プロローグ
その日私は西大陸東部に位置する華火山と呼ばれる島に向って海路で歩みを進めていた。
「クレアルボーク様見えてまいりましたあれが華火山です。」
「分かりました華火山を納める魔主に連絡を牛魔王の使者として私が来たと伝えておいてください」
本来このような田舎の地に牛魔王の使者としてとはいえ仙人である私がくることはないので今頃かの地は大慌てでもてなす準備をしていることであろう。
私はこの華火山から感じるあまりの異様さにものおもいにふけっていた。
それにしても私の主であり友である牛魔王も不思議なことを私にお願いしてきたと思う。
私は先日、牛魔王にあった時のことを考える。
「クレアルボークよ少し今時間はあるか?」
その日私は牛魔王との週に一度の密会を終え、家路につくところで何かを思い出しかのように牛魔王は私にいつものごとく所用を押し付けてきたのである。
ただ私もいつものことなので少しため息をつき、相も変わらず憎たらしいほど純水な顔をした牛魔王に歩みを止めて振り返った。
「はあ、仕方ありませんね、で今回は何用ですか?」
「毎度のことながらすまない引き受けてくれるのか。やはり持つべきものは仙人の称号を持つともじゃのう」
「本来であれば仙人は魔王の言うことなど聞きませんまあ今更ですけど」
「まあ確かにそうじゃなお前はかなりの変り者じゃからのう。本来仙人は人間どもを率いて魔王と戦う存在であるのにお前さんはところがどっこい戦うどころか逆に私のもとに弟子ともどもやってきて人間を治めてほしいと頼み込んできたからのう。本当にお前さんは変り者じゃよ。」
「まああれは、私がこれ以上の争いを望まなかっただけですよ。事実あなたは人間も魔人も完全に丸め込み東大陸に安寧をもたらしたではないですか。私はあなたこそがこの地を治めるにふさわしき存在だとあのとき確信しましたよ。」
「お世辞とはいえお前に褒められるのはうれしいものよ。さて本題に入るがお前にはここ東大陸の裏側、西大陸の東の海に位置する華火山と呼ばれる島へいますぐ向かってほしい」
私は牛魔王のまとう雰囲気が変わったのを察し姿勢を正すと
「何があるのですか?」
とその真意を尋ねたすると牛魔王少し困ったような顔をして
「分からない。ただ何かあるのは間違いない気の乱れを感じる。」
牛魔王は各地のちからの変化を感じ取るのに関して言うと非常に優秀なのである。これは牛魔王を王たらしめる一因でもあるので間違いないのである。
「それはわかりますが何故わざわざ私を?私には全く感じられないのでそこまで大きな乱れではないのでは?国内ならともかくそのような異国まで行ってわざわざ私自ら確認に行かせる事柄でもないはずです。」
「まあ力の乱れ事態は大したことではないただ異様なのだ或いは私の勘違いかもしれん」
「あなたをそこまで言わせるとはいったい何があるのですかと?」
「それは・・・
私はこの時聞いたことを安易に信じることはできなかった。それは私がいままで苦悩してきたすべてのことを否定することであり、牛魔王の言葉でなければ何を馬鹿なことをと一蹴するようなこの世の理を外れた存在だからである。
だがそれは確かにそこに存在した。この華火山を目の当たりにして私もこのことをこの地にそれが存在することを確かに感じ取り感慨にふけっていた。
「クレアルボーク様上陸の準備ができました。」
私はこの一言で意識を現実に戻すとすぐさまこの地へと降り立つ準備を始めたのであった。
この目で確かめ確かめるまで私は認めんぞ。
私はこのことを強く決意してかの地に降り立ったのであった。