14話 ファルア村
ゲートの広場にある宿で寛いでいた秋斗だったが、少し時間を持て余していたため少し外に出ることにした。ランニングをするついでにゲートの門の外の様子を見ることにしたのだった。秋斗は軽く準備運動をした後に門を通って外に出た。
ゲートの門から外に出ると、ゲートを通る前と同じような造りとなっている砦が目の前に広がった。秋斗は外も見てみようと、砦の入り口近くある階段を登っていく。砦から少し離れたところでは森林が広がっている。更に遠くを見ると、山頂に登れば天にも届きそうな大きな山が二つ見えていた。また、アルカディア王都からゲートまでは道は整備されており、馬車と歩行者がぶつからないよう歩道と馬車の道が分かれていて幅が広い石畳の道路となっていたが、砦の外にある道は砂利道が広がっている。
馬車で砂利道を走るのはお尻が痛くなりそうだなと砦の外を見ていた秋斗だったが、当初の目的であるトレーニングをすることを思い出して、階段を下りてから手始めにランニングを開始するのだった。2時間ほどトレーニングを行った秋斗は宿に戻ってくると夏美が秋斗の方へと駆け寄ってきた。
「砦の外見てみた?すごい大きい山が二つもあったよ!」
「あぁ。トレーニングする前に見たよ。」
「あたし達の目的はあの山の近くにあるファルア村に行くんだって。クレアさんが言ってたよ。」
「へぇ~。そうなのか。あの山はトレーニングに良さそうだよな。」
「兄ちゃんはトレーニングばっかりだね。」
「せめてリオン総隊長の横に立つくらいの実力をつけないと世界を守るなんてできっこないからな。」
「確かにそうだね・・・・・・。あたしもトレーニング頑張るわ!」
「あれ?そういえば、春奈はどうしたんだ?」
「さぁ・・・・・・。部屋に閉じこもってるから分かんない。」
今日はもう休みとなったため、店を回ろうと夏美は春奈を誘ったらしいのだが春奈は部屋から出てこなかったらしい。初めての旅だったため、その疲れが出てしまったのだろうかと考えた秋斗だった。
「そうか。じゃあ僕も春奈の様子を見に行くよ。」
「分かった。あたしはもうちょっと店を回ってくるね。」
「分かった。じゃあまた後でな。」
体調を崩したかもと秋斗は一度宿から店に行き、お茶を買ってから春奈の部屋へと向かうことにした。宿に戻り春奈の部屋に向かう。コンコンとノックをすると、春奈が少し慌てたような声を出した後、「どうぞ」と声がドアの向こうから聞こえてきた。
「調子はどうだ?」
「え?調子は別に普通よ?」
「そうなのか?夏美が心配してたぞ。凄い汗だけど本当に大丈夫か?」
汗だくになっている春奈を見て心配して秋斗は駆け寄って春奈のおでこを触る。
「本当に大丈夫だから。少し鍛錬してただけなの。」
「そうなのか?春奈がそう言うなら・・・・・・。はいお茶だ。あまり無理はするなよ。」
「ありがとう。」
秋斗は一先ず、春奈が体調を崩していないことを確認した秋斗は自分の部屋に戻ったのだった。その後、秋斗達は夕飯を済ませ、明日の出発の時間などの予定を確認した後、翌日に備えて各々部屋で休むことにしたのだった。
▽▽▽
翌日になり、秋斗は出発の時間が近づいてきたため、部屋で身支度を整えた後に宿から外に出た。外で待っていたのはクレアと御者のおじいさんのみで、話を聞くと春奈と夏美はまだ宿から出てきていないようだった。暫くしてから秋斗は宿の方をふと見てみると春奈と夏美の声が聞こえてきた。
「もう春姉ったら遅刻だよぉ!」
「ごめんごめん。」
春奈と夏美は慌てたような声を上げながら秋斗達の方へと走って駆け寄ってきた。二人は急いできたようで肩で息をしている。息を整えた後、春奈と夏美は頭を下げた。
「すいません。遅れました。」
「問題ありませんよ。それじゃあ早速ですが、出発しましょうか。」
「はい。」
秋斗達は馬車に乗り込むと、早速ファルア村に向けて出発した。馬車の中で秋斗は春奈の様子を伺いつつ声をかける。
「春奈が遅刻って珍しいな。やっぱり無理してないか?」
「してないよ!寝付けなくて少し精神統一をしてたら眠るのが遅くなっただけだから。」
「そうか。あまり無理するなよ?」
「分かってるよ。」
「あたしは心配にならなかったの?」
「夏美はいつもの寝坊だろ?」
「むむっ。確かにそうだけどさぁ。」
夏美は不服そうに頬っぺたを膨らませて秋斗をジト目で見ていた。秋斗はツンツンと夏美の頬っぺたを突っつくと夏美は抗議の声を上げている。そんな二人を見てクレアはクスクスと笑った後、春奈に向かい合うと春奈に真面目な声音で声をかけた。
「あまり無理はしないでくださいね。状況次第ですが、任務の調査が始まると長い時間の休憩は取れませんから。」
「はい、分かりました。」
心配しているクレアに春奈は元気よく返事をした。その後、クレアは秋斗達の体調を気にながらファルア村に向けて移動をし、特に問題が起きることもなかった。道中で1泊してからファルア村の近くまで移動することができた。
「見えてきましたよ。」
御者が秋斗達に報告すると、秋斗達は馬車から外を覗き込むと、ファルア村に入る門と木でできてた
3メートルほどの柵が見えてきた。秋斗達は馬車を進めていき、門の中へと入っていく。アルカディア王都は主にレンガでできた家が多かったが、ファルア村は木でできた家が多くあり、基本的に道は舗装されていない。物珍しそうにこちらをチラチラとファルア村の住人が見ていた。
「それでは一先ず駐屯地に行きましょう。まずは状況の確認です。」
クレアはそう言うと駐屯地へと向かって行く。駐屯地は少し歩いたところにあり、兵士が二人ほど駐屯地の入り口に居た。
「お疲れ様です。まさかクレア副隊長が来られるとは思いませんでした。おお。後ろに居られるのが英雄召喚で来られた英雄殿ですかな?」
「お疲れ様です。そうです。紹介しますね。こちらは秋斗、その隣が春奈と夏美です。」
「よろしくお願いします。」
「うんうん。礼儀正しい方のようですな。儂はグランツ。この駐屯地で兵長をしています。それでは早速ですが。」
「そうですね。状況を教えてください。」
「はい。それでは―—―。」
グランツの話によると、ファルア村の近くにあるミルヴィスの森でゴブリンの存在が確認されていた。ゴブリンだけであれば駐屯兵だけで掃討することは可能なようだが、密偵を放ったところ。ゴブリンの上位個体であるホブゴブリンの存在が確認されたとのことだ。上位個体1体を相手にするだけなら駐屯地に居る兵士の総力を挙げれば掃討することは可能とのことだが、ゴブリン達は自分達の住処を造っており50体を超えるゴブリンが住んでいるため、駐屯兵だけでは兵力が足りないとのことだ。
「それだけではないのでしょう?」
「はい。恐らくダンジョンがゴブリンの集落の近くにある可能性があります。まだダンジョンは見つかっておりませんが、我々の調査ではゴブリンの集落の近くにあるものと考えています。」
「なるほど。既にそこまで調査が進んでいるのですね。ハンターに依頼を?」
「はい。我々のできる範囲で調べた結果ですが・・・・・・。何とかなりますかね。」
「一先ずはゴブリンの掃討するところからですね。」
「はい。今駐屯地ですぐに動けるのは5名ほどです。」
「いえ。まずは、私達だけで行きます。ここの守りを減らすわけには行きませんから。」
「了解しました。」
「では、集落の場所を―—――。」
クレアはグランツからゴブリンの集落がある場所を教えてもらった後、駐屯地を後にした。駐屯地から出た後、秋斗達は宿を取り、荷物を宿に置いた後、装備を整えた秋斗達はファルア村にある門付近に集合し、早速ミルヴィスの森へと向かうことにした。ミルヴィスの森はゲートとは反対側の道でファルア村から東に進んだところにある。ミルヴィスの森の前で馬車を待たせることもできないため、馬車での移動ではなく徒歩で向かうことになった。ミルヴィスの森に向かう道中で秋斗は駐屯地での話出たキーワードを思い出し、クレアに質問した。
「クレア副隊長。そういえばなんですが、ハンターというのは一体?」
「あぁ。ハンターというのは―—―。」
クレアはハンターについて秋斗達に説明をした。ハンターの活動は主に町や村の困り事を依頼として受け、それを解決する活動をしている職種だ。自警団としての活動や町の外で魔獣を狩ったり、薬草の採取などを行って活動している。依頼内容によって報酬が変わる。ハンターはパーティを組んで依頼を熟しており、ハンターが仲間同士で集まってできたクランがあり、大型クランになると百人を超えるハンターの集いまである。
「ハンターの仕事は一言で言えば、何でも屋と言ったところですね。」
「へぇー。密偵もできて戦う事もできるし、本当に何でもやるんですね。」
「そうですね。」
「かっこいいなぁ!」
夏美はクレアの説明を聞いて目をキラキラとさせていた。ハンターについての説明を聞いているといつの間にかミルヴィスの森に辿り着いていた。
「ここがミルヴィスの森です。ゴブリンの気配はありませんが慎重に行きましょう。」
「はい!」
ミルヴィスの森に辿り着いた秋斗達は気を引き締めてミルヴィスの森に入っていくのだった。
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