3話 歓迎の宴
リオンは秋斗達と別れた後、遠征の報告をしにカイルの元へと訪れていた。
「陛下、今回の遠征の報告をしに来ました。」
「うむ。どうだった?」
「大規模の魔獣の群れとの報告でしたが、伝書鳩にて報告した通り、敵は少数であり、各個撃破し無事討伐完了しています。その後、魔獣の群れを捜索しましたが確認できずでした。駐屯兵には引き続き捜索するようさせています。」
「そうか・・・・・・。」
魔獣とは理性を持たず、本能で生きているゴブリンやオークと言った獣のことを言う。魔獣はどこからともなく突然現れては人々が住む集落や村などを襲ってくるのだ。魔獣に襲われ壊滅した村は数知れずだった。カイルの元に大量の魔獣の群れを発見したとの伝令が届いたため、規模を考慮した結果、リオン総隊長自ら赴いたのであった。見つけた魔獣の規模は小さく、即座に殲滅することができたため、今回は村に被害は無かった。リオンは報告、カイルは心ここにあらずの返事をしていたのだった。
「どうかしましたか?」
「あぁ、英雄召喚の方で少しな・・・・・・。お主の方にも挨拶に行っていたと思うが。」
「えぇ、秋斗達は人当たりの良い印象でしたが何かありましたか?」
「うむ。我々に協力願いをしたが、返事は保留でな。やはり、断られた時のことを考えるとな。」
「そうですか・・・・・・。協力してもらえることを祈るしかないですね。」
「左様。まぁ考えても仕方ないな。協力を得ようが断られようが我らがやることは変わらん。」
「そうですね。」
「まずは歓迎の宴を成功させることに全力を尽くそう。」
「はい。」
リオンはカイルに返事をして秋斗達の歓迎の宴を成功させるために会場に赴き、会場のセッティングや催し等の状況を確認しに行くのだった。
▽▽▽
秋斗達はクレアに案内されて秋斗達の歓迎会の会場にきていた。
会場は高い天井から吊るされているシャンデリアがいくつもある。今は陽が落ちて外の様子は見れないが、大きな窓がいくつも並んでいる。大きな丸いテーブルを囲うようにして何人かのお金持ちそうな人々がいて、各々で挨拶をしているようだった。
壇上にもテーブルが二つあり、そこに秋斗達は案内された。隣のテーブルには王様であるカイルや王妃が座っていた。リオンとクレアはカイルの座るテーブルの後ろで警護していた。
テーブルにはサラダや七面鳥の丸焼きやらと様々な料理が並んでいる。中には見たことのない料理もあるが、どれも良い匂いを漂わせており美味しそうだ。春奈も夏美も目の前に並べてある料理に興味深々な様子である。
カイルは会場の様子を見て、椅子から立ち上がってコップを持った。
「皆、聞いてくれ。」
威厳のある声が会場に響き渡る。話し合いをしていた人々はカイルの言葉で一瞬にして静まった。
「皆、よく集まってくれた。今宵は我らが老師達の力により召喚された者達の歓迎の宴である。では、主賓の者達を紹介しよう。左から秋斗、春奈、夏美である。皆、仲良くしてやってほしい。さて、秋斗よ。すまないが、代表として簡単に挨拶してもらって良いかな?」
突然話を振られて少し戸惑うものの、秋斗は会場にいる皆に挨拶をした。
「神無月秋斗です。今日は僕達のために宴を開いて頂き、ありがとうございます。この世界のことは、まだよく分かっていませんが、何卒ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」
「ありがとう。では皆、楽しんでくれ!乾杯!」
カイルが挨拶を締めくくり宴が始まった。
「ふぅ・・・・・・。」
「兄さんかっこ良かったよ。!」
「ありがとう。そう言ってくれると助かるよ。」
「兄ちゃん!春奈!これすごく美味しいよ!」
秋斗はコップにある飲み物を一気飲みし、ホッと安堵していると、隣に座っている春奈から褒められた。夏美は我関せずといった感じで目の前に並ぶ料理を食べていた。七面鳥の丸焼きがおすすめらしい。
秋斗も目の前の料理を食べるかと夏美おすすめの七面鳥の丸焼きを食べる。口の中から溢れだしそうになるほど肉汁がぶわっと広がりジューシーだ。皮もカリカリで美味しい。
目の前の料理を楽しんでいると、この国の侯爵やら子爵やらと次々に挨拶にきていた。貴族の挨拶をぎこちない笑みを浮かべながら乗り切る。貴族連中は特に春奈と夏美に話をしに行っている。たまに貴族の中で女性の方々は秋斗に話をしにきていた。頑張って秋斗達に取り入ろうとしてるんだろうなというのが分かる。
春奈はぎこちない笑顔を向けて時より秋斗に助けを求める目線を送っている。頑張れと思いながら秋斗も貴族の相手をした。夏美は楽しそうに貴族との話をしており、既に場に溶け込んでいるようだ。羨ましいなと思いながらも秋斗と春奈は貴族の相手をした。
宴ではオーケストラがこの世界にある音楽の演奏をしたり、会場の中央でダンスを見たりと楽しませてもらった。
歓迎の宴も終盤になろうとしているところに、カイルとリオンがこちらにやってきた。
「アッハッハ。さすが疲れたかの?」
「少しだけ疲れましたけど、大丈夫です。皆良くしてくれますし。」
秋斗達の様子を見てカイルが気にかけてくれている。カイルはそこそこ飲んでいるのか、顔が少し赤くなっており、時折、ヒックとしゃっくりをしていた。リオンはカイルの後ろに立っており、カイルがこんな状態で話して良いかは分からないが、秋斗は春奈と夏美と話した内容をカイルに伝えようと考えた。春奈と夏美に視線が合うとお互いに頷いた。どうやら秋斗の意図が伝わったようだ。
二人は秋斗の方へと寄るのを確認すると、カイルに伝える。
「カイル王。」
「ん?」
「僕達にどこまでできるか分かりませんが、この世界を救う手伝いをさせてください!」
「――――!・・・・・・ありがとう。秋斗達に最大の感謝を・・・・・・。」
秋斗達の覚悟にカイルは言葉を詰まらせながら秋斗達に頭を下げた。思わず秋斗はカイルに顔を上げてくれと言うと、カイルは顔を上げると、秋斗に向けて手を差し出した。
「よろしく頼む。」
「はい!」
秋斗はカイルに差し出された手を取り、握手を交わした。カイルの手は大きくゴツゴツとしていたがその手は少し震えていたように感じたのだった。カイルの後ろに居たリオンもホッと安堵したような顔をしていた。
熱い握手を交わした後、秋斗達の疲れを考慮してくれたカイルは歓迎の宴の終わりの挨拶をし、秋斗達はそれぞれ客間という名の自室へと戻る。
「ふぅ・・・・・・。今日は疲れたなぁ・・・・・・。」
秋斗達はこの世界に協力することにしたわけだが、一体何をすれば良いかは分からないままであった。カイルはこの世界が5年前後で滅ぶと言っていた。世界の力を結集しても無理だという予言だ。滅ぶと言ってもどのようにして滅ぶかによって秋斗達が何をしなくてはならないのかが変わってくる。
少なくとも秋斗の優先順位は春奈と夏美を守ることだった。本当にやばくなったら春奈と夏美を帰還させよう。ベットの上で寝転びながら秋斗はこれからのことを色々考えていると、宴の疲れからだろうか、いつの間にか眠りについていた。
▽▽▽
「ねぇ、夏美起きてる?」
「なぁに?」
春奈は不安そうな声で夏美に話かけた。夏美は宴の疲れからか今にでも寝てしまいそうな声で返事をしていた。春奈は心の中で溜め息を吐きながら夏美に問いかけた。
「夏美は怖くないの?その・・・・・・世界が滅ぶとかって話だったでしょ?」
「怖くないよ。あたし達はすごい力を持ってるからこの世界に召喚されたって言ってたし。その力っていうのは何かは分からないけど、多分大丈夫だよ。」
「うーん・・・・・・。」
あまりにも楽観的な夏美の返事に頭が痛くなりそうになる。こんな時の夏美の思考が羨ましく感じる春奈だった。これからのことを考えていると夏美の寝息が聞こえてきた。
「もう・・・・・・。私ももう寝よっと。」
春奈も思考を放棄して眠ることにした。夏美と同様に春奈も宴という慣れないことに疲れていたのだろうか。すぐに眠りにつくことができたのだった。
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