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7話 修行③

霊術の修行を始めてから更に6か月ほど経過し、時空転身の霊術でこの山岳に来てからもう1年の月日が流れている。


エンチャントスキルの霊力制御についてはもう少しかかりそうだが、属性変化については完全にマスターし、エンチャントスキルも実践レベルで使えていると思う。


属性変化の会得だが、火属性ついては蝋燭に火が灯っているイメージを変えずに属性変化させている。春奈も秋斗のイメージを真似て蝋燭に火が灯るイメージを行うことで属性変化を成功している。夏美は秋斗や春奈と違って猛々しく燃える炎をイメージして属性変化をさせていたようだ。どうやら属性に合うイメージであれば問題無いらしい。


火属性以外の属性も同じようなイメージでいけた。水属性は津波をイメージし、雷属性はそのまま雷が落ちた時のイメージだ。風は召喚される前にテレビを見ていた時に天気のニュースでやっていたハリケーンの暴風をイメージした。一番難しかったのは土属性だった。岩とか砂場のイメージをしてみたのだが、上手く属性が変化できなかった。


春奈も秋斗と同じだったようで、最初に全ての属性変化をマスターしていた夏美に何をイメージしたのかを確認すると、土砂崩れをイメージしたよと言っていたので、秋斗と春奈はそれを聞いてイメージしてみると上手く属性変化ができたのだった。


その後、属性変化を会得した秋斗達はエンチャントスキルを発動していく。最初はイメージのしやすかった筋力強化のストレングスから始めたのだが、これはかなり簡単にできた。他の属性変化も同様に多少の時間はかかったりもしたが、問題がなくエンチャントスキルを発動させることに成功していく。


問題があったのはこの後だった。エンチャントスキルを2つ以上発動させることが難しかった。2つ以上の属性をイメージするのが難しかった。風と火の組み合わせや土と水の組み合わせは上手くできたりもあったが、水と火を同時にイメージし、発動させるのが難しかった。リオンから属性の変化は5つの丸を思い描いてそれぞれの丸の中にそれぞれ属性をイメージするのが良いのだそうだ。


中々最初はコツがつかめなかったが、次第に上手く属性変化を行うことができた。その後、霊力制御はまだまだではあるがパッシブオールを会得することができたのだった。

そんな感じで秋斗達はエンチャントスキルを会得することができた。パッシブオールを唱えるまだまだ拙いが、これから練度を上げていけばいい。


そういえば、制御はまだまだだが、エンチャントスキルが使えるようになってからリオンとの模擬戦を一度行ったことがある。いつもはリオンにエンチャントスキルを付与してもらっていたが、今回は自分でエンチャントスキルを使用して模擬戦を行った。


結果としては負けてしまったが、リオンの動きがいつもより良く見えていた。これはいつものようにリオンにスキルを付与してもらっていた時よりも自分でエンチャントスキルを使用しているからだと思う。他人から付与されるよりも自分で付与した方がスキルの効果があると言っていたしな。

今回は行けると思ってしまったのが油断に繋がってしまい、結果的に負けてしまったわけだがいつもよりも善戦できていたと言っていいだろうと思う。


霊力の制御もそこそこに、今日の秋斗達の修行は新しい修行をするらしい。午後となり、準備体操をしているとリオンがやってきた。


「準備万端だな。それじゃあ、今日はオブスタクルスマラソンをしてもらう。」

「オブスタクルスマラソン?」

「空間認識能力を研ぎ澄ませて危険を察知する訓練だよ。障害物は一つ一つに致命傷を与えるくらいの罠を設置しているからちゃんと避けてゴールまで目指すように。と言っても最初はカラーボールが飛んでくるからそれを避けてゴール目指す感じだ。どんな感じかを今日は試して徐々に難易度を上げていく。最終的に被弾無しでゴールを目指してもらおうと思っている。装備は勿論、エンチャントスキルも使って山にある剣を持ってきてくれ。」

「それならいつもより楽だよね!」

「そうね。エンチャントスキルを使っても問題無いなら何とかなりそうよね・・・・・・。」

「あぁ、、何とかなりそうだな。」

「それじゃ、あそこに見える山の頂上に剣が刺さっているからそれを持ってここまで戻ってきてくれ。それじゃ、開始だ。」


リオンの開始の合図を聞いて秋斗達はエンチャントスキルを発動させて、意気揚々と山に向かって走り出した。早速山の麓に10体の木人がこちらに弓を構えてこちらを狙っているのが見えた。鏃は丸い球のようなものが付いている。


リオンの言っていたカラーボールだろう。カラーボールを認識した瞬間に木人から次々と矢が発射されていく。ヒュンと風を切るような音が鳴り響き、秋斗達へと矢が飛んできた。


「楽勝!」


夏美は走る速度を上げると矢と矢の間を掻い潜って避けていく。秋斗と春奈も夏美と同じように矢を避けて前へと進んでいく。


「あまり最初から無理しないでよ!?」

「大丈夫だって!」


春奈は夏美のペース配分を無視している速さに徐々に差を付けられていく。夏美は小さくなり見えなくなった。あのペースだと、いつかは追い付けるだろうと俺は春奈と一緒に行くことにした。


1合目では数十体の木人が矢を放ってくるだけで特に問題無く矢を避けて進んでいけた。2合目に差し掛かったところで、秋斗達は進行方向とは別の方向から草木が揺れるような音を感じとった。音のする方を見てみると木人が矢を春奈に向かって放とうとしているのが見えた。俺は春奈の腕を掴んで引っ張った後、装備していた剣を抜いて矢を弾くことに成功した。剣に当たった矢はペチャという力の無い音を立てて消えた。


「兄さんありがとう。」

「あぁ気にするな。」


剣を見てみると、赤いペイントが剣についている。剣についたペイントを見て秋斗と春奈は気を引き締めた。


「ここからはもっと慎重に進んでいく必要がありそうだ。」

「そうね。正面だけ警戒してたけど、全方位気にしないといけないかも。」

「あぁ、夏美はまだ先の方か?大丈夫かな?」

「夏美はこういうのは得意だから大丈夫よ。」

「そういえば、そうだな。じゃあ遅れないように夏美に追いつこう。」

「はい。」


秋斗達は夏美に追いつくために周囲の警戒を強めながらペースを上げることにした。2合目から4合目辺りまでは正面だけでなく、左右からも矢が飛んでくるようになっており、秋斗達は木に隠れたり、時には武器を振るって矢を弾いて山を登っていく。


5合目からは木人の量が増えたり矢が放たれる速度が速くなったりと木人の攻撃が激しくなってきていた。速度は遅いものの秋斗と春奈はお互いをカバーしながら山を登って行った。8合目に差し掛かったところで夏美が木に隠れて行く先を伺っているのが見えた。


「夏美!」

「あ。兄ちゃんと春奈!やっときた!」

「ちょっとその腕、怪我したの?」

「怪我はしていないよ。ちょっとだけ油断しちゃってね体に当たる前に手甲で払ったんだけどペイントが付いちゃって。」


夏美は手首を振って怪我がないことをアピールした。手甲は赤色に染まっており、よくみると手に持っている短剣は赤く染まっているのが見えた。秋斗と春奈はホッとすると、夏美が見ていた先を覗いてみた。先を見てみると、4体の木人が矢を構えてこちらをじっと警戒しているように見えた。


「目の前だけじゃなくってその先にも何体か居るの。矢の速度がどんどん上がってるっぽいから一人じゃちょっときついと思ってどうしようかなってここで考えてたってわけ。」

「なるほどな。じゃあ、お互いにカバーしながら登っていくか」

「分かったわ。」

「おっけー。」

「よし、それじゃあ行くぞ。」


3人でお互いをカバーすることで春奈と2人で動いていた時よりも余裕があり、視野も広がったように感じられた。盾を持っている秋斗と春奈が先行して動き、夏美は秋斗と春奈に視野の範囲外から飛んでくる矢を短剣で弾いていた。


3人でお互いをカバーして山を登ることで2人の時よりも早いペースで山を登っていけている。

何とか頂上に辿り着き、3本の剣が頂上の岩を近くにあった。秋斗達は剣のあるところに集まり、それぞれ1本ずつ手に取ると、思わず秋斗と夏美はガッツポーズを決め、春奈は胸に手を当ててホッとしていた。


「よし!」

「これで合格ね!」

「よかった・・・・・・。」

「それじゃぁ戻ろう。」


秋斗達は少し休憩した後に剣をそれぞれ一つずつ腰にぶら下げると下山しようと来た道を戻っていった。しかし、下山の時は最初だけ厳しくなるだろうと思っていたのが、頂上から降りていく毎に木人の数が増え、攻撃が激化していた。


「ちょっとこれ!」

「やばいなっと!今のは危なかった!」

「霊術でやられる前にやらないと回避が間に合わないかも。」

「なら、僕が木人の攻撃を引き付ける!夏美と春奈で索敵と木人を破壊してくれ」

「分かったわ!」

「はい!」


秋斗が駆け出すと木人が顔を出して、秋斗に向かって矢が放とうとしていた。


「ホーリーランス!」

「シャドウクロウ!」


春奈と夏美は今まで学んできた霊術を披露した。

春奈は装備しているレイピアを天に掲げて光属性の霊術であるホーリーランスを使用した。春奈の放ったホーリーランスは秋斗の左側にいる木人に向けて霊術を放たれており、光輝く槍は木人に吸い込まれるようにして命中して粉砕する。


対して夏美は秋斗の右側の木人を担当していた。春奈とは別の方向に居る木人を見つけ、霊力を2対の短剣に込めて振り抜く。短剣から放たれたシャドウクロウは三日月の形をして木人の放った矢を全て弾き飛ばした。その後、次の矢を放つ前に接近して、木人を肉薄していく。


左右の脅威が無くなったことにより、秋斗は正面にいる木人を担当する。放たれた矢の合間を通り、避けられなさそうな矢は剣で弾いて前へと進んでいく。


「フレイムボール。」


射程圏内まで進んだ秋斗は自分の周囲に炎の球を木人の数だけ作ると、木人に向けて放った。まるで爆弾にでも当たったかのような爆発音を立てて、木人は弾け飛んでいった。


「ふぅ。やったな。」

「木人の数やばかったけどなんとかなったね。」

「うん。」


木人を壊滅したことによって春奈と夏美が集まってくる。秋斗達は手を上げてハイタッチをして笑い合った。


「ん?春奈どうした?」

「何かいるかも。」


安堵していたのも束の間、次の瞬間には周囲の木々の葉が次々と音を立てて、木人が秋斗達の周囲に姿を現していた。


「これ・・・・・・。」

「あはは・・・・・・。ちょっとやばいかも・・・・・・。」

「早く逃げよう!」


秋斗達は喜んでいた顔も冷めるように乾いた笑い声に代わり、目で合図して一斉に駆け出した。





「おや、もう帰ってきたか・・・・・・って、大丈夫か?」


リオンは秋斗達がペイントで赤く染まっている姿を見て、一瞬驚いた表情をした後、秋斗達を心配して声をかけていた。岩に置いた剣も3本ともペイントで赤く染まってしまっていた。


「まぁ、なんだ。とりあえず、風呂入ってきたらどうだ?」


秋斗達の赤く染まっている姿を見て、一先ず、お風呂を進めるリオンに秋斗達は無言の圧で頷き、お風呂へと向かって行ったのだった。


「少し難易度を上げすぎたか・・・・・・?」


リオンは秋斗達の霊力の感じ取っており、想定よりも簡単に剣を手に入れたことが知っていた。そのことからもう少し難易度を上げても問題無さそうと判断したのだが、思ったよりも難易度を上げていたようだった。リオンは少し後悔したような声で秋斗達に聞こえないようにポツリと呟いていた。

読んでいただきありがとうございました。

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