17歳と38歳
第一話
笹野恵介38歳
車を停めて
今は公園のベンチに座ってる
昨日会社をクビになっていたのを
忘れていつもの様に家を出てしまった
とりあえずヒマだから缶コーヒー買って
公園のベンチでぼーとしていた。
なんで俺がクビなんだよ
仮にも店長だったんだよ
恵介は昨日まで
大手外食チェーン店で店長をしていた
契約社員だったけど
恵介だけが契約だったわけではなく
ほとんどの店長は契約社員で
契約社員の店長とパートさん
アルバイトで、どの店も回していた
俺をクビにして
どうやって本社のデスクワークしか
した事がない奴が店を回せるんだよ
今は新型コロナウイルスで
お客様、売上がガタ落ちだから
首を切られたのは仕方ないとしても
準社員の人たちも3人も切られたのは
なんなんだよ、責任とるのは
俺だけでいいだろうよ
申し訳ないよ、中には
シングルマザーで一家の大黒柱も
いたんだぞ、どうするつもりだよ
俺はそんな人たちになんて言えばいいんだよ
「ちっしよう、コロナめ!」
「おじさん」
「ねぇおじさん」
横のベンチに座った女子高生
たぶん制服を着ているから高校生だろう…
こんな時間に公園にいる奴なんか
俺みたいなリストラ親父か
不良のガキにきまっている
こういうのは無視に限る
「ねぇてば、聞こえてるでしょ」
「シカトするの⁈」
(そう、シカト)
「聞こえないのかなぁ?」
「仕方ないなぁ〜」
「キャー! 助けて〜」
「キャー!この人変なんです〜」
「いっ!何言ってるんだよ」
「黙れ!黙れ!」
周りのみんなはこっちをみて
なんだ、という顔
俺は手を振りながら
私は何もしてませんとアピールしていた
「無実です〜」
大きく手を振っていた
「お前は何言ってんだよ」
「オッケー、しゃべれるじゃん」
「おじさん一人でブツブツ言って
本当に変な人だったよ」
「ほっとけよ」
「子供には関係ないの」
「お前こそ、こんな時間に公園で
何してるんだよ」
「コスプレじゃないなら」
「それは制服ではないでしょ~か?」
「おじさんもっと普通に、喋れない?」
「キっーいらつく!」
「お前としゃべりたくないから
こんなしゃべり方になるの」
「もっと丸くならないとダメだよ」
「ハイ!ハイ!ごもっともです」
「それで、私に声を掛けて頂いたのは
どの様なご用件でしょうか?」
「おじさんむかつく!
何、そのバカにした喋り方?」
「いっー‼︎ もういい」
「だから、なんなの?」
「いや、ヒマだからさ遊びにいかない?」
はぁ?
「俺はヒマじゃない」
「会社クビになったんでしょ?」
「聞いてたのかよ」
「遊びに連れてってよ」
「こんな時間に制服着た女子高生と
歩いてたらほんとにやばい奴だろうよ」
「パパ活じゃねえかよ」
「ほんでもって捕まっちゃうじゃねえか」
「行かないよ!」
「お前こそなんで学校いかないんだよ」
「だって色々あって行きたくたいの」
「イジメか?」
「まぁ、それだけじゃないけどね…」
「けど、
どうやってサボってるんだよ?」
「風邪とかの仮病とかが多いかな」
「けど、そろそろ親から連絡しないと
ばれちゃうの」
「そりゃそうだろ長い事休んでんのか?
親は知らないんだろうな」
「学校いやならやめちゃえば」
「自分から辞めるのは親が許してくれない」
「おじさんみたいにクビになったら
いいけどね」
「やかましゎ」
「おじさんお願いがあるんだぁ」
「なんだよ、その前におじさんはやめろよ
名前で呼べ」
「なんていうの?」
「笹野恵介様だぁ」
「笹野さんて呼べ」
「わかった恵介」
「こら!なんで名前で••しかも呼び捨てか」
「親しみを込めてんの恵介」
「初対面の相手に対して呼び捨てか?」
「何歳?結婚してるの?」
「独身、38歳」
「ママと一緒、お父さんともあまり
変わらない」
「ずっと見た目は若いね
まぁまぁイケメンなのに独身なのか?」
「モテなくは無さそうだけど
性格に難ありかな」
「ありがとう、そうでしょうよ
性格がよくないんでしょうね」
「••へっおおきなお世話だよ」
「お前はなんて言うんだよ」
「私は白川玲奈」
「白川か」
「そしたら、元気でな白川さん」
「ちょと待ってよ帰るの?
帰らないで、お願いを聞いて」
「ボロクソ言ってたのにお願いか?」
「まぁ聞くだけ聞いてやる
お願いってなんだ」
「明日、先生にお父さんの
フリをして電話して」
「お前の嘘に加担させるつもり」
「お願いだから」
「そうしないと
休めないし、親にばれちゃうし
玲奈はもっと休まないといけないの」
「そんな事はしったこっちゃないけど」
内心
それぐらいしてやれよ…と思っていた
こんな時間に同じように
こんな場所で居るなんて
お互い寂しいもの同士かもと
そう思うと少し同情していた…
お互いひとりじゃ生きていけないのかも