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新たな三好


天文3年(1534年)11月 越水城 本丸御座の間


越水城の本丸に設けられた広間に、三好家の精鋭たちが一堂に会していた。


四国から駆けつけた三好康長、長逸ら譜代の将。

畿内で新たに加わった豪族、地侍たち。

そして――己の出自も定かならぬ若き無名の者たちであっても、才ある者は取り立て、今まさに三好家を支え始めている者たち。


つい先日、木沢長政の仲介により晴元方との講和が成立した。

宿敵・三好政長を打ち果たせぬ無念。

宗家を裏切った細川晴元の傘下に再び入らねばならぬ屈辱。

そして、無事講和が終わった安堵。


軍議の間には、それら相反する感情が入り交じっていた。


だが、三好長慶はその混沌とした空気に、ふと頬を緩めた。


その様子を見た長逸が首を傾げて尋ねた。


「殿……いかがなされましたか?」


注がれる視線を受けて、長慶は静かに応じた。

まだ十二歳とは思えぬ落ち着いた声音で――


「私は、整っているものが好きだ。

けれど、今のこの場のように、整っておらぬがゆえに、それぞれが三好の未来を真剣に思っていると感じられることも……悪くない。」


柔らかな笑みが、場を少し和ませた。


そして、長慶は改めて口を開いた。


「講和は成った。私はこのまま畿内に留まり、畿内の整頓にあたる。

四国と淡路には一族の中核を戻し、実休を中心に据えて阿波守護家を主とし阿波、讃岐の統治機能を強化せよ。

五年内に、畿内においても一目置かれる兵力を整えること。実休をよろしく頼むぞ、康長叔父上。」


それは、家を二つに分けると同義の決断であった。


「長逸よ。そなたの嫡男・長虎は私の下に残してもらう。寂しく思うかもしれぬが、私も兄弟たちと離れておる。耐えてくれよ。」


からかうような調子で言われた長逸も、同じ調子で返す。


「殿がお我慢なさっておるのですから、我慢いたしますとも。

……まあ、息子が殿のご下に仕えられるのは誉れでもございますな。」


眼差しには、親としての期待と一抹の不安が滲んでいた。


すでに根回しは済んでおり、大きな反発はない。

だが、その場の沈黙を破ったのは康長だった。


「皆、納得はしております。されど、その上で一つ、申し上げさせていただきます。

殿……くれぐれも、ご無理はなされませぬように。

三好一族の先代、先々代の御当主様が、畿内で命を落とされておる。

万が一の際には、迷わず四国へお戻りくださいませ。」


康長の言葉は、まさに一族を代表する真情の吐露だった。

その場にいた誰もが、過去の無念を胸に浮かべた。


長慶はしっかりと頷き、静かに言った。


「……その通りだ。口に出してくれて、感謝する。」


そして視線を変えた。


「この先、最も重要になるのは四国・畿内の連携と補給であろう。

その要所たる淡路には、変わらず冬康を置く。そして――篠原長政をその補佐に据える。

かの者は私の意を、誰より早く察してくれる。」


康長に対し、かつての自らの傅役を託す長慶の言葉には、全幅の信頼が滲んでいた。


この日を境に、三好長慶は完全に拠点を越水城へと移した。

援軍も補給も最小限に抑え、四国・淡路には力の蓄積を任せる。


――何があっても、家族を守るために。

――兄弟たちが自由に生き抜く未来を拓くために。


少年の瞳は、すでに“天下の整頓”を見据えていた。

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