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得体の知れない卵を拾った話  作者: 悠月 かな
9/10

第九話

 執拗に襲ってくるカラスを、俺はハンマーで応戦していた。

トレーナーの片腕は、ボロボロになり血も滲んでいた。


「クソッ!いてーよ!」


痛みに顔を歪めた時、ノアールが俺の手から滑り落ちた。

カラスは、すかさずノアールに飛び掛かる。


「やめろ〜っ!」


俺が叫んだ瞬間、握っていたハンマーが黒いモヤに包まれた。


「何だ?」


モヤが晴れると、ハンマーは俺の身長ほどに巨大化し、漆黒色に変化していた。


「でかっ!色も変わってるし」


俺は漆黒のハンマーを振り上げ、カラス目掛け振り下ろした。


「ギャッ!!」


カラス達は声を上げると、呆気なくスーッと消えていった。


「大丈夫か?」


俺はノアールに駆け寄り声を掛けた。

ふと見ると、卵にヒビが入っている。


「カラスにやられたのか…」


俺は崩れるように膝を付いた。


「ごめん…守れなかった…」


その時、目の前にニョローンが現れた。


「エクセレントポイント!!」


ニョローンから、紙吹雪が舞い散る。


「エクセレントポイント?」


呆気に取られていると、ノアールの声が聞こえてきた。


「エクセレントポイント!やったぞ!リウ!最高ポイントだ!」


ノアールに目を向けると、卵全体にヒビが入っていた。


「大丈夫なのか?」

「大丈夫だ。孵化が早まったらしい。我は今から孵化する」


宣言直後、卵がはじけ殻が飛び散った。

現れたのは、身長20cmほどの美少女だ。


「ノアール…女子だったのか?男かと思ってた」

「失礼だな。我はれっきとした女だ!」


ノアールは胸を張って断言した。

真っ白な肌に、大きな瞳。

髪は、艶やか黒色でサラサラのロングヘア。

黒くフリルをふんだんに使用した使用した、裾が広がったワンピースを着ている。

いわゆるゴスロリだ。


「こんなに可愛いのに、性格や話し方は変わらないんだな」

「我は変わらぬ。これからもな」


俺はノアールが、無事に孵化してホッとしていた。


「とにかく、無事に孵化して良かったよ。カラスはヤバかったけど」

「リウ…我を守ってくれて感謝する」

「いや、別に…気にしなくてもいい。そう言えばハンマーは、なんで巨大化したんだ?」


ノアールは首を傾げ考えると、頭を振った。


「我にも分からぬ。しかし、リウの心が関係しているように思う」

「俺の心?」


ノアールは頷き言葉を続けた。


「我を助けようとする気持ちが奇跡を起こし、ハンマーに魔力が宿ったのかもしれない」

「そうなのか…」

「その結果、エクセレントポイントを叩き出したのだからな」


そう言えば、ニョローンがエクセレントポイントとか言っていた気がする。

俺は首を傾げながら、ノアールに聞いた。


「エクセレントポイントって何だ?」

「エクセレントポイントは、最高ポイント加算となる。今まで人間で、エクセレントポイントを叩き出した者はいない。リウのおかげで、我は一気に巻き返し最高ポイントを得て、この姿に孵化できた」

「一発逆転したわけか…」


ノアールは頷くと、俺をジッと見つめた。

大きな瞳を一瞬揺らし、そっと目を閉じる。


「リウ…我は行かねばならない…」

「え!もう行くのか?」

「ああ…我らは孵化をすると、すぐに帰らねばならない。そういう決まりだ…リウ、感謝する。元気でな」

「おい!待てよ」


ノアールは、俺の言葉を振り切るようにフッと消えてしまった。




 数日後、俺は桜並木を歩いていた。

桜はすっかり散り、葉桜になっている。


「あれから一週間以上経ってるもんな〜」


ノアールの事は、夢じゃないかと思う時もある。

巨大化したハンマーは、気付いたら元の姿に戻っていた。

 ピンク色から緑色に変わった桜を見ながら、歩いていると、後ろから声が聞こえてきた。


「おい!そこの人間!」


聞き覚えのある声だ。

俺は、ゆっくりと振り返る。


「おい!人間!お前の事だ!」


目の前に、ゴスロリノアールが現れた。


「ノアール!帰ったんじゃなかったのか?」


ノアールはフワフワと飛んで来ると、俺の肩に座った。


「リウ!喜べ。戻ってきてやったぞ」


相変わらずの上から目線。

俺は思わず笑った。


「リウ、今からどこに行く?」

「バイトだよ」

「そうか。我も行くぞ。リウの仕事ぶりを見学してやる」

「は?連れて行くわけないじゃん。ノアール見たら、マスター驚くだろ」

「安心しろ。我の姿は、リウ以外見えん」

「へえ〜そうなんだ。それならいっか〜なんて言うわけないだろ!」


俺はノアールを肩に乗せ、言い合いしながらバイト先に向かう。

ノアールが戻って来て、喜んでる自分に気付かないふりをしながら…



おわり



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