第119話 野球
澪の家でお泊り会か……てことは今日は外食でも良いな、どのみちこのままだと夜まで何処かで遊びそうだしな。
2年1組の男子は90分の焼き肉食べ放題で全員がもう米一粒も胃に入らない状態まで食べ、腹パンでもくらったら全員吐き出しそうなぐらいにお腹も膨れ上がっていた。
「今100メートル走ったら40秒台出しそう」
「それは全員だ」
「食トレとか一生したくない」
「体作りは大事だぞ」
「わってるわ!」
「じゃあ、今からどこ行く?」
海斗が皆に問いかけた。
そうだな……この状態で運動してみるもの男同士だったら盛り上がりそうだけど……
「運動しに行かね?」
「この状態で?」
俺は首を縦に振った。
「……確かにこの状態で運動したらそれはそれで面白そうだしな。
それに明日は休みだし……反対の人いるかー?」
海斗が周りを見渡しながら聞いたが全員否定的な意見は出さなかった。
「ってことはどこかの公園で野球でもするか……宇宿まで行くかの2択だがみんなはどっちが良い?」
宇宿まで行くのはお金がかかるし、宇宿ってことは新しく出来た色んなスポーツができるテーマパークみたいなところに行くってことだろ?
入場料で更にかさむって事を考えると、俺としては野球のほうが良いかも。
「多数決を取ろう、宇宿まで行来たい人?」
あ、案外皆野球したいんだ。
周りを見渡したが手を上がる気配が一切感じれなかった。
「じゃあ、野球がしたい人?」
「「「「はい!」」」」
「おっけ、じゃあ、今からゴムボールとプラスチックバットを買ってくるから公園で待ってて」
海斗は近くの大型スーパーに向かって走り出した。
俺等は俺等で海斗の指示通りに近くにあるでかい公園に向かった。
偶然にも公園の中には人っ子一人いなかった。
邪魔が入らないに越したことはないからな。
「じゃあ、ぐっぱーで適当に分けるか」
「あぁちょっと待て、俺にいい考えがある」
義隆がスマホでブラウザを開き、『1,2,3――』人数を数えだし、18と数字をスマホの画面に打った。
「ここから1で蒼のところが16、俺が17で海斗が18、今から9人でチーム分けしてくれるから、呼ばれた数字は俺のところに来て」
画期的やなー、確かにぐっぱーで別れようとしても時間がかかるしな、それにチーム差が出来たら不正とか疑われそうでめんどくさいしな、平和的に解決もできるし時短にもなって一石二鳥か。
「じゃあ、今呼ばれた番号の人は俺とチームで、呼ばれていない方に海斗が入るってことで」
おー、チーム差はあまり無さそうだな……でもこっちに唯一の野球部が入るんだからこっちのほうが有利かな。
「おーい、買ってきたぞー」
早いな、距離的にももうちょいかかりそうだけど……ん?
海斗もやはり野球をしたくてウズウズしていたのだろう。
誰しも自分のしたいことに関しては浮足が立つからな、だけどさどう考えても。
「あれで野球するのかな?」
バットはまぁよくあ青色のプラスチックバットだったのだが、ボールは野球ボールの6倍ぐらいの大きさでトゲトゲしている赤色のゴムボールだった。
「よっしゃ!俺はどっちだ」
あ、すっげー熱入ってんな
「蒼チーム」
「おっけ、先行後攻は決めたか?」
「今からジャン勝ち先行で決めるところだよ」
「じゃあやろうか、最初はグーじゃんけん」
「「ぽん」」
「じゃあ、俺等が先行な海斗はピッチャー禁止でキャッチャー固定でお願いします」
「良いよそれで、じゃあ散らばろうか」
俺はどこ守ろっかな……左利きだしファーストを守ってもいいし我ながら肩は強いって自負してるから外野でも良さそうだな。
「守備位置は適当でいいよ、ピッチャーは順繰り順繰りで回していこう、最初は蒼で、ボールがこれだから多分変化球投げやすいと思う」
「わかった……てかさ、もうちょいまともなボールなかったの?」
「なかったんですよー」
「良いんだけどさ」
まぁ、野球の育成ゲームみたいな変化球投げれるんだったらいっか、フォークとかトップスピンかければ原理違うけどめっちゃ落ちそう。
カーブとかシンカーとか回転かければ握り方とか適当でも良いでしょ。
バッターボックスに人が入り海斗のプレイボールという声かけが公園に響き渡り、俺は渾身のストレートを投げた。
「っと…これ取るのも一苦労なんだけど」
「がんばれ」
じゃあ、次はトップスピンゴリ押しフォークにしよ
俺は打者に手の甲を見せるように投げリリースの時にトップスピンをかけた。
軌道は一度少し浮いてから急激に落ちた。
バットは本来通るはずの球筋上の空を切っていた。
「そのフォークキモいんだけど」
「そんな、褒めても何も出ないって」
「一旦乱闘タイム?」
「鈴木程度のスイングじゃ俺には当たらないって」
「んだと、早く投げろ」
「上等だよ」
俺は先程と同じようにトップスピンフォークを投げた。
結果はまたもや鈴木のスイングは空を切った。
「うざすぎるんだけどあのボール!」
結果として、俺は三者連続三振、トップスピンフォークを決め球としてフル活用した。
「じゃあ、蒼はライトに入って――」
俺は指示通り外野まで駆け足で向かった。
今頃澪は何をしてんだろうか
◆◆◆
「え、じゃあ、柳レイさんって澪ちゃんのことなの?!」
「はい……その証拠としてこの体がありますしパソコンも証拠になりますでしょう?」
「……もしかして咲茉ちゃんも配信者だったりする?」
「うん、大正解!」
「……一旦落ち着かせて」
私が配信者であることを皐月ちゃんに教えてみたら、なんと目の前にファンが居るという状況になってしまいました。




