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第41話 黒の女神に早く帰ってきてほしい

「え、じゃあさじゃあさ」

「お、お願いですもうやめてくだしゃい」

「最後だから」

「最後ですよ」


咲茉ちゃんがこちらをじっと見つめている。その瞳には、いつものように悪戯心が満ちていて、私は嫌な予感を覚えた。ベッドの上でくつろいでいたはずなのに、一気に背筋が伸びる。


「ねえ、澪ちゃん。」


咲茉ちゃんの柔らかな声が、なんだか妙に含みのある響きに聞こえる。


「…なんですか?」


恐る恐る答えると、咲茉ちゃんはニコッと笑った。


「確認だけど澪ちゃんってさ、本当に蒼君と一緒に住んでるんだよね?」


私は顔を赤くしながら視線を逸らした。

これで最後なんだから、最後の辛抱です


「そ、それがどうかしましたか…?」


すると、咲茉ちゃんは、ベッドの上でゴロンと寝転がりながら、さらに追い打ちをかけてきた。


「蒼君に、どんな風に甘えてるの?」


「えっ…!?」


その一言に、私は思わず声を上げた。顔が一気に熱くなり、心臓がバクバクと音を立てる。


「どんな風って…別に私はそんなこと…」


慌てて否定しようとするけれど、咲茉ちゃんの興味津々な視線に気圧されてしまう。


「でもさ、一緒に住んでるんでしょ?絶対甘えたりしてるでしょ。例えば、ベッドの上で『蒼君、お疲れ様』とか言いながら抱きついたり…してるんじゃない?」


「ち、違います!」


声が裏返る。咲茉ちゃんの想像力に圧倒され、思わず反論してしまうけど、頭の中にその情景が浮かんでしまって、自分が何を否定しているのか分からなくなる。


――毎晩添い寝して、毎晩蒼君の胸に顔を埋めて寝る。


その記憶が頭をよぎり、顔がさらに熱くなる。


「ねえ、どうなの?」


咲茉ちゃんが追い打ちをかけるように聞いてくる。


「も、もうやめてください!もう終わりです!」


私は思わず手で顔を覆った。熱くなった頬が冷える気配はない。


「ふふ、澪ちゃんってほんと可愛いね~。こういう話になるとすぐ分かりやすいもん。」


咲茉ちゃんの笑い声が響く中、私はただ恥ずかしさに耐えるしかなかった。


「まぁ、流石に虐めすぎたね、昼ごはん奢るから食べに行こうよ」


私は咲茉ちゃんに腕を引っ張られ外に出ました。


「別に奢ってもらわなくても……」

「いやいや、これでもしないと蒼君に私が殺されそう、いや、殺されるね」


確かに、もしあの場で私が録音でもしとけば、絶対に蒼君は咲茉ちゃんを殺しそう


「私でも容易に想像できたのでここはお言葉に甘えさせていただきます」

「うん、で今から行く所はパスタ系の店だけど良い?」


パスタ系……って事はカルボナーラとかも有るって事かな


「いいですよ、私もカルボナーラを食べたい気分でした」


そう言うと咲茉ちゃんは綺麗にウィンクをして


「じゃあ、行こっか」


◆◆◆


カフェ風のレストランに足を運ぶことになった。店内は木目調の落ち着いた雰囲気で、窓から差し込む柔らかな光が心地よい。


「澪ちゃん、何食べる?私はミートソースかな~。」


咲茉ちゃんがメニューを眺めながら言う。その横で私もメニューに目を通し、カルボナーラを探しました。


あった


クリーミーなソースがたっぷり絡んだパスタに、パリッと焼いたベーコンと黒胡椒が美味しそうに映っている。


「私はカルボナーラにします。」

「ここのカルボナーラは美味しいって有名なんだって」


咲茉ちゃんが楽しそうに笑いながら店員さんを呼び、注文を済ませた。しばらくして、カルボナーラが運ばれてくると、ふわりと漂うチーズの香りが私の食欲をそそる。


「いただきます。」


一口食べてみると、濃厚なクリームソースが口いっぱいに広がり、ベーコンの塩気がアクセントになってとても美味しい。


「どう?おいしい?」


咲茉ちゃんがフォークを持ちながら聞いてくる。私は頷きながら答えた。


「はい、とっても美味しいです。」


「よかった~。澪ちゃん、そんなに美味しそうに食べるんだから、私も今度カルボナーラにしようかな。」


そう言って笑う咲茉ちゃんの顔を見ていると、なんだか先ほどの恥ずかしさも少しずつ和らいでいく気がした。食後に頼んだカフェラテに砂糖をたくさん加え飲みながら、私はふと感謝の気持ちを伝えたくなった。


「咲茉ちゃん、今日はご馳走してくれてありがとうございます。とても楽しい時間でした。」

「え、なにそれ~、改まって言われると照れるじゃん!まぁ楽しんでくれたなら私も嬉しいし、これでいじりすぎたのチャラにしてね」


私は微笑みながら『はい』と言ってあげました

咲茉ちゃんが照れたように笑う姿を見て、私は少しだけくすっと笑ってしまった。そんなささやかなひとときが、心地よく感じられた昼下がりと合わさり、小説の一世界に感じました


◆◆◆


澪さーん、早く帰って来てくれ


目の前には仕事を一生懸命終わらせようとしてるおれの両親とフィンランドから帰って来た和希さんに甘えてる雫さんがいた


「かず君、えへへ」

「これこれ、ここはおれらの家じゃないぞ」


雫さんは和希さんのがっしりとした胸にほっぺをすりすりし、和希さんはそれに応えるように頭を撫でていた


見たくない

これはおれだけじゃないはず、他人の両親のイチャイチャとか普通に考えて見たくないでしょ

こんなの誰が需要求めるんだよ


「はぁ」


おれは一つ深いため息を出した


お願いだから早く帰って来てくれ




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