第148話 体育祭2
「半分で交代しようぜ」
「わかりました、では前半は私からしますね」
「お願い」
朝日がやっと東の方角から見え始め、桜島高校の校内を昼時の明るさほどではないが少しだけ明るくなるように優しい光が窓から入り始めていた。
俺と澪の2人は校庭の隅にある用具倉庫の中から石灰が入っているなんて言う名前か知らないが線を引く機械を手に取った。
桜島高校の売りポイントの一つである校庭の広さのせいで流石に全て俺がすると言ったほうが澪からしたらカッコよく映るのかもしれないがいかんせん広すぎるせいでやる気がわかなかった。
「この広さ……これを他の人にやらせる訳にも行きませんね、私達2人で頑張りましょう!」
「そうだな、じゃあとりあえず満杯まで石灰ぶち込むか」
石灰が切れてここに戻って来る回数はできる限り減らしたい。
多分満杯に入れたところで1回は絶対に帰って来ることになるんだろうけどそれはもうしゃーないという事にして心を切り替えよう。
「そういえば、石灰ってこの線引き以外に使われる用途とかあるんですか?」
「そうだなぁ……農業の肥料になったり、セメントの劣化版を作れたりするよ、だけど俺等が普段から着く用途はこの線引きしかないと思う。
あと、石灰……炭酸カルシウムは貝殻を粉々に粉砕すれば誰でも手に入れれるよ」
「そうなんですか…じゃあこの石灰さん達も貝殻を粉々にして出来たんですかね」
多分なと返して満タンに入れ終えたのを確認して用具倉庫を後にして一応先生の少しばかりの優しさである目印があるので400メートルトラックを作るのは簡単であった。
「このトラックを作り終えたら駐車場づくりもでしたよね」
「ああ、駐車場は俺が作るからトラック分は頑張ってくれよ?」
「流石にそこまで体力低くありません!」
澪は頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。
やっぱりさ、可愛い女の子をいじめたいと思う急に来る衝動って男子共通だと思うんだよね。
何ていうかさいじめられた顔?っていうのかわからないけど、頬を膨らませた顔って可愛いと思う。
澪だからっていうのもあるのかもしれないけどな。
頬を膨らませつつもしっかりと仕事をこなしている澪の隣を歩きながらキモいことを考えていると。
「ぐぅ~~」
お腹の音が聞こえた瞬間、澪は手を口に当てくすくすと笑った。
「コンビニで買ったパンを食べたほうがいいのでは?」
「そうだな」
お腹が鳴ることは一応想定していたので片腕にはコンビニで買ったパン類が入ったレジ袋をかけて歩いていたのだ。
中からピザパンを手に取り早速口に運んだ。
「お味はどうですか?」
「うん、可もなく不可もない妥当な味だよ」
「私の手料理とどっちが美味しいですか?」
澪は隣から顔を少し出して聞いてきた。
この女勝確だからって……
絶対に自分の名前を読んでほしいからだろ
「もちろん澪だよ」
「ふふっそうですか」
とりあえず最小限のダメージに納めたけど……澪って微笑んだだけで絵になるよな。
黒の女神と言われるのがこの瞬間を見ただけで誰でもが理解できると思う。
「よし、これで終了です!」
澪はふぅっと息を吐いて俺の腕にかかってあるレジ袋からおにぎりを手にとってもぐもぐ食べ始めた。
澪のことを考えてるとまじで時間が溶けるよな……まぁいいんだけどさ。
「交代ね、レジ袋の中には俺の分のご飯もあるから全部食べるなよー」
すると、澪は口をもぐもぐと動かしながら首を何回も縦に振った。
えっと……後は100メートルのレーンと重りだな。
普通に考えてたったの2人でテントを支える重りまで運ばせるのは頭おかしいと思うけどな。
「よし、再開するか」
早く終わらせないといけないし、怒られるのは避けたいからな。
澪にレジ袋を預け、走りながら線を引いたお陰で6つの100メートル走のレーンを7分程度で作り終え、すぐさま澪のもとに戻った。
「速っかたですね、流石バスケ部」
「まぁな、それより早くおもり運ぶぞ」
「私は休んでてもいいですか?」
すかさず俺は澪の頭にチョップを下し、相当痛いのか頭を抑えてうずくまってしまった。
「ひ、ひどいですぅ……」
「協力だ」
「でも、私力全然ないですよ?」
うん、それは俺も重々に理解してる。
家で起きた出来事から澪の非力さも知ってるし、そんあ華奢な体格でめっちゃ力持ちだったらそれはそれで怖いしな。
……とりあえずラブコメの強キャラが言いそうなセリフでも言っとくか。
「俺は澪が隣で一緒にしてくれるだけで嬉しいよ」
耳元での澪が読んでいた少女漫画のキャラクターが言っていたフレーズをオマージュして言ってみた。
結果、澪にクリーンヒットして
一人で悶絶してしまい、その流れを引きつったせいで結局折れ一人で重りをほとんど運んでしまった。
それのせいで俺の上腕二頭筋と三頭筋が悲鳴を上げたのは後日の話




