第二話
俺は全速力で走り、自宅アパートに駆け込んだ。
(ついて来ていないだろうな…)
玄関のドアを少し開けて覗いてみる。
黒い卵の姿は見えない。
俺はホッとしドアを閉めると、部屋のベッドに倒れ込んだ。
「あの変な卵はなんだったんだ?」
先程の出来事について考えていたが、俺はそのまま寝落ちしてしまった。
どれくらい時間が経ったのか…
俺はふと目を覚ました。
「今何時だ?」
枕元にあるスマホを手に取る。
「もう23時か…随分寝てたな…」
俺は起き上がり、電気をつけた。
部屋が明るくなった瞬間、目の前に"それ"が現れた。
「ウワーッ!」
あの黒い卵だ。
俺は思わず声を上げた。
「お…お前!どこから入ってきたんだ!」
「その窓からだ」
「はぁ?窓は閉まってたぞ」
「窓など、すり抜けられる」
「なんだよ…それ…」
俺はガックリと肩を落とした。
今日は散々な日だ。
「人間。我を温めよ」
「はあ?だから、嫌だって言ってるだろ!」
俺は、頭からすっぽりと布団を被った。
「おい!人間!」
"それ"がしつこく呼び掛けてくる。
「うるせー!寝るから邪魔すんな」
「お前、まだ寝るのか?脳みそ腐るぞ」
イラッとした俺は布団から出て、"それ"を睨んだ。
「いい加減にしろ!俺はお前を温める気はない!他を当たれ」
この言葉を聞いた瞬間、"それ"はビクッと小刻みに動き、小さな声で呟いた。
「我は、お前が良い…」
「あ?なんて言った?」
「だから!我はお前が良い!」
俺は思わずフリーズした。
(は?俺が良い?なんだそれ…)
"それ"に目を向けると、相変わらず小刻みにに揺れている。
もじもじしているようにも見える。
「お前…もしかして照れてるのか?」
俺の言葉に、"それ"はハッとして動きを止めた。
「照れてなどいない!」
「ふ〜ん…」
俺は、"それ"に興味が湧き、少しくらい話を聞いてみても良いか…と考えた。
魔がさしたのかもしれない。
「おい、卵。なんで俺がお前を温めなきゃいけないんだ?」
"それ"が頭を上げ(そんな感じに見えた)ポツポツと話し始めた。