第52話 黒の女神をもっとボコしたい
いやー、多分だけど某家電などを出してる会社から出てるゲームだったらトロフィー解禁してそう
『女たらし初心者』的な感じで
って、余計な事を考えて現実逃避してるんだけどさ
呼吸をすると、空気と一緒に胸にいる人からの甘い匂い鼻に入っていき、鼻腔をくすぐる
もちろん心拍数は爆上げ
「澪」
「な、なんですか?」
澪は急に話しかけられたせいか、体を少しだけビクっと震えてしまった
電車がゆっくり動き始め、車内はさらに狭く感じられた。揺れに合わせて周囲の人たちが押し寄せてくる
「ごめんな、澪。狭いけど、こんな形でしかスペースを確保出来ないんだ」
おれはできるだけ彼女が窮屈に感じないように気を使ったが、ふと顔を下げると、澪の耳が赤くなっているのに気づいた。
「いえ…蒼君が守ってくださっているので、大丈夫です。でも…」
彼女はそう言って小さく俯き、残りの言葉を飲み込んだ。
いや気になるって
「でも?」
その続きを聞きたくて尋ねると、澪はますます顔を赤らめ、口ごもった。
「いえ、その…なんでもありません!」
焦った様子で顔を横に向ける澪。
もっといじめたいって言う感情が出てきたが、もう既に照れさせ合戦の1回戦はおれが勝ち越していると思う
それにこれ以上こんなムーブをかますと流石に嫌われそう
おれとしても澪以上におれを愛してくれる人もいなさそうだし、おれ自身彼女以外の人を愛する自信が無い
電車が揺れるたびに、澪の肩が俺の胸に軽く当たる。そのたびに微妙な緊張感が走るのを感じながら、おれは彼女を守ることだけに集中しようとした。けれど、窓ガラスに映る彼女の真っ赤な顔を見ると、どうしても意識してしまう。
「狭くて悪いね」
気まずさを紛らわすように声をかけると、澪は慌てて首を振った。
「い、いえ!蒼君がいてくださるだけで、とても心強いです。でも…」
君はもう少し自信を持とうや
また言葉が途切れる。その沈黙が余計に気になってしまう。
電車が大きく揺れた瞬間、おれは思わず澪の肩を支えた。「大丈夫か?」と尋ねると、彼女は小さな声で「あ、ありがとうございます……」と答えた。
流石に防御性能カスすぎなのでは?
攻撃に全振りしすぎだろ、攻撃が最大の防御って言ってるけど、そもそも攻撃させなければ勝ち確定だな
いつもより震えている声も、ほんの少し震える肩も、どれだけ彼女が恥ずかしい思いをしているのかを物語っていた。おれだって恥ずかしくないわけじゃない。
少しだけは恥ずかしいむしろ、こんなに近くで彼女を意識しないほうが無理だ。
けど澪をいじめると反応が可愛いんだよなー
新たな性癖生み出されそう、澪虐とかおれ以外需要無さそうだけど
そしてついに目的地の駅に着いた
「次はー終点、鹿児島中央、鹿児島中央、お出口は右側です」
「もう少しで中央駅だよ」
自分に言い聞かせるついでに澪にも言うと、澪は小さく頷いた。
狭い車内の中、俺たちは周りの喧騒から切り離されたように感じた。息苦しいほどの人混みの中でも、澪の存在だけは不思議と安心感を与えてくれる。だけど、それが逆にどうしようもなくおれを少しだけの緊張感を煽っていた
まぁ、いじめたいって言う感情も出てきたんだけどね
◆◆◆
鹿児島中央駅に到着し、電車を降りると、澪と並んで改札を抜けた。人通りの多い駅のホームはいつも通り賑わっている。大きな案内板や目立つ観覧車のオブジェを横目に歩きながら、おれはふと隣の澪に目をやる。
「蒼君、本屋さんはア○ューの4階です」
「流石に知ってるわ」
「ふふ、すいません」
このガキ舐めやがって
そう思ったが澪の口元に手を添えて微笑んだ姿は、澪に似合っている浴衣姿によって一つの絵画として美術館に飾られてもおかしく無いほどに美しかった
おれは美術の知識は雑学程度のことと常識程度しか知らない、そんなおれでも美しいとしか思わなかった。
それ以外の感想が出てこなかった
「コンビニでジュース買ってくるけど、何か飲みたい物ある?」
俺がそう聞くと澪は考えるそぶりを見せ「では、お茶で」そう言われてので回札横にあるシエラレオネ共和国の国旗に似たコンビニに向かった
◆◆◆
駅直結のア○ュー入り、エスカレーターで4階へ向かう。目的地は大きな本屋だ。
もちろん人はそれ程度にはいるんだが、改札付近とは雲泥の差、これだったら澪も緊張せず過ごせるし男もあまりいないから一石二鳥
「澪はどんなジャンルが好きなんだ?」
そう聞きながら、おれはふと横を見る。澪は少しだけ考え込むようにしながら言った。
「そうですね…最近は蒼君の部屋にある推理小説を読むことが多いです。でも、今日は蒼君が好きな天文学の本も見てみたいです。」
え、あ、は?
もしかして本棚の不自然スペースの犯人こいつかよ
それにワンチャンパソコンの……いや、流石にパスワードまでは把握されてないはず、そう信じたい
「天文学コーナーもありだけど、今回は推理小説っすね」
俺がそう言うと、澪は嬉しそうに頷いた。
本屋の中を歩きながら、彼女はどんな本を手に取るのかを想像するだけで、なんだか楽しくなってきた。こんなささやかな時間でも、澪と一緒だと特別に感じられる。
これで堂々と少女漫画を取ったらギャップで笑いを堪えれないぞ




