館でももちろんしたがまだまだ足りない、秀さんとの実力差も見せつけられたし……


俺は少しでもあの人に追いつくために澪に電話した。

もちろんワンコールで出でた


『澪、今日の時間ある?』

『ありますけど……どうしました?』

『俺が帰って来るまでに運動着に着替えててくれない?』

『わかりました』

『ありがと、じゃ後20分ぐらいで帰り着くから』

『わかりました。……愛してます』


澪は原子爆弾を置いて電話を切た。









こんばんは、アカシアです


一応この作品ってカクヨムコンのラブコメ部門で80番代に位置してる結構凄い作品なんです


僕としてはめっちゃ嬉しいのですが、やるんだったらもうちょい上に行きたい


ということで星をくださいお願いします

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