第149話 体育祭3
「とりあえずどうする?」
「一旦、コンビニ行きます?」
殆ど俺がテントの重りを運んだが澪も少なからず少量ではあったが重りを持ったので疲れているのは事実だろう。
しかし、澪も手伝ってくれたお陰で案外早く仕事が終わったので俺等は暇になってしまった。
「アイスでも食って体力回復しないとな、澪もヘトヘトでしょ」
「そうですね、では行きましょうか」
桜島高校の校門を抜け、近くにあるコンビニの中に入った。
時間は6時43分。
殆どの商品は一つも減っておらず、店員はぼーっとしてレジに経っているのが誰でもわかるぐらい明らかだった。
澪もそれに気づいているのか、少し苦笑いをこぼしていた。
「アイス、どうします?」
「そうだな……俺はこれにしようかな」
アイスが置かれているエリアから俺はみかん味の棒アイスを手に取った。
澪は
「じゃ、じゃあこれにします」
澪が手にしたのは抹茶がモナカに挟まれているアイスであった。
「歩きながら食おうぜ」
「そうですね、行儀は悪いですがこのほうが合理的ですものね」
時刻は7時03分。
多分殆どの生徒がやっと中央駅行きの電車に乗ったか家をやっと出たのかのどっちかだろうなー
俺も二度寝とか澪と朝一番でイチャイチャとかしたかったのに用具係に就任したせいで……いや、事前に書いてあったから俺のミスだな。
澪と雑談や去年の体育祭の話を聞きながら桜島高校に向かった、雑談に花を咲かせたお陰か時間がすぎるのが早いと感じた。
去年の話を結構澪から吐き出させたせいで顔が真っ赤化になり俺の胸元に顔を擦り付けポンポンと握りこぶしを作って殴ってきた。
痛みは皆無であったので俺からしたらただただ可愛い澪の姿を見れるご褒美タイムになっていた。
まだ生徒が来る時間帯でもないので胸の中で非力ながらも一生懸命叩いている澪をお姫様抱っこで無理矢理俺との距離をさらに近づけ
『ふぇっ』とかわいらしい驚き声を上げている澪に微笑みを向け、教室まで向かった。
「校内でお姫様抱っこって少女漫画の世界みたいだな」
「そ、そうですね……」
すると、澪は頬を赤らめ。
「貴方だから良いんですよ……」
澪は多分聞こえてない、独り言で言ったんだろう。
だけどごめん、めっちゃ聞こえる。
澪さんめっちゃ聞こてますよ、めっちゃ俺自身内心嬉しいですよ。
貴方だから良いなんて言われたら全国の女子に植えている高校生は興奮しかしない。
もちろん俺も例外ではない。
顔を赤く染めているのは澪もだが俺も赤く染めているのでなるべく見られたくない。
だから視線を澪から天井に向け、ひとり天を仰いだ。
「蒼君?」
「んぁ、どうした?」
「……いや、何もないです。
私達は許嫁ですから将来はお姫様抱っこを1日中できるようになるんですよね」
いや、俺の筋肉が悲鳴をあげるんだけど?
「1日中は無理だけどな」
「筋トレ頑張ってくださいね、絶対に10年後私は1日中蒼君の腕の中で蒼君の匂いをかぎながらぐーたら生活をおくります!」
澪は俺の腕の中でガッツポーズをし、相当な思いを示していた。
階段をお姫様抱っこしながら登るのは一種の筋トレで重りを持った状態で何往復をした上腕二頭筋、三頭筋の追い込みを終え教室に入った。
すると、澪は少ししょんぼりしてしまった。
どうしたんだろうと思いとりあえず聞いてみた。
「急に落ち込んでどうした?」
「お姫様抱っこが終わってしまいちょっとだけさみしいなと……」
この女可愛すぎんか?
澪は上目遣いの形という高火力技を繰り出してきた。
もちろん俺の心は澪に鷲掴みされた。
「ごめんな、家に帰ったら甘えさせてやるからさもう少しで来そうだし我慢な」
澪は少しだけ納得言っていない雰囲気を醸し出しながら『はぁーい』と言い、スマホで咲茉と陶さんのグループチャットを開いた。
てかさ、よく人見知りの権化である澪が陶さんと仲良くなれたな。
俺としては澪が楽しい学校生活を送れるのは嬉しい限りではあるのだが、やっぱりあの澪が気安く会話ができる人が新しく出来たのは驚きだよな。
「陶さんとは仲良くなったんだな」
「はい、私の大切な友達です」
少しずつ下から何人かの話し声が聞こえてきた頃。
澪はほほ笑みを浮かべながらただスマホで文字を打っている、ただそんだけの、澪からしたら日常的な行動。
だけど俺からは輝いて見えた。
「そろそろ来そうですね…お互いに頑張りましょうね」
絶対に体育祭での攻撃権は俺が牛耳ってやる。
あっという間に人が集まり、教室にはいつもどおりの雑談の嵐で埋まり体育祭が始まるのを告げているように感じた。




