第110話 黒の女神は開始早々おかしい
「じゃあ、君らは今日から2年生になるんだけど――」
久々に制服姿の澪見たけど、やっぱり可愛いな。
後ろからしか見えないが、手入れを怠った事が無さそうな綺麗な黒髪はこのクラス中の女子の中でも1番艶がかかっていて可憐さが滲み出ていた。
流石黒の女神だよなー、クラスの男子が殆どの澪を見てるもんな。
俺としては嫌なんだけどさ。
自分の彼女が名前も知らない男どもの見せ物と化しているのは彼氏側としたら嫌でしかない。
澪も、このいやらしい視線に気づいているのだろうか解らないが、ずっと窓の外を眺めている。
「今日は午前中に終わるから有意義に使うように、そんじゃ休み時間が終わったらまた来るから」
先生がドアを開けて教室から出ていくのと同時にスピーカーから授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
殆どの生徒は友達の席に近づき談笑をしていたが、澪はずっとぼーっとしている。
咲茉は別の友だちと話しているが、チラチラと澪の方を見ている辺りやはり気になっているのだろう。
ここで俺が行ったら男子からのヘイト買いそうだしな。
「どうしたものか……」
「何が?」
「っお……なんだ義隆かよ」
「そこまで驚くかね……で、君はボッチなのかね」
「……1年の時に仲良かった奴らは全員違うクラスに行っちゃったし、唯一まともに喋れる奴がこれだからな」
「おいおい、酷いな……とりあえず男友達ここでも作ろうぜ」
「気分次第かな」
義隆との雑談に花を咲かせたので休み時間が一瞬で溶けてしまった。
キーンコーンカーンコーン
「あー、じゃ」
「はいはい」
チャイムが鳴って数秒。
「あいー、じゃあ今から色々プリント配るからなー」
ドアを勢いよく開いき肩がビクッとなった澪を眺めて微笑みながら先生が手に持っているプリントの山に少し引いてしまった。
え、多くね?
そんなに配る必要があるプリントあるのかね。
……どうせ一番うしろだしゲームでもしとくか
俺が後ろでゲームにて素材集めをしていると。
「柊さん、ゲームはだめですよ」
「……バレなきゃセーフ」
誰だよこの女子、なにか接点あったっけ?
俺の前に座っていた、茶髪のロングヘアーで上品な女性が俺のゲームを注意してきた。
いやまぁ、俺が悪いんだけどさ。
「こちらが、プリントです」
「ありがと」
俺はスマホの電源を切り、プリントを受け取った。
俺がプリントを受け取った時、視界の隅ではこっちにプリントを配る際についでに見たら女子と楽しく話している俺がいたので手渡しした後にプイッと外を見た澪が居た。
しかし、今回は澪以外にももう一人こちらをじーっと見ている人が居た。
えー、絶対にあの人この人のこと好きな人でしょ。
最前列の右端に一人、俺に対して敵視?はしていないと思うがあからさまに眺めている奴が居た。
後で話しかけてみるかな
一応ゲームを注意されたので真面目にプリントを見ながらプリントを受け取った。
年間行事なー……そう言えば靭帯やったから体育祭も出れなかったのか……とりあえず今年の目標は怪我なしで3年生になろうにしよう。
ていっても2週間後にクラスマッチがあるからもしかしたらそこで終わるかもしれないけど。
「はい」
「ありがと」
俺は何回かプリントを貰ったが全部年間行事の下において一通りの年間行事と時期を覚えた。
そして先生が最後のプリントを回した。
えっと……
「何これ……」
紙には自己紹介とでかでかと書かれていた。
「新しいクラスになって親しい友だちと離れたやつもここには多数いると思う」
まぁ、俺もそうだしな
「てことで、今から自己紹介をしてもらいます」
「……まぁ、適当になんとかなるっしょ」
クラスの中では『えー』といった、いかにもしたくない雰囲気が広がっていた。
誰でも自己紹介はあまりしたくないから仕方ないかもしれないが。
俺は澪の方に視線を移してみた。
絶対にあいつ緊張してるよな。
澪はさっきまでは窓の外を頬杖付きながら眺めていたのに先生の自己紹介をします宣言を聞いた瞬間おどおどして焦ってるのが丸見えだからだ。
あ、こっち見た。
澪は『どうしよぉ』とても言いたげな少し泣きそうな表情をしていたので俺は皆にバレない程度に親指を立てた。
澪はそれを見て安心したのか、頷いて先生を一心に見ていた。
「じゃあ、愛内から」
「はい」
あいつ愛内って名字なのね。
てか…
「ごついな」
野球部だろうか?圧倒的に周りの男子より一線を画す筋肉量だな。
「愛内吾郎です、野球部でセンターを守ってます、えーまぁ筋トレが趣味ですのでアドバイス歓迎です、最近はあった嬉しいことは練習試合でタッチアップを刺せたことが嬉しかったですよろしくお願いします」
「じゃあ、次は――」
筋トレが趣味か……愛内道場に入門でもしてみようかね、多分俺の評価は少しだけ低いかもだけど。
てか、愛内が作った流れは名前と部活、趣味と最近嬉しかった事で自己紹介を終えるってのだけど、これは澪でも原稿作りやすいんじゃないかな。
「次、柊」
「はい」
俺は椅子から立ち上がり教卓に胸を張って立った。
澪が少し心配そうな目で見ているが俺の自己紹介を聞いてその目が変わった。
「柊蒼です、バスケをしています、趣味はゲームやアニメ鑑賞です、最近あった嬉しかった事は靭帯断裂の怪我が案外早く治ったことです」
まぁ、完璧には直ってないんだけど。
俺は自己紹介を終えて拍手を浴びながら礼して席に帰った。
そして待ちに待った澪の番が来た。
「えと、柳田澪です、ふ部活には入ってません、趣味はりょ料理とカラオケです……最近嬉しかった事は……」
めっちゃ噛んでるやんけ、顔も真っ赤だしこれは面白いっていうより心配が勝っちゃうって。
俺は少し苦笑いをして澪の自己紹介を見守っていると、一つ大きく深呼吸して澪は自己紹介を再開した。
「最近嬉しかった事は、幼馴染の男子の怪我が治ってくれたことです、よろしくお願いします」
馬鹿すぎじゃね、前に怪我した宣言した奴がいるんだぞ
俺が一人焦っていると澪は俺に微笑んで綺麗に片目だけを閉じて見せた。
それのせいで男子だけは盛り上がったんだけどね




