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第112話 偶然の重なり

「あの二人、カップルなんですね……」


澪は俺の手に指を絡めて上目遣いで言ってきた。


澪の甘い匂いが俺の鼻腔を擽る。


「澪さん、一応ここ電車内」


「っあ、すいません……!」


澪は俺の言葉のせいで電車内というのを深く理解したせいか、顔が徐々に赤く染まっていき、俺の胸に顔を隠しポンポンを叩いてきた。


……視線が痛い。


電車内って注意してこれなんだから、注意しなかったらもっと暴れてたのか。


揺れる電車内は4月の暖かさが広がっていたが、俺等に向ける視線は熱いものもあれば冷たいものも含まれていた。

綺麗な黒髪と氷のように透き通った色の瞳を持つ少女は嫌でも人の視線を集めやすい、いやらしい視線もあれば妬みの視線もある。

特に男からの視線は痛い。


今、澪は恥ずかしさの極み状態だから周りの視線を気にする余裕がないんだろうけど、もし周りの視線に気づいてしまったら多分相当怖いんだろうな。


俺は自然と澪の後ろに回していた腕に力が入ってしまう。


絶対に俺が澪を守らないとな。


◆◆◆


「あおぎゅん」


「いや、これは自業自得なんじゃない」


「だじゅげてぇ……」


澪と歩いて駅から家についたが、4月の絶妙な暑さのせいで澪は汗をかいてしまったらしく、風呂に入りついでで脱衣所においてある体重計に乗ったら体重が増えていたらしい。


「いやでも、クラスマッチと体育祭があるから痩せれるって」


「違うのぉ」


何がだよ


「ウェディングドレスがぁ……」


「……ん?」


こいつ、とうとう頭終わったんか、なんで今ウェディングドレスが出てくるんだよ


「蒼君…の、好みのドレス着れなく…なっちゃう……」


ウェディングドレスって普通自分の着てみたいドレスを選ぶんじゃないの?

相手の好みに合わせるんじゃなくて自分に合わせたほうが良いと思うんだけどな


「……じゃあ、ダイエットする?」


俺がそう提案すると澪は首をコクっと縦に振った。


って言っても俺に特段ダイエットの知識があるわけじゃ無いしなー、俺は部活で動くから良いけどこいつは帰宅部で動かないもんな……


「今週末、土日両方朝ごはん食べていない状態で運動公園一周してみて、多分それを続けて食事制限を少しだけすれば変わると思うよ」


俺が知っている知識では朝ごはんを食べずに運動すれば脂肪をエネルギーに変換して体を動かすって聞いたことある、それだけで十分だと思う。


俺がダイエットの提案をすると、澪は『蒼君は?』と言いたげそうな視線を向けてきた。


「俺は貴重なオフを満喫したいからな、澪一人で走れ」


「嫌です」


「じゃあ痩せれないな」


「わかりました」


どのみち俺は土日殆ど部活だし、ダイエットなんて1週間じゃ効果ないでしょ。

これは澪のために仕方ない事だな。


「今日から食事制限開始だな」


「あぁ、私のモンブランがー」


「君は甘いものに対して我慢ができなさすぎだ」


少々我ながらにきつい言葉を言ったと思う。

だけど、痩せる覚悟があるんだったらこの程度の言葉で泣き出さないはず。


ついでにこれで燃えてくれたら嬉しいという気持ちで澪に言ってみた。


「……絶対に痩せて最高のモンブランを食べます」


うん、これはプラスに働いたな。


「じゃあ、もう寝ようか」


「早くないですか?」


まぁ、確かに10時だからいつも寝ている11時半よりかは確かに早い。

だけど。


俺は確実に澪が早く寝る合言葉を言い放った。


「早寝早起きもダイエットに効果的だってさ」


「さぁ、早く寝ましょう」


澪は先ほどまでソファーで横になっていたのに、勢いよく立ち上がりスピードを維持しながら2階に駆け上った。


まぁ実際本当か知らんけど、効果ありそうって思える嘘じゃないかな……早寝早起きしてデメリットは無いだろうし


俺は澪の後ろについていく形で部屋に入ると、澪は既に布団の中に入っていた。


「おやすみ、澪」


「おやすみなさい、蒼君」


俺は澪の頭を撫でて布団の中に入った。


くすぐったそうに目を瞑った姿は小動物に見えて可愛くて仕方なかった。


布団に入って数分が経った頃。


隣からは規則正しく聴いていて飽きることのない綺麗で可愛らしい寝息が聞こえてくる。


にしても、初日から色々あったなー。


愛内と陶さんカップル、咲茉の見せつけるような悪魔的な笑み、澪の後先考えない行動。

こんな奴らと1年間過ごすのか……まぁ楽しいから良いんだけどさ。


俺は隣で気持ちよさそうに寝ている澪の方を見た。


お嬢様の様な水色のネグリジェから純白の汚れを知らなそうな腕や脚が伸びている。

その姿はどこかファンタジー小説に出てくる王国の姫と言われても疑われないような、美しい姿だった。


俺はそんな澪の頭を撫で深い眠りに付いた。


◆◆◆


……これは夢か。

自分が夢を見ていると解っているので所謂これは明晰夢(めいせきむ)というやつなのだろう。


眼の前には絹のように真っ白なウェディングドレスを身にまとっている澪がいた。


美しい。

それ以外の感情がわかなかった。


……てか夢ってことは。


俺は自分の意思でこんな姿の澪を見たいと妄想したのか、まぁ俺等許嫁の関係だし、妄想してもきもがられることはないんじゃないだろうか。

それに、付き合っている彼女のウェディングドレス姿を妄想するのは全国のカップルはしているんじゃないだろうか。


俺が一人考えているとウェディングドレス姿の澪は遠くに行ってしまった。

それと同時に俺は目を覚ました。


「やっと起きましたね……」


「……ん、あぁおはよう」


眼の前には既に制服に着替えていた澪が居た


……ん、制服?


澪は学校に行く直前まではネグリジェを着ているから……


「今何時!」


「8時です」


1限目の授業にギリ間に合う電車は後10分で出る。

家から駅まで身軽の状態で走ればギリ間に合う時間だが、バックがあるうえに澪もいる。


……詰んだな


俺はとりあえず義隆に学校遅れるとだけ伝え澪の朝ごはんを食べるために一階に降りた。






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