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第121話 作業配信

「市電とか初めてなんだけど」


「めったに使う機会無いからな」


野球を終え、俺らはその後の予定を話し合って決めようとしたが、案がなかなか出てこなかったので義隆が『解散でよくね?』と案をだした。

いや、それはあんまり支持されなさそうと思ったが実際は殆どの人が帰ることに納得し、俺は義隆と二人で市電を使い中央駅まで向かおうとした。


市電のメリットと言ったらどこまで行っても一律で170円しかかからないって所かな、歩きより格段に速いスピードの乗り物を170円で乗れるのはでかいよな。


だが、ほとんどの鹿児島県民は市電を使ったことがないと思う。

俺も人生で2回程度しか乗ったことがないし、鹿児島市に住んでいる人でも使ったことが無い人はいると思う。


「170円ぴったりじゃないとだめだからな」


「そうなんだ……10円かして」


義隆は座席に座りながら財布の中を探っていたが、後10円足りなかったらしい。


「両替機が前後ろにあるから両替してこい」


「へーそんなのあるんだ」


170ぴったしの小銭なんて持ってる人そうそういないだろうからな。

自販機でも170のジュース売ってないし、両替機が無いと色んな人が詰んでそう。


俺は左から右に流れる街路樹と飲食店の看板をぼーっと眺め、鹿児島中央駅前まで何事も考えずに時間が経つのを待っていた。


「あ、義隆後ろにあるボタン押して」


「ん?これ?」


俺は力強く頷き義隆は降車ボタンを押した。


路面電車は全国で走っているバスのように電車から降りるには目的の駅に着く前に降車ボタンを押して駅に停まってもらう。


もし押さなかったら降りる予定だった駅を鮮やかにスルーされてしまう。

初めて乗った時にそれをかましてお父さんに怒られたのはいまだに覚えている。


料金の170円をはらい、俺と義隆は鹿児島中央駅についた。


「じゃあな」


「はいはーい」


俺は義隆に手を降って義隆が視界から消えると同時にスマホで電車の時刻表を調べた。


電車通のデメリットといえば駅で拘束される時間が発生するのが問題なんだよな、義隆は鹿児島中央駅周辺に家があるから多分この後は適当にゲームして筋トレからの風呂ダイブなんだろうなー


「まぁ、中央駅から4駅しか離れていないからまだマシなんだろうけど」


多分これから大人になって立派な社会人になったら、俺は澪の朝ご飯を食べて気分が最高潮になっても長時間の電車のせいで気分がマイナスになりそうだもんな。


呑気に将来のことを考えながら行き先をコンビニに変え、少し小腹がすいたのでおにぎりとグミを買って時間を潰した。


◆◆◆


「ただいまー」


時刻は午後6時。

澪に家を通りかかった時に2階から陶さんと咲茉の声がうるさいほど漏れていたのを横目に柊家に帰ってきた俺は、いつもなら返ってくるおかえりなさいの声がないことに少しさみしい思いをした。


「澪が楽しければいっか……とりあえず晩ごはんは適当に作って適当にゲームして寝よ」


……いや飯の後は作曲かな、それこそ初めてのライブ配信もありじゃね?

澪がいない今日は絶好のチャンスだろ、初めての配信が作業配信ってのがちょっとあれだけどまぁなんとかなるでしょ。


俺は予定を立て、とりあえずトゥイッターで配信の告知をした。


「よし、後は飯だけど、めんどくさいし適当でいっか」


俺は冷蔵庫から牛乳をとり、ダイエット開始前までは澪のお菓子専用棚になっていた棚からフルーツグラノーラをとり、食器棚からある程度大きいお皿を手に取り食台に持っていった。


「っあ、プロテイン忘れてた」


野球のせいで少し重くなった腰を『よっこいしょ』とおじさんと言ったらのような言葉を吐きながら椅子から立ち上がり、またもや元澪のお菓子専用棚からプロテインを取って食台に置いた。


「色んなビタミンも取れるし、牛乳で溶かしたプロテインをかければタンパク質も取れる……最強じゃね?」


俺が飲んでいるプロテインがチョコ味なせいで色合いが悪く、フルーツグラノーラを真っ白な牛乳でわ無く、チョコレート色の液体に浸かってあるせいで見た目がマイナスなのはしかたない。


今日の作業配信でどんな曲を作ろうか考えながら夜ご飯を食べ終え、食器を洗ってから自室に戻った。


「澪は今頃なにしてるんだろうなー、あの2人に変なことされてるのかな」


いや、澪のことを考えるのは後にしよう、今は配信について考えないとな。


初めてのライブ配信ということもあり、俺は少しだけ緊張していた。


ヨウチュウブで既に配信枠を作っていたが、コメント欄では


『あのawoさんが配信?』


『あした雪でも降るんじゃね』


『高校生でイケボなのかな』


殆どがなんで配信するんだろうかや俺に関する考察のコメントで埋め尽くされていた。


配信の準備をしていると時間は刻一刻と迫っていき、気づけば後3分後になっていた。

後3分になって準備したところで何の出来ないので深呼吸を繰り返して落ち着かせていた。


そして、配信が始まった。


「えー皆さんこんばんはawoです、今日は次投稿する予定の曲を作りながら適当に雑談をしたいと思います。


最初の挨拶は事故無く出来たことに安心し、予定通り作曲作業は雑談をまじりながら進めていった。


「なんで曲を作り始めましたか……これはねーちょっとね……単純だけど聞く?」


視聴者のコメントを見ながらなんとなく俺の技量でも話を展開しやすい質問を拾って会話をしていると、なぜ作曲wしはじめたかというコメントが流れたので浅はかな理由だけど聞くといい、俺は作曲を始めた理由を語った。


「作曲を始めた理由としては、俺の好きな人への誕プレの軍資金集めだったんだよね」


俺はトゥイッターで日常的なことやバスケに関してのことを呟いたが、あるツイートのリプライで彼女持ちなのか?とあったので炎上までは行かないと信じて言い放った。


恐る恐るコメント欄を眺めるとそこには嫌なコメントは無く。


『awoさんも青春してるなー』


『もしかして既にリア充なのか』


『いつか彼女さんと歌ってほしい』


勝手に彼女まで進められていて困惑したが、すんなりと受け入れられたことに感謝しか無かった。


澪のときとはちがってすんなりと行くもんなんだな…たまたまか


澪と俺の違いを考えているとスーパチャットで踏み込まれた質問が来た。


「ちなみに、その好きな人に告白しましたか?成功かどうかまで教えて下さい……結果から言うともう付き合てて、彼女も俺が作曲活動してるってことも知ってる」


「因みにどんな告白を!……」


実際まだラブコメのような告白はしてないんだけど……まぁ許嫁の関係だしお互いに愛し合ってるから彼女と言っても過言ではないしとりあえずしたってことにして、適当に濁らせとくか。


俺は適当に濁らせてこの話題を終わらせ少しだけ作曲に集中してまた別のコメントを読んで雑談に華を咲かせた。




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