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第128話 黒の女神との一夜

「ただいま」


俺は走って最寄り駅から帰ってきたが、澪に心配をかけさせないために平然を装って玄関のドアを開けた。


『ただいま』の声が響くとリビングの方から駆け足で向かってくる音が聞こえ、玄関につながる廊下のドアが開かれると、そこにはピンクで肩の辺りにフリルが施されているエプロンで、お腹下のあたりに大きいリボンがある可愛らしいエプロンを着た澪が居た。


「おかえりなさい蒼君」


澪は女神のように慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら言ってきた。

それのお陰で部活の疲労は吹き飛び、先程までの心配も杞憂になった。


「蒼君…かばん持ちますよ」


「あぁありがと、思いから気をつけてね」


背中に背負ってあるかばんを下ろしながら澪に気をつけてと注意しながら澪に渡すと


「っと」


「澪!」


体が少し倒れそうになり俺は急いで澪の体を支えに向かった。


「そこまで運動音痴じゃありません」


「ごめんごめん」


心配が勝っちゃうんだから仕方無くない?

華奢な体つきで、倒れてコンクリとかにぶつかったりしたら容易に体中の骨が折れて悲鳴を上げる姿が想像できるんだけど。


澪の体について少し考えていると、澪は俺の腕の中から顔を出し、俺を見上げるような形で、破壊力満載の言葉を急に投げてきた。


「夫婦みたいですよね、帰ってきた旦那さんの…かばんを玄関で受け取るのって」


こいつの破壊力を底上げしている理由としてあげられるのは、つぶらな瞳からの上目遣いと泣いている赤子が一瞬で泣き止みそうな優しい声、それから恥ずかしそうに頬を赤らめながらの言葉だったからだろう。


そんなにバフ掛けた状態でのあのフレーズはチートだろ!


「あぁ……そうだな……」


俺はとりあえず言葉を返しては見たが、殆ど脳死な状態で出てきた言葉だったため、内申心臓の鼓動が聞こえてないかずっと心配していた。


だが、澪の攻撃のターンはまだ終了していないみたいだった。


「速くご飯食べましょう……あなた」


「っっ……!」


俺の心臓君がコンティニューした瞬間もう一回破壊力きもい言葉を言うなよ。


「ふふっ」


俺は動揺を隠せずにたのが澪にばれてしまい。


「あなた、靴を脱いで?」


「今日も頑張ったんですね」


「かばん置いてきますので、食台に座っててくださいな」


全自動のようにかばんを自室に運ばれ流れるようにリビングに入った。


やべぇ、これが赤ちゃんプレイを受けている気分なのか?

いや、赤ちゃんプレイは多分もっと澪が俺を甘やかしてくれる感じだろうからこれは違うのかもな。


赤ちゃんプレイに関して少しだけ考えていると、キッチンの方から焼き魚の香ばしい匂いが俺の鼻腔をくすぐってきた。


どの魚か考えながら食台の椅子に座りながら適当にテレビを付け、少し時間を潰していると2階から駆け足で降りてくる音が聞こえてきた。


「おまたせしました。

ご飯をお持ちします」


「あぁ、ありがと」


澪は慣れた手つきで炊飯ジャーから米を茶碗によそい食台に持ってきた。


「今日は、焼き魚ですよ」


「いいねぇ、因みにどの魚?」


「ししゃもです」


「小学校の給食以来だな」


魚自体、俺の好物なのでどの魚でも良かったがししゃもは小学校の給食以来だから速くご飯が食べたくなった。


澪はそんな子どものような俺の顔を見ると微笑みを浮かべて、ししゃもの焼き魚を大きいお皿に幾つも入れて持ってきてくれた。


「蒼君、今日は沢山私に甘えてくださいね」


「ん…あぁ」


よくよく考えてみると、俺が澪を甘やかすことはたくさんあるが、俺が澪に甘やかされる事はあまりなかったかもな。

て言っても甘える方法なんてわかんないんだけどさ。


澪は俺の曖昧な返答に小首をかしげながら、ぶつぶつと何か独り言を言い俺の

小皿にししゃもをよそってくれた。


小皿にあるししゃもに箸を伸ばし口に運んだ。

俺が歯でししゃもをすり潰した瞬間、絶妙な塩加減のお陰で焼き魚の味を更に引き立てられ、久々に焼き魚を食べたというのもあるのかもしれないが、俺は箸が止まらなくなってしまった。


「そんなに急がなくても、ししゃもさんは逃げませんよ」


「解ってるけど、澪が作ってくれた焼き魚がうますぎて箸が止まらないんだよ」


俺は自然な感じでちゃっかりと澪に攻撃してみた。


「っ……あ、ありがとうございます」


澪のヒットポイントは1000ぐらい減ったかもしれない。

……俺のライフは既に0になったんだけどさ。


澪に攻撃をした後は、お互い他愛もない話をしながらたまにテレビに視線を向け、テレビで取り上げられている話題について話したりを繰り返し、それ以降何事もなく晩御飯は終わった。


だが、澪はさらなる俺の心臓に傷痕を残したいらしい。


「蒼君、今日、安全日…だからさ……」


澪は俺が食器を洗っていると、わざとらしくたいしてないお胸を俺の腕にぶつけながら頬を赤色に染め、上目遣いで俺の心臓をえぐった。

だが、俺は一つの怪しいポイントを見逃さなかった。


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