16話 ダンジョン
クレアはダンジョンがある場所を確認し、サーチの霊術を使って敵の数を確認する。ダンジョンの1層目ではそこまで数はいないことを確認すると、一先ず秋斗達が居るところに戻ることにした。
「クレアさんおかえりなさい。どうでした?」
秋斗達はクレアが戻ってきたのを確認すると軽く手を挙げて挨拶をした。クレアも軽く手を挙げて秋斗達の元へと向かう。
「そうですね。ダンジョンは見つけました。ですが少し難しい判断にはなりそうですね。」
「そうなんですか?」
「ダンジョンの入口でサーチをしてみましたが、魔物の数は少なそうでした。ただ、ダンジョンに漂う魔素から見れば大したことはないと思います。ただ・・・・・・。直感ですが、思ったよりも難易度が高いダンジョンかもしれません。」
「そうなんだ。ダンジョンの中も調査はしないの?」
夏美はダンジョンに行きたそうにうずうずしており、あまりクレアの話を聞いていない様子だった。クレアは夏美の顔をチラリと見た後、手を顎に当てて少し考えている。クレアは秋斗達の顔を見た後、意を決したように秋斗達と向き合った。
「秋斗達の実力なら問題は無いでしょう。分かりました。少しダンジョンの様子を見に行きましょうか。ですが、あくまで様子を見に行くだけで攻略はしません。それを忘れないようにしてくださいね。」
「どうして攻略しないの?」
「それはですね―—―。」
夏美はダンジョン攻略をしない理由をクレアに質問すると、クレアが答えてくれた。クレアの説明によると、ダンジョン攻略は基本的にはハンターが行っており、国に所属しているような兵士はギルドからの要請がない限り、ダンジョンの攻略を行わないことになっていた。これは国とギルドが結んだ契約だった。国はダンジョン攻略をギルドに委任することを条件に、町や村などに魔獣達が攻め入った時に、率先して防衛をすることが条件だった。国も勿論兵士を出すが、人手が足りないため、ハンターを防衛に参加させることで戦力を補っているのだった。
「そういう訳で私達のような兵士はギルドの要請が無い限りはダンジョンの攻略はできません。そう言いながら初めて見つかったダンジョンに限っては、情報を持ち帰る名目でダンジョンの中にかを確認する程度のことは許されています。」
「そうなんだ。でもダンジョンに入れるなら一先ずオッケーなのかな?」
クレアの説明を受けて、夏美はダンジョンの攻略ができないことを残念がっていたが、一先ず、ダンジョンの中に入れることが分かり、顎に手を当てながら納得していた。
「それではダンジョンに行ってみましょうか。」
「了解です。」
「はい。」
「分かりました!」
クレアの決定により、秋斗達はダンジョン向かった。ホブゴブリンが住んでいたと思われる住処に入り、隠し部屋へと向かっていく。秋斗達はダンジョンの入口に着くと、若干の不快感に襲われながら訝しげにダンジョンの入口を見ていた。
「何だろう・・・・・・ダンジョンの入口から何か漏れてない?」
「緑色のこれは何だろう?」
「少し気味が悪いな・・・・・・。」
「それは魔素です。魔素の色でダンジョンはランク付けされているので、どれ程度の難易度なのか分かるんですよ。」
魔素の色が濃くなるほど色が黒に近づくとクレアは説明した。現在、この世界で確認されているダンジョンから漏れ出ている魔素の色は黒色,紫色,赤色,黄色,緑色そして青色の魔素である。黒色はS級のダンジョンとなり、紫色から青色まで順番にA、B、C、D、Eといった階級に設定されている。秋斗達は初めて見るダンジョンを見て興味深そうにダンジョンの中を覗いている。黒や紫色の魔素を漂わせているダンジョンは滅多になく、主に見かけるのは黄色から青色の魔素が漂うダンジョンで階級的にはCからEのクラスのダンジョンがほとんどである。
「緑色の魔素だとどれくらいのランクになるの?」
「そうですね。ダンジョンの階層で難易度のクラスは変わるようですが、魔素だけで言えばDランクのダンジョンになるでしょうね。」
秋斗は最初にクレアが直感でダンジョンの難易度が高いと言っていたので、先ほどのクレアの言葉で首を傾げた。それを見たクレアは補足して説明してくれる。
「よく見るだと、ダンジョンを守るようにして魔獣が集まることはありません。ですが、このダンジョンはゴブリン達が守っているように見えました。普通なら魔獣がダンジョンを守るようなことはありません。」
「でもゴブリン達はここで集落を作ってた。」
「はい。なので、このダンジョンは魔素の色からではDランクでそこまで脅威じゃないかもしれませんが、このまま放置すると取返しがつかなくなる可能性があると私は考えています。」
クレアはは目の前にあるダンジョンを見て感想を述べた。
「一先ずはダンジョン内がどうなっているか確認に行きましょうか。」
「了解です。」
とは言っても、立ち止まっているのも意味はないと考えたクレアはダンジョンの中を調査しに行くことにし、ダンジョンの中に行くことを決め、秋斗達はそれに同意したのだった。
▽▽▽
ダンジョンに入った秋斗達は初めて入るダンジョンに興味深そうに辺りを見渡しっている。ダンジョンの内部は洞窟のようになっており、時より左右に分かれている道があった。秋斗達はサーチの霊術を使用して、魔獣を索敵しつつダンジョンの奥深く入っていく。
「何か居ます。」
秋斗はサーチで道行く先に数体の魔獣の存在を居ること確認し、クレア達に伝える。
「では手筈通りに、秋斗が前衛、後衛は私と春奈が、中衛は夏美でお願いします。戦いが始まれば音で魔獣が寄ってくる可能性もあるのでくれぐれも油断せずに注意してくださいね。」
「分かりました。」
クレアは秋斗達に軽く指示をすると、魔獣の居る場所へと向かって行った。秋斗は壁に背を向けて気づかれないように魔獣が居る小さな広場を覗き込むように見る。目視でホブゴブリンが2体ほど確認できるが、サーチした結果だと残り4体ほど魔獣が居ることを確認している。
「まずは霊術で奇襲しましょう。残りは状況に応じて対応を。火の霊術は使わないようにしてください。酸素が奪われて大変なことになるので。」
「了解です」
「分かりました。」
「はーい。」
秋斗達はクレアの指示を聞いて返事をし、早速行動に移していく。
「ストーンバレット!」
「ホーリーランス!」
秋斗と春奈は目視で確認できるホブゴブリンに向けて霊術を放つと、見事に霊術が決まり、ホブゴブリンは倒れていく。夏美は走ってホブゴブリンとの距離を詰めていく。一本の短剣を投げるとホブゴブリンは簡単に避ける。夏美は短剣を避けられた気にもせずは双剣を構え、ホブゴブリン突進していく。ホブゴブリンは嗤いながら武器を構えるが徐々に顔が焦ったような表情へと変わっていく。
「影縫いよ。動けないでしょう?それじゃ、これでさよならよ。螺旋影牙!」
夏美は飛び上がり、双剣を突き出すと、双剣を中心に自分を覆う様に霊力を纏いドリルのような形状にして、そのまま突っ込んでいくとホブゴブリンの体を貫通しホブゴブリンは倒れる。
春奈も夏美の活躍に負けないように前へと出ていく。ホブゴブリンは春奈に向けて大きな斧を振るう。緊張した表情で少し体は固い春奈だが、ホブゴブリンの大振りな攻撃は春奈に当たることはない。ホブゴブリンに何度も突きを放っていく。後ろにたじろいだホブゴブリンを見て春奈は霊力を細剣に纏わせて武技を放った。
「光波斬!」
細剣から放たれた光の刃はホブゴブリンは真っ二つとなり、ホブゴブリンは霧散し、無事勝利を収める。
秋斗は二人の戦いを横目にしつつも目の前の2体のホブゴブリンを相対している。ホブゴブリンは秋斗を挟むようにして武器を構えている。だが秋斗は怖気づく様子はない。秋斗は距離の近い方のホブゴブリンに接近して剣を振るう。だが、ホブゴブリンは剣で受け止めてから弾いた。
「そう簡単にはいかないよな。」
秋斗はポツリと言葉を零していると、2体のホブゴブリンは秋斗に詰め寄っていく。
「風輪裂波!」
秋斗は剣に霊力を乗せつつ、ホブゴブリンに剣を弾かれた勢いを利用して円を描くようにして剣を振るい風の刃を周囲に放つと、ホブゴブリンは風の刃に切り刻まれて秋斗に近づく前に倒れた。
「皆さん見事ですね。危な気もなく素晴らしい戦いでした。私の出番はありませんでしたね。この調子で進んでいきましょう。」
クレアは秋斗達の戦いを見て称賛の声を上げる。秋斗達は嬉しそうに笑い合った。最後に油断しないようにと釘を刺されつつも秋斗達は更にダンジョンの奥へと進んでいく。その後の道中も数体のホブゴブリンに出くわすものの秋斗達は苦戦することなく。ダンジョンを攻略していき、5階層目まで進むことができた。
5層の攻略する秋斗達だったが、5層の探索をしていると大きな門を見つけることができた。
「これは・・・・・・。ダンジョンの主がいる部屋のようですね。」
「ここが終着点かー。」
ダンジョンの主の扉を見つけたことでダンジョン内の冒険が終わることを意味していたため、夏美は残念がっていた。
「少しここで待っていてください。」
クレアは秋斗達に待つよう指示すると、扉に近づく。そして、扉を少し開けて覗き込むようにすると、そこにダンジョンの主の影を見ることができた。ダンジョン主の後ろに松明があったため、影でしかダンジョン主を確認できなかったが、クレアはダンジョン主の魔獣が何者なのか予想することができたためそっと扉を閉じた。
「何が居たんですか?」
「恐らくダンジョン主はゴブリンキングと思われます。ホブゴブリンの上位個体ですね。」
「強いの?」
「ホブゴブリンよりは一回りも二回りも強いですよ。情報も十分手に入れたことですし、この辺りで切り上げてファルア村に報告しに行きましょう。」
「はい。」
クレアは秋斗達にそう言うと、一度ファルア村に戻ることにしたのだった。
▽▽▽
秋斗達がダンジョンから地上に戻ってくると既に夕暮れとなっており、かなりの時間ダンジョンに居たことが分かった。
「暗くなる前にファルア村に早めに戻りま・・・・・・しょう・・・・・・。」
「クレアさんどうかしました?」
クレアは秋斗達に振り返って話していると、少し焦ったような顔をしていた。秋斗達はクレアが見ている方を見てみると、魔素の色が緑色から赤色に変化し、ダンジョンの難易度が上がっていることに気づいた。
「早めにファルア村に戻ってギルドに報告しましょう。」
クレアがそう言うと、秋斗達は足早にファルア村に戻ったのだった。
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