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第115話 水族館デート3

「私……食べれません!」


澪は箸を置いて一人うなだれてしまった。


まぁ、良く手術の実習後に焼き肉は食えないとか聞いたことあるけどさ、イルカショーの後とか、水族館を回った後の刺し身でも同じ現象が起こるなんて……。


予想外だった。


「いや、メインディッシュは天丼なんだし刺し身は俺が貰うよ」


「……天丼もあげます、もう食欲がなくなりました」


今日の昼ご飯は冷たい肉うどんと色んな魚の刺し身がセットになった物と澪は有名どころの魚介天ぷら丼と刺し身セットを頼んだが、澪は本当に食欲がなくなったようで、一人水を思い出したように飲みながら桜島をぼーっと眺めていた。


これらを提供する水族館側も悪いと思うけどな。


「じゃあ、食べるけど良いんだね?」


俺はそう聞くと、澪は小さく頷いた。


って言って実はダイエットのための食事制限説もあるのか。


俺は澪にバレないように小さく笑って箸をつついた。


俺が箸を進めて数分が経った頃。


ぐぅ~


「っあ……これはっ」


「ははっ」


澪はお腹の音を鳴らしてしまい恥ずかしくなったのか急に視線を桜島からこちらに向き直し俯いてしまった。


「わ、笑わないでくだしゃい!」


噛んでるし。


相当焦っているのか澪は噛みながら俺に言ってきた。


「ごめんごめん」


「むぅ……」


不貞腐れている澪も可愛いな。


俺はそのままゆっくり食べて澪の我慢が限界になってお腹の音が鳴るのを待ってもいいと思ったが流石に音が大きくて周りの人に聞こえたら可哀想なので早く食べてあげた。


「じゃあ、お土産屋に行って帰ろっか」


「そうですね、もし高校生の下校時間に被ったらめんどくさいですものね」


俺は頷き、澪の手を取って早速お土産屋に向かった。


俺はまぁ10分程度で終わるっしょ、そう考えていたのだが自分の考えがいかに疎かなのか身を持って感じてしまった。


「蒼君、どっちが良いと思いますか?」


澪は2つのぬいぐるみを指さして、目を煌めかせて俺に聞いてきた。


片方は手のひらサイズのクラゲぬいぐるみ、もう片方は以前にUFOキャッチャーで取ったクソデカジンベエザメぬいぐるみと同じぐらいの、澪とサイズがほとんど同じのイルカぬいぐるみ。


ここは真面目に考えろ。

俺的にはクソデカイルカぬいぐるみの方が良いと思う。

だって小さい澪が同じサイズ感のぬいぐるみを抱きながら寝ている姿を想像するとかわいいの一言しか出てこないじゃん!

俺としてはそれを見たいんだ!


嫌でもなぁ……

澪の小さな手でクラゲを持っている姿も捨て難い。


俺は澪とぬいぐるみを何回も視線が行ったり来たりを繰り返して悩み、俺は苦渋の決断のすえ。


「俺はイルカのぬいぐるみが良いと思う」


「なるほど、じゃあこれにします、蒼君は待っててください……っあ、そうそう」


俺は澪が会計に向かう際にそうそうと言い俺の方に体を向け。


「他の女の子と喋らないで……ね」


とだけ言い体を会計の方に向き直し歩き出した。


◆◆◆


「ただいまぁ~」


「おかえり」


澪は俺の家に変えるなり力が抜けたのか俺に寄りかかってきた。


午後3時過ぎ。


桜島高校の生徒とも会うことがなく水族館から何事もなく無事に帰る事が――なんてことはならず。

確かに桜島高校の生徒とは合わなかったが電車の中でもクソデカイルカぬいぐるみを持った澪は美貌プラス目立つものを持っているせいで電車の中では同じ車両に居た人たちはスマホから視線を澪に向けていたと思う。


澪はそんな視線が飛び交う中、俺の後ろにべったり張り付き顔はぬいぐるみに埋めていた。

疲労が溜まっても仕方ないだろう。


「どうする?お昼寝でもする?」


「うん……」


俺は澪の膝裏と背中に腕を回し所謂お姫様抱っこで俺の自室に運んだ。


「制服は着替えなくていいの?」


「……ぅん」


良いんだ。


俺は澪を自分の布団に寝かせイルカのぬいぐるみを隣にそえて毛布をゆっくりと掛けた。


「ゆっくり寝るんだよ」


俺は澪を寝かせ1階のリビングに降りた。


「明日はしっかり学校にいかないとな……もう少しで体力測定もあるし、クラスマッチもあるのか……まぁどうせサッカーなんだろうけど」


俺はテレビをつけて適当にニュース番組を見ていた。


澪は多分疲れてるからたくさん寝るだろうな、流石に寝起きの状態で料理をされたら困るし一人でスーパーに行って一人で澪の分まで作るか。


……ワンチャン知人と会うかもしれないし直ぐに帰るか、スーパーで変装は流石にきついからな。


俺は行ってきますと言い家から出た。


俺の手料理に澪がめっちゃ嬉しくなってコバエのように粘着してきたのは別の話。



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