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第4話

カチャカチャカチャ



男が手の中で拳銃を弄ぶ。

そういえば、廣野君が「1人心臓を打ち抜かれて殺された」って言ってたっけ。


この男はその「1人」を殺した組の人間なのかな。

ううん、もしかしたら殺した本人かもしれない。




どれくらい時間が経っただろう。

昼か夜かもわからない。

時間が経つにつれ、この常識を逸した状況にもさすがになじんできた。

それと同時に膨れ上がる恐怖。


ここはどこなんだろう?

この男は誰なんだろう?

私をどうするつもりなんだろう?


背中を冷や汗が流れ落ちる。


男に見つからないように手足を動かして、

縄をほどいてみようと試みる。


小説だったら、

パラッと縄がほどけて、私は隙を見て逃げ出す・・・

とか、

扉がバンッと開いてヒーローが私のことを助けに来てくれる・・・

とか・・・。


もちろん現実にはそんなことは起きなかった。

相変わらず縄はしっかりと私の手足に食い込んでいた。


それでも私は恐怖を紛らわすために、無意味なことを考えようとする。


この場合の「ヒーロー」はやっぱり廣野君かな?

助け出すのが私じゃサマにならないけど、そこは我慢してもらおう。


・・・ううん、ヒーローが廣野君でも誰でもいい!誰か助けて!!


祈るような気持ちで防音扉を見つめていると、思いがけないことに、

それがそっと開いた。


「・・・?」


男も気づいて顔を上げる。


そこにはヒーローがいた。

ただし、女。

しかも、着物姿。


こんな状況でも、その凛とした姿は息を呑むほどに美しい。


「こんなところで何やってるんだい?」

「あ・・・奥さん・・・どうして・・・」


奥さん?

男がしどろもどろになる。


「あんた、山本さんとこの美月ちゃんじゃないか」

「え?」

「待ってな、今すぐ縄をほどいてあげるから」


言うや否や、その女性は呆然とする男を無視して、

私の縄をあっさりとほどいた。


「さあ、いこうね」


女性は私の手を取ると立ち上がり、扉の方へ歩き出した。

私を先に外へ出し彼女も出ようとした時、我に返った男が叫んだ。


「くそっ!待ちやがれ!!」


バンッ!!!


聞き覚えのある乾いた音がした。

近くで聞くとこんなに大きな音なのか。


振り向くと、そこには今までよりも更に非現実な光景があった。


煙が立ち上る拳銃を構えた男と、崩れ落ちる女性。

そして、女性の背中からは一筋の血が流れ落ちていた。


「・・・ヒッ!!!」


私は無我夢中で走り出した。

打たれた女性が誰なのか、どうなったのか考える余裕も無かった。


とにかく走って走って走って―――

気がついたときには外に飛び出していた。


そして目の前の景色に愕然とする。

そこは・・・

私の家の前だった。



「山本!!!」


聞き覚えのある声が、私の走ってきた方向から飛んできた。

振り向くと、そこには廣野君の姿があった。


「廣野君・・・」


そう、私が飛び出してきたのは廣野家だったのだ。






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