13話 ゲート
アルカディア王都を出発してから少ししたところで、クレアは今後の予定について秋斗達に話をしていた。
「今から1日半ほど馬車で、転送陣がある天門へと向かいます。そこからファルア村行きのゲートを通って、更に1日半ほどすると、ファルア村に到着します。天門に到着するまでに1泊、ゲートを通ってから1泊,ファルア村へと向かう道中で1泊といった感じですね。」
「兄ちゃん、春姉!ゲートだって!異世界って感じだよね!」
夏美は異世界で出てくる特有の言葉を聞くたびに喜んでいた。夏美はキャビンから体を乗り出しながら外の景色を見ており危なっかしく。秋斗は夏美がキャビンから落ちないように首根っこを引っ張ってキャビンの中に座らせた。そんなことをしていると、ゲートについて春奈は尋ねる。
「ゲートって何ですか?」
「ゲートというのは遠い場所へと転送するための門です。ゲートの床には方陣が刻まれていて同じ方陣があるところに行き来できるのですよ。ただ、残念ながらゲートを生成するための方陣を刻める人がもうこの世界にはいないという話を聞きました。」
「そうなんですね。じゃあゲートは大切に運用しないといけないですね。」
「はい、仰る通りです。なので、王都はゲートに天門を設置して、砦を築いたのですよ。」
「ゲートがあるところに町を作れば便利そうなのに、馬車で移動するんですね?」
春奈はそんな疑問をクレアにぶつけると、クレアもその考えには少し賛同した後にすぐに別の考えを示しす。
「確かに、春奈の言う意見もあります。私もそう考えていましたが、方陣を仮に魔獣に占拠された場合、街中に敵がどんどん攻め入ってくる可能性がありますよね。なので、迎撃態勢を整えるために最低でも移動に1日以上はかかるようにゲートまでの距離を設けたと聞いています。」
「そういうことか。」
「兄さん。どうかした?」
クレアの話を聞いて秋斗は腕を組んで少し考えた後、腑に落ちたような顔をして呟くように言葉をこぼすと、秋斗の声に春奈は問いかけた。
「いや、砦で1泊するなら砦の食料を分けてもらえばいいんじゃないかなって思ったんだけど。砦には最低限の兵糧しかないんじゃないかなって思ってたんだけど、さっきのクレアさんの話から、砦にある食料はそこまでの量を用意してないんじゃないかなって思ってね。」
「なんで最低限の食料しか用意してないの?」
「もし砦を落とされた場合に砦に残された兵糧が全部魔獣のものになっちゃうからだよ。」
「その通りです。実際、6年ほど前の話ですが、ゲートにオークの大群がやってきて砦が襲われたことがあったんですよ。」
クレアは以前に起きた出来事を話してくれた。砦にオークの大群をやってきて、ゲートが占拠されてしまったとのことだった。オークに攻め落とされた砦からゲートを通って町を攻めてきた結果、町もオークに占拠されてしまったらしい。砦にも多くの食料を保存されており、魔獣の戦意が落ちることもなかった。結果、兵の戦意の差や兵糧不足によって一度は敗走してしまったらしい。軍を再編して町と砦を同時攻略することでなんとか砦を取り戻したようだ。
「へぇ~。オークって弱い魔獣だと思ってたけど、かなり強い魔獣なんだね?」
「ただのオークだけなら問題はありません。ですが、あの時の戦いではオークの群れの中にオークの上位個体が何十体かいたので、それで苦戦してしまったという感じですね。」
「そんなことがあったのね・・・・・・。だから街とゲートは少し離した場所にあるのね。」
「はい。その時辺りからリオン総隊長やカルナ宰相が頭角を現す切っ掛けになったと聞いています。」
時間をかけるとオークが別の町に行き、被害が拡大していく可能性があったため、短期決戦でオークを駆逐する必要があった。当時はリオンは副隊長でカルナはリオンの参謀として軍に居た。当時リオンはカイルの命により、砦と町の奪還を同時攻略することになっており、総数千の部隊をリオンに与えて攻略に乗り出した。リオンは7対3に軍を分け、700の兵をカルナに与え、リオンは300の兵で砦と町の奪還することにした。
オークの総数はリオン率いる軍の2倍近く居たが、カルナの指揮で町を奪還、砦はリオンの一騎当千の活躍によって敵を殲滅したのだった。当時、クレアは300の兵の中の一兵卒として参加しており、鬼気迫るリオンの戦いにリオンに一生ついていくことを誓ったらしい。
「私は憧れでリオン総隊長と同じ訓練は受けてみましたが、今までしていた訓練の大体2倍くらいの量の訓練メニューだったので始めた頃は何度も吐きましたね。今ではいい思い出です。」
頬を掻きながら少し照れるようにクレアは話していた。訓練の話は秋斗達も首が取れそうなくらいにうんうんと頷いていたのだった。
少し昔話をしていると、夕方になっていた。馬車を止めて秋斗達はテントを張ってキャンプの準備をしていた。野宿のため、お風呂には入れないと思っていたクレアだったが、春奈と夏美が霊術を試行錯誤させた末に完成した簡易のお風呂ができていた。
クレアはパチパチと手を叩き、感嘆の声を上げながら驚いている。土の霊術を使って少しずつ湯舟を生成し、一気に固めて石化させた後に火の霊術と水の霊術を組み合わせて暖かいお湯を生成してから湯舟へと入れる。何度か湯舟にお湯を入れることでお風呂を作り上げた。秋斗はお風呂を囲うようにして土壁を作り、外からお風呂の様子が見えないように壁を生成していた。
クレア達がお風呂に入りに行ってから秋斗は御者の老人と一緒にテントを張ったり、夕飯の準備をする。普段、料理は春奈がやっていたが、お風呂に入ってしまったので、今回は秋斗が準備をすることになった。防音構造にはなっていないお風呂場からキャッキャッと騒いでいる声を聴き、御者と「元気ですね」と話しをしながら夕飯の支度と整えていく。
焼く前の串焼きに塩や胡椒を振るだけで簡単に準備ができるので普段料理をしない秋斗でも料理を作ることができた。丁度、串焼きの下ごしらえの準備を整えた後、ぞろぞろとクレア達がお風呂から出てくる。
クレア達は感謝を述べ、春奈は秋斗の後を引き継いで串焼きのを焼き始めた。秋斗はテーブルの席に座って料理ができるのを待つ。夏美も「ご飯!ご飯!」と鼻歌を歌いながら楽しそうにテーブルの席に着いた。
少しした後に、春奈とクレアが焼いた串焼きを皿に盛りつけてもってきた。皿からは焼けたお肉や野菜の香ばしい良い匂いを漂わせている。
「「いただきます。」」
串焼きに刺さっている肉は異世界に来る前に比べてボリュームがある。肉も一口サイズではなく大きな口を開けて齧り付くようにして秋斗は串焼きを食べた。夏美も秋斗の真似をしながら串焼きを齧り付くようにして食べている。春奈やクレアは啄むように少しずつ串焼きを食べていた。
「思ったよりもボリュームあるな。」
「ほうね!ふういおなはいっあいにないほう!」(そうね!すぐにお腹いっぱいになりそう!)
「ちょっと、飲み込んでから喋りなさい!」
春奈は夏美を注意していると、クレアはクスクスと笑いながら春奈と夏美のやり取りを見ている。
「なんかすいません。騒がしくしちゃって。」
「構いませんよ。自分の弟と妹の事を思い出しただけなので。」
「弟さんと妹さんが居たんですね。」
「はい。今年で17歳と15歳になります。二人共ヤンチャで食事もこんな感じで賑やかなので何だか懐かしいです。」
「へぇ~。じゃぁ僕達と歳が近いですね。春奈と夏美とは歳も同じですし。」
「そうなんですか?近いうちに弟と妹を紹介しますね?弟は私と同じで騎士ですから、何れ会う事もあるでしょうし。」
「分かりました。その時はよろしくお願いします。」
クレアの弟は秋斗達がちょうどリオンの霊術で山岳にちょうど修行を開始した頃に騎士になるため試験を受けており、無事合格していた。戦い行っていた時にちょうど騎士になったらしい。今は丁度遠征に出ているらしい。妹はアルカディア王都で両親が宿舎を営んでおり、その手伝いにをしているようだ。
クレアの話を聞いていると、妹は春奈に性格が似ており、弟は夏美に性格が似ていた。クレアの話を聞いていると、春奈も夏美もクレアの弟妹とは気は合いそうだなと秋斗は思った。秋斗達はクレアの弟妹の話を聞きながら食事を終えると、朝に備えて寝ることにしたのだった。
翌日になり、秋斗達は荷物を纏めると馬車に乗り込み、転送陣のある天門に向かうため、一先ず砦を目指す。野宿をしていたところら、休憩を挟みながら半日かけて秋斗達は砦に到着したのだった。
クレアは馬車から降りて、砦の門にいる兵士に話かけると兵士は大きな声で開門と叫ぶと閉まっていた門はゆっくりと開かれた。秋斗達は門に入るとそのまま転送陣があるゲートへと向かっていった。ゲートに向かっていると、春奈がクレアに疑問を呈していた。
「そういえば、馬車ってゲートを通れるんですか?」
「ええ。ゲートは大きいので入れますよ。あそこに門が見えるでしょう?あの門に入れれば何でもゲートを通ることができますよ。」
クレアの指さす方を見てみると、砦を通った時と同様に大きな門が見えていた。門は開門されており人々が門を行き来しているのが見える。中には秋斗達が乗ってきた馬車と同じくらいの大きさがある馬車も門から出てきていた。
「結構行き来があるんですね。」
「はい。何度かのゲートを経由して他の町や村に向かえますので利用者は多いですね。国が発行する手形があれば無料で通ることができます。値段を取るといってもそこまでお金を取るわけではないので、利用者は比較的に多いですね。よく商人や旅行する方々がゲートを使用していますよ。」
秋斗達はゲートに入るために門を通ると、門を通った先には渦を巻きながら大きなゲートが立ちはだかっており、ゲートを囲うような形でお土産屋や宿などが何件か建っており結構な賑わいを見せている。
「少しこの辺りで待っていてください。」
クレアはそういうとゲートの近くにいる兵士と話をしていた。クレアが戻ってくるまでの間、秋斗達は店を見に行ってみた。中にはクッキーなどのお菓子や保存食などが並んでいる。
「あれ?ゲートの色が赤色に変わった?」
秋斗達が店を見てゲートから目を離した隙に渦巻いていたゲートの色は青色から赤色へといつの間にか変わっていた。いつの間にか用事を済ませたクレアが秋斗達の元へと戻ってきており、赤色になっていたゲートについて話をしてくれた。
「ゲートが赤色になっている場合はゲートの向こう側から人が来る合図になってます。後でまたゲートが少しずつ青くなっていきますので、完全に青色になったら入れるようになりますよ。」
クレアからのそう話すとゲートの中から次々と人々が出てきている。中には馬車を引いてやってきた人もいた。時間が経つにつれて赤かったゲートは徐々にだが青色へと変わっていくのが見える。そろそろゲート全体が青色に変わりそうになったところで秋斗達はゲートの前まで移動した。
「中はどうなってるんだろう?」
「ドキドキするね。」
春奈と夏美がそんな事を喋っているとゲートが一瞬白く光り、完全い青色に変貌した。秋斗達はそのまま馬車を進めゲートを通っていく。ゲートに差し掛かると、秋斗や春奈、夏美は目をギュッと閉じたのだった。
「着きましたよ。」
クレアの声で秋斗達は目を少しずつ開いて外の様子を確認した。そこに広がっていた景色はゲートを通る前と同じようにお土産屋や宿の店が並んでいる。
「ちゃんとゲート通れたの?」
「えぇ。ちゃんと通れていますよ。他のゲートもそうですが、ゲートがある広場は基本的に宿や店が同じようにあるので、門の外に行けばゲートを通った事が分かりますよ。」
「へぇ~。」
「今日はあそこに見える宿で体を休めて、翌日の朝からファルア村に向けて出発です。」
「分かりました。」
秋斗達は宿に入ると解散し、各々は旅の疲れを癒すべく部屋で休みを取ることにしたのだった。
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