18・教材。
アリィと兄達に周りを警戒させる。
アリィ! 索敵しとけよ!
オレは大ケガをしてる草原の管理人を治療した。
ポーションを傷に掛けて口からも飲ませた。
コレはどっちでも使えるちょっと上級な品だ。
なんとか死にかけからは脱したようだ。
相手がどんなヤツかは分からないがよく逃げ切れたな。
ここまでメタボロにされてるのに。
「居たよ! 多分コイツだね。
ゴブリンだけど進化しちゃってるみたいだよ。
お供が三十匹くらいくっついてる。
どうやって逃げ出せたのかな?
メタボロにされてるのに」
やっぱりコイツもそう思ってんのか。
そうこうしているうちに負傷者は意識を取り戻した。
「囲まれて滅多打ちにされたんだ。
ボスらしき大きな個体に足を捕まれて地面に叩きつけられそうになった。
だがもう片方の足がぶつかったはずみですっぽ抜けてな。
空を飛ぶはめになったんだ。
早いとこ逃げろ!
なんならオレは置いてっていいぞ!
多少は回復してもらえたから一人でも逃げられると思うからな」
逃げるのは簡単だ。
アリィの転移でギルドに戻ればいいだけだ。
だがアリィ、お前納得してないよな。
「アレくらいならちょっと魔法を使えば簡単だよ。
ヤッちゃってもいいかな?
せっかくのオレ達の依頼の邪魔をしてくれたことだしね」
ゴブリンどもはコチラに気が付いたようで向かってきていた。
まあ、確かにアリィなら一発だよな。
少し残してもらうことにした。
兄達にもスライム以外の魔物を見せても良いと思ったんだ。
「女も子供も居るのにアレに対抗するなんて無理だ!
早いところギルドに連絡して討伐してもらった方がいい!
オレが多少でも食い止めてる間に逃げ……」
最後まで言わないうちに現れたゴブリンどもにでっかい火球をお見舞いする。
勿論、アリィがね。
まあ、止めるなんて言葉はアリィには通用しないな。
進化個体はまだ立ってるけど他はほとんど倒れたね。
二匹ばかり無事なヤツはもう結界に閉じ込められている。
教材用に取り置きってことで。
まだ立ってる進化個体にウインドカッターが雨アラレと飛んでいった。
あんまりコマギレにするなよ。
普通のヤツはダメでも進化個体なら素材として買い取りがありそうだからな。
あっという間に全滅させたのを見た冒険者はアゴが外れたらしい。
茫然とした顔になってもしかたないよなぁ。
残しておいた「教材」でアリィの兄弟達にゴブリンについての解説をする。
まあ、コレくらいは常識だからわざわざ教えるほどでもないんだが実物が
目の前に居るのは多分初体験だろう。
マジマジと観察したあとで戦ってみたいと言い出した。
女の子な妹が見てるけどいいのか?
「大丈夫です。
騎士や兵士の訓練は時々見学させてもらってます。
もっとも陰からですけどね。
人型の魔物は初めてですけど……大丈夫だと思います」
さすがはギリィ子爵の娘さんだ! と思ったんだけど……
ヤッパリ刺激が強かったらしい。
魔法でやっつけるのと剣で倒すのは違って見えたようだ。
あー、こりゃあ子爵からお叱りが来そうだなぁ。
アリィたち男の子だけなら怒られたりしないんだろうけど。
同行は断ればよかった!
と今更ながら後悔するギルさんなのでした(笑。)