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第2話

ゴールデンウィーク明け。


案の定、廣野君がヤクザの跡取り息子だという話題は

学校中を駆け巡っていた。


生徒はもちろん、先生でさえも彼を敬遠するようになった。

相田さんが私に話しかけてくることも無くなった。


本来、人から好かれる性質の彼が家のことでこんな不当な扱いを受けるのを

私は昔からずっと見てきた。

私には関係ないこととはいえ、胸が痛んだ。


そういう私だって、たまたま家が廣野家に近いから

あまりヤクザに対して偏見がないだけで、

そうじゃなかったら、やっぱり廣野君のことがヤクザとして怖かっただろう。


確か・・・「大輔」君とか言ったっけ?

二つ年下の背の高い男の子だ。

子供の頃から彼だけは、そんな廣野君にとても懐いているようだ。

廣野家に出入りしているのも何度も見かけたことがある。

彼が私達と同じ学年だったらよかったのに。


でも、当の本人である廣野君はどこ吹く風、だ。

こういう扱いは慣れっ子なのか、元々芯の強い人なのか。



ところが、嬉しい誤算があった。

小学校・中学校の頃は、廣野君の家がヤクザだと言うだけで、

みんな彼を恐れ、全く寄り付かなくなった。

親にも、廣野君とつきあっちゃいけないと言われていたのだろう。


しかし高校生になった今。

みんな自分の意思で動いている。

廣野君の親がヤクザでも、廣野君は廣野君。


入学当初より、明らかに数は減ったが今でも廣野君の周りには友達がいた。


なんだかちょっと、ほっとした。




それは2学期が始まったばかりの、ある涼しい夜だった。


「美月、お皿だして」

「はーい」


母親に言われて、手早くテーブルの上にお皿やコップをセットする。

今日は珍しくお父さんがお休みで、家族3人での夕食だ。

お母さんは張り切って、なんだか色々と作っている。

食べきれるかな、太らないかな。


自分の胸を見下ろす。


遅ればせながら、最近やっと胸が人並みに大きくなってきた。

まだ成長しそうだ。

これ以上、大きくなったら嫌だな。

贅沢な悩みだろうか。


「お、ハンバーグにカラアゲに肉じゃがに・・・すごいな」


お父さんは苦笑しながら箸を動かした。


「美月、学校はどうなの?」


お母さんが何気なく聞いてきたが、

子供の頃から友達が少ない私をいつも心配してくれてるんだ。


「部活、楽しいよ。今まで興味なかった作家の本とかも読むようになったし」

「図書部なんてお前は変わってるよな。まあ、好きなことがあるっていうのはいいことだ」

「うん。先輩達もみんないい人だよ」

「そうか・・・なあ、廣野さんちの息子さんは元気か?」

「・・・元気だよ。相変わらず空手やってる」


お父さんもお母さんも、私同様、廣野君が敬遠されやすいのをとても気にしている。

だからこうして、たまに廣野君のことを聞いてくる。


「高校では、友達も多いみたい」

「うん。そうか。よかった」


そういえば、廣野君っていつも誰とご飯食べてるんだろう。

彼も私と一緒で一人っ子のはずだ。

あんな広いお屋敷でどんな生活をしてるんだろう?

お父さんとお母さんと一緒にご飯を食べることなんてあるんだろうか?




バン!


その夜、部屋で本を読んでると、外で何かがはじける音がした。

夜の静寂の中でなければわからないほどの音だった。


なんだろう・・・爆竹か何かかな?

そう思ったけど気にしなかった。


翌日、廣野君が珍しく学校を休んだことも全く気にとめなかった。




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