18話 ゴブリン巣窟のダンジョン
「A級ダンジョンになってますね。このまま放置すれば何時かスタンピードが発生するかもしれません。」
「そりゃまじーな。クレア達が最初に入った時はD級のダンジョンで出た時にはB級・・・・・・。一日経ったらA級だろ?今やらねぇと間違いなくファルア村に魔獣の群れがやってくるぜ。」
「それだけは避けないといけないわね。」
スタンピードとはダンジョンの攻略が遅れた際に発生する事象ことだ。ダンジョンの中で魔獣が溢れると地上へと出てくる。そして、溢れ出た魔獣達は村や町を襲いかかる現象のことだ。
「とは言え、俺達だけでA級ダンジョンなんて攻略出来ないからな。」
「では、私は行きます。」
クレアはそう言って、ダンジョンに入ろうとする。それを見たクライは慌ててクレアの肩を掴んでダンジョンに入るのを止めた。
「おいおい、何も行かないなんて言ってないだろ?」
「ですが。」
「確かに俺達だけじゃ無理だ。だから一緒に戦おう。クレアは敵を引き付けて好きに暴れまくって構わねぇ。俺とカミールはクレアのサポートだ。ついていけるのは俺とカミールくらいだろうからな。他の奴らは俺とカミールのサポートをする。それでいいな?」
「死ぬかもしれませんよ?」
「ここでダンジョンに入らなかったら私達はもうハンターで居られないわ。それに、死ぬより嫌な事ってあるわよ。」
カミールはクレアにそう言うと気持ち悪そうにダンジョンを覗き込んで中の様子を見ていた。クレアは二人の言葉でクライやカミール。ダンジョンまで来たハンター達の顔を見た。A級ダンジョンを目の前にしていながらクライやカミールも含めたハンター達の顔色は恐怖に染まっておらず、むしろやる気に満ち溢れた顔をしていた。
「分かりました。では皆で行きましょう。」
クレアはそう言うと剣を抜き、ダンジョンに入っていったのだった。
▽▽▽
ダンジョンの中は最初にクレア達がダンジョンに入った時よりも魔獣が多く、通路にもホブゴブリンが居た。
「すげーな。」
「ええ。私達の出る幕は無さそうね。」
クレアは1層に居るホブゴブリンの群れを一掃していきながらボス部屋へと急いで向かって行った。クライ達は、何もせずただただクレアの後ろを追いかけていた。
「さすがA級ですね。数が多いですね。」
「そう言いながら一人で全部倒してるじゃねぇか。」
「ここから先はそう簡単にはいかないでしょう。」
「まぁ何とかなるだろ。」
2層目に行く階段を覗くようにして見ながらクレアはそう言うと、クライは楽観的に答えていた。そんな軽いやり取りの後、早速クレア達は2層へと潜っていく。2層の通路に居る魔獣はホブゴブリンばかりで問題が起こることも無く魔獣を倒して順調に攻略は進んでいった。
「ちょっと待ってください。」
2層の通路を進んでいたが前方を歩いていたクレアが皆の動きを止めた。クレアは魔獣の気配を感じ取り曲がり角を覗き込む。その曲がり角の先には少し大きめの広場があり、人が座れそうな大きめの岩に魔獣が座っていた。
「あれは、ゴブリンソルジャーとゴブリンウィザードですね・・・・・・。」
クレアが見つけたのは鎧を着ているゴブリンが2体と杖を持っているゴブリンが1体だった。ホブゴブリンから進化した個体で鎧を着ているゴブリンソルジャーはホブゴブリンよりも一回り大きい姿をしており、腰には大剣のファルシオンをぶら下げている。。ゴブリンウィザードは近接を捨てて魔法攻撃に特化したゴブリンだ。魔獣が使う魔法は人類が使う霊術と異なっている。人類は霊力や霊気を使って霊術を使うのに対し、魔獣は魔力を使った魔法と呼ばれるものだ。力の源が違うが魔法も霊術と同等の力を持っている。
「ここからやべーのが出てくるってことか?」
「そうね。私とクライがゴブリンウィザードを相手するわ。クレアはソルジャーを相手にしてもらっていい?」
「分かりました。では先行してゴブリンウィザードの目を引きますのでその間に頼みます。」
「了解だ。それじゃ行くとしようか。」
「はい。」
クライがそう言うとクレアは頷いた。早速クレアは広場に向けて走り出した。ゴブリンウィザードの背後を突けるように壁沿いを走り、クライ達に気づかないように、通路が背になるように走った。クレアの姿を見つけたゴブリン達はクレアに向かって走り出した。ゴブリンウィザードは杖に魔力を込めて火の玉を放った。
「ここで火の魔法を使うとは・・・・・・。」
火の魔法は洞窟の中で使うのは愚策だ。ダンジョン内が洞窟の構造の場合、火を使うと酸素が無くなって呼吸ができなくなるからだ。クレアは軽く歯軋りををした後、ゴブリンウィザードが放つ魔法を避けつつゴブリン達がクライの居る通路に視界が入らないように敵を引き付けた後、反転してゴブリン達に向かって行く。
「行きます!」
クレアはクライ達に戦闘の合図をしてゴブリンソルジャーへと向かって行く。クレアの意図に気づかないゴブリンソルジャーは剣を振り上げながらクレアの方へと向かっていた。ゴブリンウィザードは前衛の援護をするために魔法でストーンバレットと同じ土の魔法を使った。
「炎刃。」
クレアは最低限の動作で魔法を避けつつ自身の持つ剣にエンチャントスキルで炎の力を纏わせると、クレアの持つ剣は赤くなる。ゴブリンソルジャーたちはクレアに向かってを振り回す。クレアはゴブリンソルジャーが振るう剣を盾で往なすと剣を振るった。クレアが振るった剣はゴブリンソルジャーの体をバターを切ったように綺麗に体を切断すると、残りのゴブリンソルジャーに向かっていく。仲間のゴブリンソルジャーが簡単にやられたのを見て少しだけ怖気づく。魔法の援護をもらおうと後ろに居るゴブリンウィザードに目をやるが、クライとカミールが丁度ゴブリンウィザードを倒したところだった。ゴブリンソルジャーはクレアの方を見るも既にクレアは武器を振るう動作に入っていた。悔しそうな声を上げるゴブリンソルジャーは大剣で受け止めようとするもクレアはゴブリンソルジャーの持つ大剣諸共斬り伏せた。
「ふぅ。終わったわね。」
「お疲れ様です。」
「さすがだな。」
クレア達はゴブリンソルジャーを倒し切るとお互い声を掛け合い無事を確認したのだった。
▽▽▽
2層を踏破したクレア達はお互いに連携しながら4層まで辿り着いていた。ゴブリンの進化個体も階層が深くなる毎に数が多くなっていき、苦戦する場面も見られたが誰一人欠ける事無く5層を目指して歩いている。
「そろそろ5層の入口に到着です。ですが、この先は大広場になっているのでゴブリン達が待ち伏せしている可能性があります。なので、少し休憩を取ってから大広場を攻略しましょう。」
「あぁ。それでいいぜ。」
「では、私はこの先の大広場の偵察をしてきます。」
「大丈夫?サーチするとかなりの数が居るわよ?」
「はい。どんなゴブリンが居るのか確認しておきたいのです。すぐに戻りますので。」
クレアはそう言うとクライ達を休ませて、5層へ行くための大広場の状況を確認しにいった。何度かの通路を曲がると、ゴブリンの声が少しずつ聞こえ始めていた。クレアはゴブリン達に発見されないように壁に背を向けて大広場を覗き見た。
「これは・・・・・・!」
クレアが大広場を覗き見ると、そこに居たのはゴブリンソルジャーの30体ほどの群れとその後ろにはゴブリンウィザードのが数十体を確認できた。更にゴブリンウィザードの背後にはゴブリンソルジャーをひたすらに召喚しているゴブリンサモナーが2体ほど確認できた。
「スタンピードの予兆ということでしょうか?何れにしても早めに対処しないといけないですね・・・・・・。」
クレアは呟きながらクライ達と合流し、大広場の状況を説明した。
「なんだって!?」
「それはさすがに私達じゃ手に負えないわね。」
「ここから先については、クライとカミール達の判断にお任せします。」
「クレアはどうするの?」
「私はあの群れを倒して5層へと向かいます。ここで撤退すればスタンピードが発生する可能性が高いので。」
「少し考えさせてくれ。」
「5分です。それ以上は待てません。」
クレアがそう言うと、クライはカミールを連れて仲間の元へと向かっていった。仲間に相談してどうするのか決めるのだろう。クレアは近くにあった岩に座り、目を瞑って瞑想を始めた。それから5分経ってクライとカミールがクレアの元へと戻ってきた。クライはクレアと目を合わせ覚悟を決めた顔つきをしている。
「クレア。俺達も5層を目指すぜ。」
「ここから先は命の保証はできませんよ?」
「それでも行くわ。ハンターになった時から覚悟はできているもの。」
「分かりました。では行きましょう。」
「おう!」
「えぇ!」
クレアは覚悟を決めたクライ達と共に大広場へと向かったのだった。
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