16・引率者。
「勇者? 勇者って……アリィが?……
アリィ……そうか! それでアリィなのか!」
普通によくある名前……だと思ってたんだが。
なにか意味のある名前だったんだろうか?
「あー、ありふれた名前だけど『アリィ』は勇者の名前なんだよ。
五代か四代か前の王の名前なんだ。
多分、それを頂いたんじゃあないかな」
アリィは命名の由来をちゃんと聞いてたらしい。
まあ、ギリィ様は色々と気配りに抜かりの無い方だ。
相手が子供でも丁寧なことだなぁ。
「勇者だった王様の名前なんて……と思わないでも無かったけどね。
養父上が選んで下さった名前だから大事にしたいと思ったんだ。
脳きn……勇者・ガング並みに強くなれるとは限らないんだけど」
そうか……ガングが邪魔扱いしないのはやっぱり「指導」の意味があるんだろう。
まあ、どっちにしてもまだやっと歩ける程度なんだ。
そんなに焦らなくても良いと思うけどなぁ。
「うん……分かってはいるんだけどね。
目の前にケンジやガングがいるとやっぱりオレもアレくらいに成れるはずだと
思っちゃうんだよ。
やっぱり焦ってるのかもしれない」
「そうだよなぁ。
勇者達ってスゴイと思うよ。
あの訓練を見ただけで兵士達なんて動けなくなったりしてるから……
そう言えばギルさんはあの訓練を見ても平気だったの?
何度も訓練をみてるんでしょう?」
最初は兵士達と同じで動けなかった。
別次元ってああ言うものだと納得させられたよ。
オレや兵士達のレベル用の訓練メニューをケンジが用意してくれたからソッチを
やらせてもらってる。
コレが結構シンドイんだよ。
従者のレオが平気な顔でこなしてやがるのが微妙に気に障るんだがな。
「へぇ、ギルさんはあの兵士用の訓練メニューをやったんだ!
やれるだけスゴイと思うよ。
ウチの兵士達だって音をあげてたから」
ケリィ様はそう言ってくれてもあの訓練でオレがレオやガングの領域に達する
なんて絶対に無理だろう。
まあ、アレをこなせた時は嬉しかったけどな。
それにしてもケリィ様は「さん」付けで呼んでくれるけど一応パーティってことに
なってるんだから呼び捨てで良いんだけど。
「じゃあ、ギルさ……ギルも『様』を取ってくれないかな。
アリィは呼び捨てなんだから私……オレも呼び捨てにしてほしいな」
ということでパーティ内では呼び捨てにすることになった。
二人とも子爵家令息なのに良いのかねぇ。
オレってタダの平民でしかないんだけど。
父君のギリィ様は別に気にしませんでした。
むしろ笑ってましたよ。
「息子達が迷惑かけてスマンね。
ところで私にはもう一人息子が居るんだが(笑。)」
結局、兄弟三人を引き受けることになってしまったギル君。
どう見ても引率者にしか見えません。
ギルドの冒険者達がなんて言ったのかは……まあ、ご想像通りなんですけどね。