夢001
イギリスにある名前も知らない遺跡に行った。ビルをそのまま倒したみたいな直方体のかたちをした石が積まれている。無作為に並べられているように見えたが、いい感じのバランスを保っているようだ。石のあらゆるところに、ばかみたいに苔が生えている。せっかくだからと思いスマートフォンで撮影した。
廃れたビルの前にいる。これぞ、まさに廃ビルというような雰囲気だ。階段で3階まで上がった。部屋が1つある。僕はその部屋の扉をノックした。扉のすぐ奥から声がした。
「どうぞ」
そう聞こえたので扉を開けると、そこには30代後半ぐらいの白衣を着た研究者のような男が車いすに乗った少女を押して入口から、扉のほうへ寄ってきた。
「彼女はね、このスプーンを持ち上げる程度の力しか出せなくなってしまったんだ。」
と研究者らしき男は言った。
男は、車いすの取っ手についている小さなミニテーブルの上に銀色のスプーンをおいた。女の子はわずかにふり絞ってきたような力で手をスプーンに近づけ、持ち上げて見せた。確かに、その女の子はスプーンしか持ち上げられないように見えた。
なと考えていると男は突然こう言った。
「she has a disease like you are seeing now. What do you want to tell her to live?」
英語だ。なんで急に英語なんだ?でも英語で聞かれたんだから、英語で答えなければ。
「Of course, she has a significant illness, but You mustn’t give up on living. Living is to know a lot of things that You don’t want to know. However, this is to live. Your hope to live must save you..」
こう答えた。少し、詰まったところはあったけど、僕の思いは伝わったと思う。彼女は何も言わなかった。というより病気があるから、言えないのだろう。
「OK. Thank you. 」
と男が言った。そして日本語でこう話し始めた。
「君が18になったらメールを送る。再び君が来てくれることを楽しみにしているよ。それじゃあ。」
そういって男は、優しく扉を閉めた。
ビルを出ると、ちょうど日の出の時間だった。太陽光線が僕の胸に当たって、熱を感じる。
「あったかい」
とつぶやいた。