第135話 クラスマッチ4
「おい、黒の女神が出てきたぞ!」
その言葉が体育館内に響いたせいでスマホに視線を向けていた人はポッケにスマホを直し、全員が1階で繰り広げられている戦いに視線を向けた。
まぁ俺はお前らと違って最初から見てたんだけどな。
俺は最初から試合を見ていたと勝手に観客のゴミどもからマウントを取ってにやけてしまった。
「動画撮らなくていいのかよ」
「愚問だね義隆くんよ、俺はもちろん動画を取るためにこのゴール裏の2階席を陣取ったんだよ」
今回のクラスマッチに置いてコートチェンジの概念はない、だから澪達が攻めるリングは後半も同じ。
澪のシュートが決まった瞬間を取るためにはこのゴール裏が一番ベストポジションなのだ。
俺はスマホを2階席から身を乗り出すぐらいに前のめりになって動画撮影を開始した。
澪は俺と同じ57番のビブスを着てるんだな。
あいつ俺のこと大好きすぎるだろ……俺も言えることじゃないんだけど。
「出てきたぞ!!!」
「盛り上がってんねー」
「俺としては嫌なんだけど」
「まぁまぁ、キミはそんな優良物件の彼氏さんなんだからさ少しぐらいおこぼれをあげてもいいんじゃない」
「そうだな……澪は俺しか視界に入ってないだろうからな」
「素晴らしい自身のようで」
澪は準備体操を終えハイッタッチを交わしてコートに入った。
ディフェンス大丈夫かなと心配しながら見ていると、澪はしっかりとマンツーマンディフェンスが出来ており、義隆と二人で感嘆の声を漏らした。
澪はキョロキョロしていたが、マークマンとの体格差はさほどないのでフィジカル負けはないと信じたい。
「柳田さんって蒼と一緒に練習試合の動画とか見たりするの?」
俺は試合から視線を外して義隆に向けた。
「一緒に見ることが多いね。
なんか、一緒に見たがるんだよね」
澪とイチャイチャしながら見るんだけどさ。
「案外、初心者の客観的な視点からの情報も結構でかい――」
「蒼、下を見ろ」
急位言葉を遮られたのでどうしたんだろうと思い、義隆の言う通りに下を見て見た。
「っっっ……」
澪はこちらを見つめており、俺と目が合うと女神の微笑みを見せてくれた。
それと同時に、そんな秘宝級の微笑みを見たキモい視線で見ている男どもから歓声が上がった。
ホイッスルがなり試合が再開され澪も集中した顔つきに変わった。
「頑張れよ……」
サイドスローから始まった相手の攻撃。
澪のマークマンも初心者なのかあたふたしていて中々ボールが来ていない。
俺としては攻めてこない方が怪我のリスクが少ないので嬉しいのだが、澪がバチコリと神ディフェンスをかます瞬間も見てみたいと思う気持ちがある。
「柳田さんが活躍しないにジュース1本」
「っは?」
こいつ、俺の嫁で賭け事始めようとしてるのかよ。
きっしょいんだけど。
「お前、人の彼女で賭け事するなよ」
「まぁまぁ、で、キミはどっちだい?」
「俺はもちろん活躍するにラーメン奢りをかけるよ」
「まじかよ!」
まぁ、なんとなく直感だけど澪は神ディフェンスをすると思う。
そう思い下に視線を向けると、神様が俺の願いを受理してくれたのか澪のマークマンにボールが来た。
速攻で俺のラーメンがかかる瞬間が来てしまった。
ワンアームで予測しながらディフェンスしろよ……
澪は少しだけ膝を曲げてスタンスを取り相手の動きに全神経を注いでいた。
なんとなく俺の試合を見ていたからディフェンスの構えができている。
「今から駄菓子に変えていい?」
「だめに決まってるだろ」
結構見た目だけなら初審査なのか疑われそうだけど……いや、神すぎない?
試合であんな神ディフェンスされたら盛り上がること間違いなしなんだけど
澪は体でバチコリディフェンスをかまして、見事俺はラーメンを勝ち取った。
「ナイススティール!」
俺は自然と声が出た。
澪はバスケ部にパスをして走ったが……まぁ、回りとの身体能力の差は歴然だよね。
「なぁ、ラーメンの奢りはやめない?」
「無理だよん、俺は澪を信じただけでラーメンを食えるんだからラッキーだなー」
俺は嘲笑いながらその場で崩れ落ちている義隆を見下しながらどこのラーメンを奢ってもらおうか考え込んだ




