第143話 二郎は最高
「毎回二郎系の話になったらここになっちゃうよな、俺等って」
久則が笑いながら店の名前である狼と赤黒い色で書かれている看板を指さした。
「まぁまぁ、美味いんだしいんじゃね?」
「それもそうだけどさ」
中央駅周辺にある二郎系ラーメンがここしかないから集まっちゃうのは仕方ないよな。
5人で店に入り俺は券売機で二郎のラーメンと米大盛り、チャーシュ追加を頼んだ。
狼は二郎を頼むと近くにある鉛筆で背脂の量や野菜の量、ニンニク味の薄さが書かれた所に好きな項目に丸をして、食券を渡す。
俺がここに来て頼むのは味濃いめ野菜多めニンニクマシマシ背脂少なめ。
油っぽいのは単純に嫌いだし、やっぱり二郎系って言ったら味濃いめ野菜多めニンニクマシマシが代表例なのでとりあえずって感じで毎回変わらずその項目に丸をつけてる。
「次の方ー」
女性店員が来たので5人は食券を渡すと、女性定員は厨房の中で俺等が頼んだのを大声で復唱するのと同時に厨房の中で男の人達と女の人達の混ざった大声が聞こえてきた。
女性定員に座敷の方に誘導され靴を脱いで座った。
「そういえば、肝付さんとはどんな感じなんだよ、義隆」
「まぁまぁって感じかな」
「冗談が上手いですねぇ」
「2人きりで遊びに行ったりはしたかなー
後はキスもしたなー」
うわ、こいつ顔きも
義隆はゲスの顔つきで3人に堂々と話し始めた。
その結果、非リアで女に飢えている志歩、久則、康太郎は鬼の形相で話を聞いた。
これは話が終わったら殺されるだろうなーっと感じた俺はトイレに逃げた。
義隆には申し訳ないけどこれドンマイとしか言いようがないかな。
どさくさに紛れて逃げることに成功したのでついでにようをたして数分待ってからトイレから出た。
でまぁ、トイレから出て4人の元に戻ると、義隆は反対側に座っている3人にグチグチと言われるのを正座しながら首を縦に振る事しかできなくなっていた。
かわいそうだなーと思いながら遠くで見ていると、ちょうど店員がラーメンを運んできていた。
そろそろ戻ったほうが良さそうな雰囲気を感じた。
「こちらが味濃いめ野菜多めニンニクマシマシ背脂少なめです
伝票はこちらになります」
店員はお辞儀をして厨房に戻っていった。
厨房から座敷まで少しだけ距離があるので、完璧に視界から消えるまで少しだけ時間がかかった。
ラーメンはいつも通り味が濃ゆくて体に染み渡る味。
俺の棒となった足を完全復活させるには十分すぎる魔剤だった。
なんかいかラーメンを啜って米をかきこむと久則は急に店員がいないからこそできる会話をしてきた。
「あの店員さん可愛くね」
「わかる」
「それな」
澪のほうが可愛い。
義隆も咲茉のほうが可愛いとか思ってるんだろうな。
ショートカットで茶髪。
めもくっきりしていて体全体が細いが全国の女子が出ないでほしいところは出ていなく、出てほしいと思っているところが出ていて漫画でしか見たことがない女性だったからだ。
性格も知らないやつを好きになるはずないだろ。
澪のように慈悲深く微笑むだけで場が和むような人が澪以外に居るわけないんだよな。
「お前らはどうよ」
「ありえないかな」
「おなじく」
「えーマジー」
うんまじだよ。
その後も雑談に花を咲かせても3人はあの女性定員をチラチラと見ていた。
◆◆◆
「いつか行ってみたいですね」
「いや、澪は絶対に食べきれないし残ったラーメンを食べるのは誰だと思ってるんだ」
「あれ?
食べてくれるんじゃないんですか」
「なわけあるか」
俺が家に帰ってくると、澪はソファーでクッションを握りながらバラエティー番組を見てくすくすと笑っていた。
そんな中ドアが開いた音を聞いた澪は俺を見るやいなや隣のあいたスペースを叩いてこっちに来いと誘ってきた。
一緒に見て二人で笑いながら見てCMに入った時に澪が話しかけてきた。
俺は澪の頭に優しくチョップした。
「私も胃袋は一般人レベルです!」
「牛丼並盛の半分で死にかけていたやつがほざいてるぜ」
「う……あれは事前に蒼君の捕食を食べてましたし」
練習試合から帰ってきて俺のわがままで牛丼屋チェーン店に行った時。
確かに事前に俺が食べるようのパンを食べていたけど、それでも女子の胃袋には入るでしょ。
「それはそれとして」
っあ、話変えられた。
「明日がやっと体育祭実行委員の初仕事ですね」
「そんなに乗り気になってんのお前だけだよ」
澪は一人はしゃぎながらどんな仕事をするのか妄想して度々独り言として外に出てきていた




