表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/157

第141話 黒の女神は運動音痴すぎる

クラスマッチが終わり数週間が経ち殆どの人が憂鬱になるであろう6月の梅雨の時期も終盤に差し掛かってきた。


あの事件から特に情報が増えることもなく、向こうからも攻撃が無かった。

攻撃が無かったことは俺自身、澪が傷つかなくてすむので嬉しいことに変わらないが、進捗が何もないとなると復讐のロードマップが全然進んでいない。


攻撃の実行人であるあのゴミ女も学年が違うせいで極たまに遠くにいるのが視界に入るだけで殆ど会うことがなかった。

それは澪も同じだと思う。


「なぁ、もう少しで体育祭だけど実行委員になる?」


「んあぁ…今んとこなろうかなって感じかな」


部活終わりのコンビニにて、俺はグミを買って適当に食しながら夏の大三角形をボーッと眺めていると、後ろから急に義隆に質問されたので変な声を出してしまった。


「何でなるの?

めんどくさいじゃん」


「少しでも内申点を稼ぎたいから。

たくさんあって損はないだろうし、少しの問題行動を見逃してもらえそうだからするかな」


「そですか…柳田さんも誘えば?」


「どうだろうな、あいつは運動が大嫌いだから実行委員もしたくないんじゃないかな?」


「いやいや、彼氏と長時間隣同士で座れるかもしれないって考えるかもよ?」


確かにな


義隆の考えもあり得るなと思いながら視線を義隆から満天の星空に戻した。


「……お前、そんなに星が好きなの?」


「おもろいからな」


「もっと具体的に」


「パソコンがあれば誰しもがこの天文学の発展に関わることができるから」


「え、そうなん?」


「もっと言えば、パソコンじゃなくてもスマホで行けるんだよ。

それでどこかの望遠鏡にアクセスして後は根気強く眺めるだけ」


「いや、結局は気合ゲーかよ」


「後は運ゲー要素もめっちゃあるかな」


「それの何が面白いんだよ」


満天の星空を見ながら天文学について話していると、横から愚問が聞こえてきたので視線を義隆に向け、語った。


「もし、今死んだところで柊蒼って名前は多分桜島高校の何かの資料にしか記録されてないだろう。

そしたら俺の名前を覚えてくれる人はゼロに決まっている。

だけど、俺は限りなくゼロに近い確率でもワンチャンがあるんだったらそれに賭けて俺の名前を記憶させたい」


「流石黒の女神を落とした男だな。

かっこいいよ」


「それは人の基準次第だろ」


「ははっ、そうだな」


それから俺は義隆に今見える星空の星座や恒星の名前を教えながら、残り3人の買い物が終わるまで時間を潰した。


◆◆◆


「蒼君は体育祭実行委員に入るんですか?」


「うん、なろうかなって思ってるよ。

澪もするの?」


「迷ってましたけど、蒼君がするなら私もしたいと思います」


澪は隣で俺を見ながら微笑みを浮かべて言った。


もしこれが義隆の言った通り、俺とずっといれるからって理由で体育祭実行委員に立候補したのだろうか?



「そっか…去年の体育祭はどんな感じだったの?」


俺は隣でクッションを抱えながら体育座りで座っていたが、俺の質問を聞いた瞬間顔が赤くなりクッションに顔を埋めてしまった。


「聞かないでください……」


あぁ、前聞いたときもこんな感じになったな。


よくよく考えてみれば運動音痴で体育が大嫌いな澪からしたら体育祭なんて学校生活で一番キライなイベントランキング堂々の1位確定だもんな。

多分やらかしたんだろうな。


「教えてよ」


「やです」


「前モンブラン買ってきたのは誰だったかなー」


「う……卑怯ですよ」


澪に隻影高校からの虐めがまだ続く話をした際に精神安定剤用で買ってきたクソデカモンブランを実はその時に2個買ってきた。

理由は単純。

このような交渉の時に無理矢理成立させれるからだ。


「じゃあ、俺が食っちゃおうかなー」


「だ、だめです!」


「じゃあ、教えて」


「うぅ…わかりました、教えます教えますよぉ」


澪はうつむきながらソファーを立ち上り、食台に座った。

俺はそんな澪を眺めながら冷蔵庫を開け、モンブランを手にして澪に出した。


一応、澪は今ダイエット中なので量4口ぐらいで食べれるぐらいに少なくしてあげた。

澪は渋々フォークでモンブランを一口サイズに切り、澪の小さな口に運ばれた。


澪は目をつむりモンブランの味を楽しんでいた。

何回かモンブランを噛み、嚥下してフォークをお皿に乗せ目線をモンブランから俺に向けた。


「桜島高校の体育祭は全員が選択種目を一つ参加しないといけないんです」


へぇーそうなんだ


「それで私は運動音痴でも足を引っ張ら無さそうな玉入れを選びました。

選択種目の玉入れでは特段と足を引っ張りませんでしたが、クラスリレーでちょっと……」


「やらかした感じ?」


「その…転けたとかバトンを落とした訳ではないんですが、1位で回ってきたのに私の番で6位まで落としてしまったんです」


「結果はどうなったの」


「3位です……」


追い上げてきてたんだな。

もし澪が越されてなかったらぶっちぎり説もあったのか。


「まぁ、どんまい」


「……でも今年は蒼君もいますし皆さん足が速いので1位狙えると思います」


これは期待されてますな。


俺は心の中で絶対に1位になると刻み込んだ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ