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2. すべては偶然だった

 ゆっくりと進む馬車の上で少年はチラリと隣に視線を向ける。

 

「どうしてこうなったんだ……。貴族の令嬢っていったらさぁ、もっとこうお淑やかで気品があるもんじゃないの?」

 

「なにいってるの、このあふれ出る高貴さ。あんたにはわからないだけよ」

 

「王太子殿下もどうしてアリシアと婚約だなんて……。物好きというか、ああそうか、好奇だっていうことか」

 

「つまんない冗談いわないでよね。でも、そうね。わたしもびっくりよ。むしろなんでっていう疑問の方が大きいかも」

 

 この一年間、少女は王都の貴族学校へと通っていた。

 男爵領は王都から離れた片田舎に位置しているため、娘を社交界でお披露しようという父である男爵の考えによるものだった。

 

 帰ってきたら王都の土産話を聞かせてあげるといって、戻ってきた少女が口にしたのは―――王太子との婚約。

 

「いやー、なんかさー、田舎出身のわたしを哀れんだのか初めての夜会で殿下がダンスの相手をしてくださったんだけどね。そこから学園でも妙に顔を会わせることが増えてね」

 

 知り合いもおらず田舎出身の自分が場違いじゃないかと隅でじっとしていたら、声をかけてきたのが王太子だったと彼女は語る。

 

「よく話しかけてくるし、ぼんやりとこっちを見てて目が合ったりとか」

 

「殿下って意外と一途なんだな」

 

「いやいや、廊下を曲がるとばったりとか、それで荷物をもってくれたりとか、偶然よ、偶然」

 

「どんな偶然だよ……」

 

「まあ途中からは冗談だけど。そんな感じで卒業パーティーでお別れだと思ったのよ。殿下と友人になれたなんて一生自慢できると思ったら、あんなことになるなんてねぇ」

 

 卒業パーティーで起きたのは、公衆の面前による王太子からの突然の婚約の申し込み。

 少女は朗らかに軽い口調で語るが、その騒動の渦中のただ中にいる。


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