2・背丈。
ガキ勇者は「アリィ」と言う。
どこぞの貴族の庶子だそうだ。
まあ庶子なんぞ掃いて捨てるほど居る。
珍しくもなんともないがアイツはラッキーな方だろう。
公爵様の一族の一人・ギリィ子爵の養子になってるからな。
「勇者」だってことはまだほとんど知られていない。
ギルマスは知ってるらしいしガチムキ勇者のパーティメンバーも知ってる。
それでも勇者だからガチムキ勇者・ガングは面白がって連れ回している。
まさかスタンピードを起こしたダンジョンの街にまで連れて行くとは……
オレまで……
「イイぞ。付いて来い。
スタンピードなんてそうそう起きないからな。
オレだって駆け出しの頃に小規模なヤツに遭っただけだ。
ソコに居て体感するだけで今後の為になると思うゾ。
なぁにイザとなったら転移と(空飛ぶ)絨毯で逃げればイイさ」
勇者・ガングは軽く言う。
下手すりゃアンタだってあの世行きかもしれないのに。
アリィの実母があの街に居るそうだ。
……そりゃあ……気持ちが分からないでも無いが……
結局スタンピードは勇者パーティや街の兵士や冒険者達、それから
ドコから来たのかパーティメンバーの仲間だという成人したてくらいの
まだガキな雰囲気な連中の活躍で収まった。
オレはアリィを背負って見てるだけだったけどな。
オレが魔物の群れに圧倒されて呆然としてたってのにアリィもガキどもも
平気な顔をしてやがった。
アイツらも全員勇者だって後から聞いて驚いた。
異世界なんて考えたこともなかったんだ。
「オレの前世とは違う所みたいだね。
あの連中は強いよ。
前世のオレでも多分敵わないと思うね。
師匠がいるそうでその師匠ってとんでもなく強いんだってさ。
まあ、オレが退治しそこなった邪龍を軽く片付けてくれたそうだから
推して知るべしだね」
「まあ、また強く成れば良いさ。
ケンジとはもう仲間だしまた来るみたいだからな。
来たら相手をしてもらえ! 確実に実力を伸ばせるぞ」
アリィ……まだ体が出来てないどころか幼児じゃあねぇか!
何をそんなに焦って強く成ろうとしてるんだよ。
剣どころかその辺の木の枝だってまともに振れないくせに……
「あー……まあ、現役の最強勇者が目の前にいるからねぇ。
今すぐオレが強く成る必要は無いんだけど。
やっぱりいずれはガングさん位になりたいじゃん!
赤ん坊でもオレは男で勇者なんだからさ」
前世がしんどかったから今世はノンビリまったりノンキな人生にしたい
なぁ~んて言ってなかったか?
「実力があれば避けられる危険も多いからな。
生まれがちょっと特殊だからソッチからの危険も無い訳じゃあ無いし。
だがまだガキだってことを忘れんなよ。
魔法なんかはあんまりチビの頃から使いすぎると成長に影響するそうだしな」
冒険者は体格をまず見られるしな。
オレはまあ、冒険者としては並みの背丈だけど仲間だった弓術士は少し背丈が
低かった。
それで見くびられたりしてたんだよ。
「そ、そうなの? (汗。)
う~ん……大人になってもチビなままってのはちょっとなぁ。
前世でもあんまり背丈の高い方じゃあなかったんだよ。
あ! でもあのオヤジ(父親)は背丈が結構高かったよな。
自重してればあのオヤジくらいには成れるかも」
そう言ってたくせに……
魔法は使い放題だよな……コイツ。
徐々にどころか日に日に魔力量が上がって行くし。
もういい加減にしやがれ!
自重って自分で言ってたくせに!
チビな勇者だとカッコ悪い! と必死に強調するギルバート君なのでした。