9・親から一言。
ガキ勇者アリィの養父・ギリィ子爵に呼び出された。
何度か会っては居るけれどやっぱり貴族様は緊張するね。
それにギリィ様は軍人だ。実力もかなりのものだと感じる。
訓練とか実戦とかしているところはまだ見てないんだけどな。
「忙しいところを呼び出してすまんね。
単刀直入に言えば理由はアリィのことだ。
まだあの歳なのにギルドに登録して仕事を始めたそうだね。
君の迷惑が増えそうだから先に詫びておこうと思ったんだよ」
迷惑・・まあ確かに迷惑じゃああるけどアイツのオカゲで勇者のパーティに
置いて貰えてるからなぁ。
文句を言ってもしょうがないやね。
「妻が色々心配してるんだよ。
転生者で前世の記憶持ちだし体はどうみても幼児でしかない。
なのにヒョイヒョイ出かけては変な土産を持ってくる。
私の子供達とも仲良くやってるし家族間での心配は無いんだが・・」
やっぱりあの歳なら家族に守られて家で大人しくしてるのが普通だよなぁ。
転移の魔法も使えるし空飛ぶ絨毯も持っている。
オマケに魔法はその辺の魔術師でも敵わないだろう。
心配は要らないと思うんですけど。
「だが先日は魔力切れを起こして森で野営だったと言ってたからね。
戻って来なくてやきもきしたんだ。
なので世話係な君に連絡のための魔道具を渡しておこうと思ってね。
コレを受け取ってほしいんだよ。」
オレっていつの間に世話係になってたんだ?
荷物持ちだったよな・・まあ荷物はアイツなんだけど。
魔道具は高い! こんなダサくてカッコ悪い代物でも!
まあイイや、マジックバッグに放り込んで置こう。
そうそうイザと言うときなんて無いだろうしな。
「アリィには仕事に出ても良い日を決めておくことにした。
週に二日までってことにしたよ。
他の日は君も自由にしてくれていいよ。
報酬が決めてなかったと思うがコレくらいでどうかね?」
世話係としての報酬を示して下さったけどお断りすることにした。
確かにアリィは「お荷物」だけどパーティの「仲間」なんだ。
動けない仲間を運んだからってソイツから報酬を取るか?
取るわけないだろ!
ホントはあの勇者のパーティじゃあ荷物持ちなんか必要ないんだ。
勇者達は全員アイテムボックス持ちだからな。
行き場が無くて無理矢理端っこに入れて貰ってるってのがオレの立場だ。
アリィを「お荷物」と言ったがホントのお荷物はオレの方なんだよ。
「そうか・・では一応あの子の親な私からはお願いと行こう。
あの子の事情は詳しく話すことは出来ない。
ちょっと事情が複雑でね。
それでも今は私の子供なんだよ。
中身が少年だとは分かっていてもまだあの歳だ。
何か有ったらよろしくお願いしたい。
生意気なガキだと思うが仲間として扱ってやってほしいんだ」
冒険者の仕事の危険については何も言われなかった。
その辺りの覚悟は出来てるってことか・・ギリィ様も、勿論アリィも。
まあ、コレでアリィは大手を振って冒険者ができるってコトだ。
週に二日か・・オレもソロで出来る日が増えるってコトだな。
ちょっとでもアイツに振り回されずに済むってのは嬉しい限りだぜ。
でもアリィ君は仕事で無くてもギルさんの所に飛んで遊びに来るのです。
かえって落ち着かない日々になってしまうとはこの時には気付いてません。
お気の毒さま~。