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第131話 部活動紹介の成功

「最後に期待の1年生である国木田志歩(くにきだしほ)柊蒼(ひいらぎあお)の2人によるアリウープダンクで締めたいと思います」


会場のボルテージは既にマックスになっている。

ここでミスったらせっかく高まった熱が冷え切って次の野球部の紹介まで盛り上がりに欠ける状況になっちゃうだろうな。


「まぁ、俺には澪だけいればいっか」


ポツリとそう言葉を吐き捨て、俺は少しだけ緊張している自分を落ち着かせるためにレッグスルーやバックチャンジ、クロスオーバーなどいつも部活が始まる前にしているアップをして志歩の走り出しを待った。


「じゃあ、2人ともお願い」


祐介さんの声を聞き、志歩は走り出し俺もドリブルを止め一昨日の自主練のように志歩の最高到達点よし少し低い所めがけてパスをした。

志歩は俺のパスをしっかりと空中でキャッチして一昨日の自主練のように轟音を響かせてリングにぶら下がった。


よくバンドマンの成功ドキュメンタリーでライブが成功した時に会場が歓声と声援で震えたとか言われてるけど、俺は何いってんだこいつとしか思ってなかった。

だけど、この時この瞬間バンドマンの感情が解ったような気がする。


体育館内は観客の歓声で埋められ全てが俺に向けられていると言う訳ではないだろうが、半分は俺に向けられている。


「ありがとうとございました!」


「「「「ございました!」」」」


あー、最高な気分だな。

こんなに気持が高揚するなんて俺自身思ってなかった。


「最高のパスだったな」


「お前のダンクのすごかったけどな」


「お互いよかったってことで」


志歩と俺はお互いに向き合い、歩み寄ってハイタッチをした。

軽快な音が響き二人で肩を組みながら武道館に戻り、ユニフォームとバッシュを脱ぎ、体育館で他の部活動紹介を見た。


◆◆◆


「蒼君蒼君」


「どーした?」


学校が終わり今日は部活がオフだったので久々に澪と一緒に帰っている電車の中。

俺はスマホで電子書籍で推理小説を読んでいると制服の裾を掴んで、俺の耳にだけ届くぐらい儚く小さな声量で俺を読んできた。


「何で蒼君のユニフォームの背番号は57なんですかー」


直ぐにスマホの電源を切り、俺は澪の方に素早く頭を向けた。


「変な理由だけど、聞く?」


俺は興奮気味に言ったせいで澪は少しだけ引いてしまったが、首を縦に振ってくれたのでお構いなく早口で語った。


「まず、澪って素数は知ってるよね」


澪は頬をぷくーと膨らませて抗議の色を示してくた。


「ごめんごめん……57はグロタンディーク素数って奴で、めっちゃ簡単に言ったらその分野をめっちゃ極めてるグロタンディークって人が素数についての講義をした時に何か素数をここの文字に入れようってなってそのときに具体例として入れた素数が57で、一時期はあの天才グロタンディークさんが言ったんだから57は素数なんだって広まっちゃったって話」


「……つまりどういうことですか?」


俺の話し方が下手なせいで澪は理解できず小首を傾げてしまった。

俺としてはそんなかわいくて破壊力のある行動をしないでほしいのだが、澪のこの行動は俺に対してだし、澪も俺しか視界に入ってないんだろう。


嬉しいことには変わらないのだが、ちょっとだけ場所を考えてほしいよね。


「俺もいい方が下手だからあれだけど、どんなに凄い選手でも見誤るよな選手になりたいって感じかな」


「へぇー、ちゃんと意味があるんですね」


「大体の選手の背番号は憧れのプロとかNBA選手と同じにしたりするのが殆どだけどね」


俺みたいに数学関連の背番号にはしないと思うけどな。


その後も澪と色々話しながら電車内での暇をつぶした。

たびたび澪は女神のような微笑みを見せるせいで他校の高校生とか知らないクソジジイがいやらしい視線を向けてきていて不愉快な気分になったのは事実だった。


最寄り駅まで澪を守りながら話し、家に帰り着くと澪は真っ先に風呂に向かった。


澪は風呂に入ったし、俺は自室で適当に作曲作業でもしときますか。

……サプライズ的な感じで澪に曲を作ってあげようかな?

あーでも、記念とかじゃない時に楽曲提供は変な噂が立ちそうでめんどくさそうだな。

でも作ってあげたいんだよなー。


俺はとりあえず柳レイとパソコンで調べ、配信の切り抜きを見てみた。

その切り抜きはホラーゲームの切り抜きで、澪がめっちゃビビって悲鳴を上げているものだった。


俺の心の中では悲鳴をあげている澪を見せ物のように切り取って許せないという気持ちと、絶対におもろいから早く左クリックしろという気持ちが戦っていた。

だが、結果は早く見せろという気持ちが一瞬で勝ってしまった。

理由は単純、カーソルを合わして少しだけ再生された部分だけで面白かったからから。


でまぁ、動画を視聴した結果俺は椅子から滑り落ち布団で腹を抱えて笑ってしまった。

プレイングの下手さと澪の悲鳴がおもろいんだから仕方ない。


一通りの切り抜きを見て何となくの曲のイメージが固まったので俺はパソコンで作曲ソフトを立ち上げた。



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