19・お祝い。
アリィが回復魔法をかけている。
兄達と姉に。
魔物とはいえ人型はいささかインパクトが強かったようだ。
まあ、オレも最初はあんなもんだったよな。
気にしなくていいぞ。
みんなそんなもんだから。
「あー、回復魔法って傷に効くだけだと思ってたよ。
こういうショックにも効くんだねぇ。
ありがとう、アリィ。
アリィはその、前世の最初のときはこういうショックを受けなかったのかな?」
そう言えば最初の魔物はオーガだったって言ってたな。
「戦ってた最中はもう夢中というかショックとは感じてないと思ったよ。
でも済んだら動けなかったんだ。
得物のバスタードソードを握ったまま手が開かなくなっちゃった。
神官に何度も回復魔法をかけてもらってやっと手が離れたときはホッとしたよ。
あのままじゃあトイレにも行けなかったもんな」
コイツでも最初は同じだったか……
まあ、そういわれたせいか皆どこかホッとした顔をしていた。
エリィ様は気を取り直したようで魔法なら自分でも出来るかもしれないと
思ったようでアリィを質問攻めにしていたよ。
まあ、生活魔法あたりから始めて下さい。
それでも今日の依頼は薬草の採取だ。
気を取り直した皆を励まして薬草を集めた。
草原の管理人な冒険者は一度ギルドへとアリィに送らせた。
特殊個体が出たことは報告しないとイケナイからな。
アイツだけならいいんだが他にも出てたらコトだ!
調査だけでもしてもらわないとな。
新人の安全の為にも。
薬草の採取は最低ノルマは果たせた。
見つけるのに慣れていないうえに上手に採取出来たとは言い難かったけど。
受付嬢が苦笑いしてたんだよな。
まあ、最初はこんなもんだろう。
一応手ほどきはしてから始めたんだが最初から上手く熟せるとは思っていない。
オレだってさんざん受付嬢に虐められた口だからな。
……オレが不器用だってのは言わなくても分かるだろう?
薬草の代金はたいしたことはなかった。
「え~! これだけぇ?」なんぞと皆が反応してたがそんなもんなんだよ。
常時依頼だし他の依頼のついでに採取してくるぐらいの物なんだ。
初めてだからコレだけで受けただけなんだよ。
ちなみにゴブリンの特殊個体は買い取ってもらえた。
勿論、薬草よりは高価だったので皆で山分けにした。
草原の管理人にも分けた。
遠慮してたけど一番ヒドイ目に会ったのはやっぱりアイツだからな。
アリィも反対しなかったしな。
まあ、倒したのはアリィだから全部アリィのものでも良かったんだが
本人が皆で分けたいって言ったんだ。
「最初の討伐の記念みたいなものだよ。
額はともかく何かお祝いしたい気分なんだ。
オレもお祝いしてもらったしね」
なるほど、そういうのはコイツの前世でも同じなのか。
なんだかちょっとホッとした気分のギルさんなのでした。