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第23話 黒の女神は遊びに行く

「いったぁ」


私の夏休み初日の目覚めは最悪でした。

理由はおでこを壁にぶつけたからです


どこも腫れたりしてないよね


自分のおでこを手探りで触り、腫れているか確認しました。

運良くどこも腫れていなかったのが不幸中の幸いです


いつのまにか、向いてる方向が真逆になってるし


昨夜、私は蒼君の背中に腕を回し、蒼君の胸に自分の顔を当てるように寝ていましたが、朝起きると、壁との距離が近くなっていました


「ふぁー」


自分の寝相の悪さに少し呆れながら1つ大きなあくびをして、蒼君の方を見た


綺麗な寝顔だなぁ

私がそんな事を思っていると、一つの考えが芽生えました


蒼君はまだ寝ています、やるなら今しかありません

これで私は一歩、周りの人達からリードできます、メリットを考えると羞恥心何て関係ありません


「よし」


私は覚悟を決め、蒼君の頬に近づき、自分の唇を添えた


「あなたの初めては私の物です……ふふ」


蒼君のファーストキス?を多分奪えた優越感に私の眠気は吹き飛ばされ、おでこをぶつけた事も綺麗に忘れました


ファーストキスってしっかり唇同士じゃないとダメなのかな……まぁ、ほっぺたにキスできた点は成長した証ですね

これを、日常でできたら良いんですけど……


そんな事を思いながら、私は蒼君の部屋から出て、一階に降り、朝食の準備をしました


◆◆◆


「蒼君、朝ですよー」

「ん…おはよう澪」

「おはようございます蒼君」


普通体を左右に揺さぶられながら目覚めた朝は、良いってわけではない

これを男バスの誰かにされたら、まさに最悪な寝起きになる

けど、おれが起こされた相手は澪なので、特段嫌な気持ちにはならなかった。逆に良い目覚めだと思う


「朝ごはんできてますので、下に早く来てくださいね」

「わかった」


澪は足早に部屋を出た。

それにしても


「澪さん、破壊力えぐいな」


澪は黒色のエプロンを着て、普段は髪をまとめず、ストレートなのに、今回はポニーテール


全国の男性諸君は、自分の好きな人もしくは自分の推しのエプロン姿を妄想した事があるだろう、ソースはおれ

おれだって男の子なんだ、澪のエプロン姿を妄想するに決まっている


おれの妄想した澪は水色だったんだが、黒も良き、ポニテも良き


そして、澪のおかげで軽い体を起こし、伸びをして一階に降りた



机の上にはパンとブルーベリージャム、そして牛乳

いたってシンプルでテンプレの朝ごはんがあった。

ジャムを塗り、パンを食べていたら


「今日は何か用事でもありますか」

「特には、宿題をして自主練してゲームって感じかな」

「でしたら、スーパーで付箋に書いてある物を私が帰って来るまでに買っててくれませんか」


おれは付箋を見た


卵、にんじん、鳥の胸肉、牛乳、アイス、洗剤、柔軟剤


「良いけど、どっか行くの?」

「はい、友達と市内に行って来ます」

「そっか、楽しんで来てね」


おれは笑みを浮かべながら、言った


「はい、帰って来るのは大体6時ぐらいになると思います」


おれは牛乳を喉に流しながら、左腕を上げ親指を立てた


4時ぐらいに行くか


朝ごはんを食べ終え、食器を澪と洗っていたが、澪がやけに時計を気にしていた


時間が厳しいのかな、ここは少しでも良いところを見せないと


「食器はおれが全部洗うから、澪は準備をしてきたら?時間が厳しいんでしょ」

「あ、ありがとうございます」


案の定、澪はすぐにスポンジをおれにあげ、階段を駆け上がって行った


◆◆◆


今日は久々に咲茉ちゃんと遊べるんです、少しでもおめかししないと


目に留まったのは、前蒼君が買ってくれた鮮やかなブルーのワンピース


『澪の淡い蒼の瞳と、その、綺麗な黒髪とマッチしていて、今日着た服の中で、1番似合ってると思う』


蒼君はそう言ってくれた、私も今まで買ってきた服の中で1番お気に入り

だけど、この服は蒼君と2人っきりでどこか行く時に着たい



幾つかの服を胸にかざしては想像してを繰り返し、最終的に選んだのは、淡い水色のトップスと白いフレアスカートの組み合わせ。爽やかで、これからの季節にもぴったりだ。これにシンプルなアクセサリーを合わせれば、ちょうどいいバランスになるはず。


「よし、これで決まりです」


服をベッドの上に並べ、満足げに頷く。時計を見ると、そろそろ準備をしないといけない時間だ。今日はどんな楽しいことが待っているはず

――そんな期待に胸を膨らませながら、私は服を着た


「行って来ます」

「行ってらっしゃい」


玄関の前でそう言葉を交わし、私は玄関を開けた


蒼君も可愛いって言ってくれたおかげで私は自信に満ち溢れていた


早く駅で咲茉ちゃんに会いたい

その感情のせいで歩く速度が早くなった




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