第100話 クソでかぬいぐるみ
「暇だしゲーセン寄らね?」
中央駅に着き、電車までの時間をどうやって潰そうか案を出していると、康太郎が俺にとっての名案を出してきた。
他の案としてアミューで買い物が上がったが時間が経ったの30分しかないのでまともな買い物ができないとなり否決された。
「じゃあ、ゲーセンに行く?」
「時間的にもゲーセンが1番良い案だし、行くか」
6階まで俺らは小走りでエスカレーターを利用しながら向かった。
「蒼は音ゲーだろ?」
「試合後に運動をもう一回するのは無理」
俺が音ゲーは運動と言ったら、何故か4人ともナn言ってるんだこいつみたいな、俺を少し蔑む視線を向けてきた。
「考えてみろ、重さ150グラムぐらいの木の棒2本を1秒間に10回叩ける?叩けないよね?それに上手くなるには筋トレも必須だから音ゲーは運動というグループに入るのだよ」
「だから?」
「今日俺はクレンゲームをしたいのだよ」
俺の音ゲーは運動理論を軽くあしらわれ少し悲しいが、こいつらでも俺が今はしたくないんだなとわかってくれるはずだろう
俺らは適当に店内を回ってなんか欲しそうな物を探していた。
そんな中、俺は出会ってしまった。
青天の霹靂とはこの事を指すのだろう。
角を曲がってすぐの台、そこにはクソでかいジンベイザメのぬいぐるみがあった。
奇跡のような出会いだった。
「俺、こいつ取るわ」
「え、これ?」
久則は困惑しながら指をさしたので俺は大きく頷いた。
500円4プレイ……ゴミみたいな値段設定だな、そこは5プレイにしろよ……だけどそれが取らない理由にはならないな
俺は近くにあった両替機に1000円札を入れ500円玉2枚に両替した。
「にしても……でっけえな……」
目の前にあるのは、青と白の水玉模様がかわいい、ジンベイザメのぬいぐるみ。しかも、ただのぬいぐるみじゃない。1メートル越えの特大サイズ。
「何プレイで取れると思ってる?」
義隆が少し煽りを含んだ声色で聞いてきた
「まあ、ちょっと難しいかもな……」
視線の先には、ジンベイザメのぬいぐるみが絶妙な位置で寝そべっている。アームの力はわからないが、多分一発で取るのはまず無理だろう。だが、これを見た澪の顔を想像すると、根拠のない自信が湧いてきた
「まぁ、何とかなるさ」
何回かプレイしたが、アームの力が弱いことがわかった。
完全に持ち上がらなくても、少しずつ動かして落としやすい位置に持っていく作戦なら、可能性はある。
「ほら、ちょっとずつ動いてるだろ?」
「まあ……そうだけど、あと何回かかるかな」
「運がよければ、あと五回くらい」
「絶対もっとかかる」
「俺の直感がそう言っている」
しかし、神様は俺の味方をしてくれなかったようだ。結果は完敗した。
それでも俺は諦めなかった。
バカだなーなんて言われたが澪の驚いた顔を拝むには数千円は安い。
十回目でジンベイザメが大きく傾き、十五回目で半分が落ちかけた。そして――二十回目。
「きた……!」
アームが最後の一押しをして、ジンベイザメがダイブするように落下口へ転がり込んだ。
「よっしゃぁ!!」
俺は思わず拳を突き上げた。
「……いや、かかりすぎな」
4人とも苦笑を漏らしていたが、俺はお構いなしにジンベイザメのぬいぐるみを抱き上げる。
抱き心地は最高だった
◆◆◆
「ただいまー」
俺が玄関を開け、声高々に言うと、リビングからどたどたと音を立てながらドアを開けて、玄関めがけて小走りで澪が来た。
「おかえりな……なんですかそれ?」
澪は小首を傾げながら、聞いてきた。
「UFOキャッチャーで取ったんだよね」
「そうなんですか……ふふ」
澪は女神の様な優しい微笑みを浮かびながらジンベイザメを撫でた。
また今度、澪のためにも挑戦してみるのも悪くないかもしれない。
こんばんはアカシアです
とうとう明日の午前11時59にカクヨムコン10の読者選考が終わります。
それに伴い、この作品を休止し、新作を書きたいと思っています。
2月の23日日曜日午後7時31分に新作を公開するので気長に待ってくれると嬉しいです