8・野営。
時々攻撃してくる魔物も居たが絨毯の結界はビクともしなかった。
この結界は中からでも多少の魔法攻撃ができる。
物理攻撃はできないんだが・・
オレの魔法は初級なものだけなので使ってもアリィの安眠妨害にはならない。
なので魔物どもには魔法の練習台代わりになってもらった。
初級魔法なので大した威力はないんだがソコは数でカバーしている。
威力は弱くても連打されるとソレナリに効くってやつだな。
それでもその晩はなんとレベルアップが来た!
初級が中級になった訳じゃあ無いぞ。
初級はドコまで行っても初級でしかない。
でもソレナリに威力が上がるんだ。
まあ、勇者のパーティに入れて貰うまではそんなことは知らなかったんだが。
消音も設定してあるようで外でオレの魔法が爆ぜてもアリィは眠り続けていた。
寝てるとカワイイんだよなぁ・・寝てると。
オレはやっぱり絨毯の上が安全と分かってても熟睡はできなかった。
魔物で魔法の練習をしてたのはそのせいだ。
中級の魔法を使うにはオレじゃあ魔力が足りないと思う。
駆け出しの魔法使いくらいには成れたような気もするがオレは戦士だ。
戦士は魔力の少ないヤツがほとんどだ。
全然持ってないヤツまで居るからな。
初級でも使えるオレは珍しい方だと思う。
日の出とともにアリィは目覚めた。
オレが練習台にした魔物どもをみてどうやら驚いたらしい。
「へぇ・・ギルさんの戦果なんだね。
魔法は苦手じゃあなかったの?」
戦士だって知ってるアリィは不思議がっていた。
なので説明した。
ほとんどのヤツは連打で仕留めたんだとね。
「初級にレベルアップがあるって知らなかったよ。
中級には及ばないんだね。
中級ができれば全部一発でヤれる魔物だと思うんだけど」
多分そうだろう。
まあ、出来ないモノを出来るようにするにはソレナリの時間と努力が必要だ。
戦士が磨くべきなのは戦技の方で魔法じゃあないと思う。
眠れなくてヒマだからヤってただけだからな。
「ふぅ~ん・・戦士の魔法・・なんか隠し球みたいでカッコ良さそうだなぁ」
お前は「勇者」なんだ。
何でも出来るハズのヤツだからな。
でも全部専門職に敵うようになれるなんて思うなよ。
ガングだって魔法も出来るけど女房のキティにゃ敵わないみたいだからな。
まあ今は魔法に重点を置くしか無いと思うゾ。
他の技能は体が出来てからだろうからな。
「うん・・魔法も使いすぎちゃあダメなんだよね。
今回はあの大鳥の相手が楽しくてやりすぎちゃった。
普通に飛ぶだけなら街まで余裕のハズだったんだよ。
調子に乗りすぎるのはヤッパリ危険だね」
この反省もいつまで続いてくれることか・・
すぐにまた調子こいちゃうに決まってるんだが・・
まあ、殊勝な顔が今だけだと分かっててもなんだかんだと許しちまうんだよな。
ホント・・カワイイガキってのは困ったもんだぜ。
オレの獲物な魔物はアリィがアイテムボックスの魔法で収納してくれた。
マジックバックも持ってるけどそれほど容量が大きくない。
もっと大きな容量の物に買い替えようかと真剣に悩むギルなのでした。